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そして、未来へ


 披露宴は19時から。

 だけど、私はもうぐったり。あんな辱めを受けるなんて!崇史さんめ!あの後、控え室へ戻る途中とか友達にニヤニヤしながら見られたよ。披露宴ではこんな事、ないでしょうね~?





 私の心配を他所に、披露宴は何事もなく進行していく。

 ファーストバイトの時には崇史さんに仕返しとばかり、甘~い生クリームをたっぷり取って口に突っ込んでやった!予想通りに口の周りが生クリームだらけ。ザマーミロ!私が笑うと、崇史さんは更に笑顔で口元を拭うと、私にもフォークを差し出してきた。笑顔の崇史さんを見て思わず後ずさった私の腰を引き寄せると、無理矢理口にフォークを押し付けてきた。当然、私の口の周りにも生クリームが付いてしまう。恨めしそうに崇史さんを見遣って口元を拭こうとすると、その手を止められニヤリと笑うと直接私の口元を舐めてきた!イヤ~!ゴメンナサイ~、もう許して~!!(涙目)

 私の心の叫びと重なるように、会場内からも悲鳴が!


「あれ、誰!?ホントに時田課長なの?別人なんじゃない??」

「あれはもう別人だよ。なんだよ、アレ。見てる方が恥ずかしいよ!」

「イヤ~!時田課長は無表情なクールビューティーじゃないと!あんなの課長じゃな~い!」

「うわ~、課長でもあんなになるんだね~。ラブラブ。ってか、水原さん引いてるよね~。」

「時田課長って彼女の前ではあんななんだ~。全然違う!なんか…、ちょっとキモイかも…。」

「あれはないだろう。どんだけ惚れてんだよ!頼むから家で2人の時にやってくれよ~。」

「デキル上司のあんな姿は、できれば見たくなかった…。」


 みなさんの言葉を聞いてちょっと落ち着きました。良かった、私の批判はなくって。みごとに崇史さんのことばかりですね。当然です。仕事してる姿からは、到底想像できませんからね。というより、いい加減離してくださいね。座れません。




 そしてお色直し。今度はパープルのAラインドレスです。カクテルドレス入場の時にやりましたとも!キャンドルサービス。ナイトウエディングなので、照明を落としてしまうと窓の外のクリスマスライトアップがとてもキレイに見える。その中を私たちは各テーブルを回り、キャンドルに火を灯していく。最後のメインキャンドルに火を灯すと、華やかな火花が上がった。会場中からも大きな拍手が贈られる。なんだか、照れくさいけど嬉しい!隣に立つ崇史さんを見上げると、崇史さんも嬉しそうに笑っていた。喜んでくれてる、と思うと心に温かなものが広がっていく。やっと私にも崇史さんと結婚するんだっていう実感が沸き上がってきた。崇史さんも私の方を見ながら微笑んでいる。これが、幸せっていうのかもしれないね。



 最後に、末席で新郎父挨拶に続いて、新郎挨拶がある。崇史さんは挨拶の最後の最後にこう言った。


「今から2週間、新婚旅行に旅立ちます。みなさんのお見送りができず、申し訳ありませんが、これも新婚ゆえと暖かく見守ってくださると幸いです。」

「えっ!?今から?」


 挨拶中であるにも関わらず、思わず叫んでしまった。慌てて口を抑える。


「そうだよ。2週間、ヨーロッパ旅行だ。」

「また、急に…。」


 崇史さんは会場に向き直ると、


「では、失礼します。」


 ニッコリ笑ってそう言うと同時に、いきなり私を横抱きにした。これは!お姫さま抱っこです!こんな大勢の前でしなくても良いのに~。そして、私にチュッとキスをして、そのまま披露宴会場を後にする。会場からは大絶叫が響いている。

 崇史さんに抱き上げられて会場を出る瞬間、3人の親たちにそれはそれは、生暖か~く見送られましたよ。


 お願い!誰か崇史さんを止めて~!




