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今回は少し短いです。

視点が何度が変わるので、ちょっと読みにくいかもしれませんが…、ご容赦ください!

――やっと捕まえたと思った香織に逃げられてしまった。


 俺は香織が飛び乗った電車の窓を思いっきり叩いた。クソッ!どうして手を離してしまったんだ!悔やまれて仕方ない。

 本当は知っている。昨日の帰りも香織を見守っていたから。いつもと違う道を通るからおかしいと思っていた。すると警察に入っていって驚いたんだ。それで、香織の友人である秘書課の高田智美に事情を聞いた。

 心配だった。どうして俺になにも言ってくれないのかと憤った。結果、それが裏目に出たようだ。一層、香織を怯えさせてしまった。事情を香織の口から聞き出して、今日から毎日送っていこうと思っていたのに。

 俺は次に来た電車に飛び乗った。早く、早く着いてくれ。


 駅に着くと、俺は香織のマンションまで全力で走った。今度こそ、香織を捕まえないと。

 気ばかりが焦っていると、やっとマンションが見えてきた。明るい電気が点いている入り口を見る。見つけた!しかし、様子がおかしい。香織は目を見開いて、青白い顔色でゆっくり後ずさるように入り口から出て来る。その香織の視線の先を見た。






 私はポストに花びらが入っていないのを見て、ホッとした。やっとあの悪戯が終わったんだと思った。他の郵便物をまとめてオートロックを解除するために自動ドアへと近づいた。その時。ポストとは自動ドアを挟んで反対側に設置してある宅配BOXの方から声がした。


「香織。」

「……誰?」


 眉間にしわを寄せて聞き返す。その男性は微笑みながら私に近づいてくる。それに合わせてゆっくり後退する。


「オレのこと、忘れたわけじゃないだろう?」

「もしかして…。徹?」

「ああ。やっぱり忘れたわけじゃなかったね。良かった。」

「……どうして。」

「どうして?もちろん、迎えに来たんだよ。ほら、花を持ってきたよ。」


 彼の手には花束が握られている。彼とはもう随分前に別れている。なぜ、今頃…。


「どうゆう事?」

「あれ?気づかなかったの?毎日花びらをプレゼントしてたのに。」


 笑いながら花束を私に差し出してくる。一気に血の気が引いていくのがわかった。おかしい。

 どうしてここにいるの?

 どうやって私を見つけたの?

 なんで今更迎えに来たなんて言うの?

 花びらってどういう意味?

 わからない事だらけ。


「どういう事!?」

「わからないの?香織の為に毎日花びらをプレゼントして、もうすぐ会いにいくって伝えてたのに。ほら、今日で27日目。香織の今の年齢に追いついたよ。だから花束を持って会いに来たんだ。今まで、待たせてごめんね。」

「意味がわからないわ!来ないで!!」

「怒ってるの?遅くなってごめんって。なかなか香織が見つからなかったんだよ。でも、やっと見つけた。オレと行こう?」

「なんの事!?私たちはもうなんの関係もないでしょう?迎えになんて来られても困るの!」

「だから、こんなに時間がかかってしまって悪かったよ。許してくれるだろ?」

「嫌!来ないで!!」


 彼の手が私にゆっくりと延ばされた。私はパニックに陥りながら叫び、マンション入り口から後ずさる。

 その行為に彼が怒りの表情を浮かべた。

 どうして?訳がわからない!


「香織!!」


 マンションの外から叫ぶ声が聞こえた。間違えるはずもない、崇史さんの声。私は何も考えず、振り向くとそのまま崇史さんの元へと走った。


「香織、どこに行く!?」


 後ろで徹が声を上げる。その声に捕まらないように必死で走る。目の前には、髪を乱して私に走り寄ってくる崇史さん。私はそのまま崇史さんの腕の中へ飛び込んだ。すぐさま崇史さんがしっかりと私を抱きしめてくれる。


「香織、大丈夫か?怪我は?」


 耳元で崇史さんの心配そうな声が聞こえるが、私は声を出す事も出来ず、ただ首を横に振るだけ。だが、それだけで崇史さんには伝わる。ホッと息を吐いた音がして「良かった…。」呟きが聞こえた。


「香織。どういうことだ?そいつは誰だよ?」


 私の背中に怒りを含んだ声が掛けられる。が、私は震えてしまって声が出せない。


「おまえこそ、誰だ?」


 崇史さんの低い、冷えた声が答える。


「オレは香織の彼氏だ。香織から離れろ。」

「それはおかしいな。香織は俺と付き合ってるんだが?」

「そんなわけはない!香織、お前はオレの彼女だろ?」

「違う!徹とはもう5年も前に別れたじゃない!今まで連絡を取ったこともなかったのに!」


 私は崇史さんにしっかりとしがみついたまま必死に震えを抑えて叫ぶ。

 私を抱きしめる崇史さんの腕の力が強まる。


「別れてない!それに5年会わなかっただけでオレを忘れるなんて!」


 徹が一歩足を踏み出した。途端、


「動くな!これ以上香織に近づくな。」

「なんだと!?」

「香織が嫌がっているのがわからないのか!」


 そう言うと、徹から私を隠すようにさらに強く抱き込まれる。私はあまりの混乱に泣き出してしまった。崇史さんと徹は睨み合っているのだろうか、どちらの声も聞こえて来ない。

 そこに。


「どうしました?」


 睨み合う私たちに少し緊張した声を掛ける人がいた。それは以前、警察に相談した際、巡回を増やすと言ってくれた警官だった。その警官は私を認め、


「あなたは…。この人が犯人ですか?」


 徹を見ながら崇史さんに問う。


「そうです。彼女が以前相談した犯人です。連れて行ってもらえますか?彼女が怯えてしまっている。」

「わかりました。君、一緒に署まで来てもらおう。」


 警官は徹に近寄るが彼が逃げる様子はない。「香織…。」呟いておとなしく連れて行かれた。

 崇史さんはホッと腕の力を抜いて私の顔を覗き込んで言う。


「香織、大丈夫だよ。もう安心していいから。」


 崇史さんの優しい声