 着替えもせずにホテル前に待機していたタクシーに乗せられる。

 空港まですぐに行くのかと思っていたら、途中でタクシーは止まった。


「香織。婚姻届を出してから行こう。おいで。」


 タクシーを強制的に降ろされて、手を引かれてドレス姿のまま区役所へ。夜間だから人がいなくて良かった!また恥ずかしい思いをするところだったよ。届け出は簡単だった。夜間受付の窓口へ提出するだけ。なんだか拍子抜けしてしまう。これだけで、法的に夫婦と認められるなんて…。

 区役所を出ると、崇史さんが言った。


「クリスマスイブが結婚記念日になったね。香織、これからもよろしく。」

「はい。こちらこそよろしくお願いしますね。」


 優しく抱き寄せられて、頬を撫でてからゆっくりとキスが降りてくる。柔らかい唇。確かめるようなキスを繰り返す。やがて、そっと崇史さんの舌が差し出される。私が優しく吸うと、崇史さんはゆっくりと私の口腔内に入り込んできた。余す所なく、優しく舐めていく。舌を絡めて撫でて、吸って私を溶かしてしまう。

 少し顔を離すと、唇が触れそうな距離で崇史さんがとても柔らかい微笑みを浮かべている。自然と私にも笑みが浮かんで来た。そんな私に崇史さんはもう一度、軽くキスをすると。


「さあ、空港へ行こう。」


 待っていてもらったタクシーに再び乗り込んだ。




 


 ハイ。空港へと拉致されてきました。もちろん、2人ともカクテルドレスにショートフロックコートという出で立ちで。

 空港は夜とはいえ、大勢の人がいる。大注目!なかには写メを撮ってる人もいる。もう、恥ずかし過ぎて私は崇史さんの後ろに隠れるようにして付いて行くけど、崇史さんは恥ずかしげもなく堂々としたもの。ホントに何考えてるんだか!

 崇史さんはどんどん空港の端まで歩いていく。チェックインカウンターも通り越して。


「ねぇ!崇史さん!新婚旅行に行くっていうけど、着替えも何も持って来てないですよ。どうするんですか?」


 崇史さんは後ろを歩いていた私を引き寄せて、隣に並ばせると答えてくれた。


「ん?荷物なら先に預けてあるよ。」

「え?荷造りしてないですけど?もしかしてお母さんとか?」

「いや。ほら、ドレスを試着する前にデパートでいろいろ選んだだろう?あれが旅行中の着替えだよ。店員さんに頼んで、スーツケースごと全部用意してもらったんだよ。」

「スーツケースごと!?え、じゃあ全部買ったんですか?」

「そうだよ。香織と俺の着替え一揃え。」

「…はぁ。」


 もう何も言うまい…。

 崇史さんはそのまま私を連れて行く。空港の端まで来ると、その場所だけ雰囲気が違う。黒い重厚な扉があり、その前に空港スタッフが立っている。私たちを見つけると、そのスタッフは声をかけてきた。


「時田様ご夫妻ですね。お待ちいたしておりました。ご案内いたします。こちらへどうぞ。」


 扉を開けてくれた。そして先に立って歩いていく。中に入っていくと、ホテルのロビーのような部屋があった。


「どうぞ、こちらにお掛けになってお待ちください。ただ今、搭乗手続きをさせていただきます。」


 はい?ここで手続きができるの?なんだか聞ける雰囲気ではなかったので、大人しくしている。


「手続きが終了いたしました。搭乗時間までまだお時間がございますので、こちらでお着替えなさってください。」


 そう言うと広いレストルームを通り過ぎて仮眠室へと案内してくれた。


「良かった。ちゃんと着替えられるんですね。」

「ん?俺はそのままでも全然構わないよ。そのまま飛行機、乗る?」

「イエ、ゼヒ着替えさせていただきます。」

「それにしても、空港にこんな場所があるなんて知りませんでした。シャワールームまでありましたよ。」

「ああ。ここ、ファーストクラス専用のラウンジだからね。」

「えっ?ファーストクラス!?」

「もちろん。新婚旅行なんだから、これくらいは、ね?」

「…ありがとうございます。」




 そうして微笑み合いながら、2人の未来へと旅立って行った。




これで本編は完結です。


後日、番外編を書くかもしれないので、完結にはしていません。


最後まで読んでくださって、ありがとうございました!


また、次回作もよろしくお願いしま〜す☆

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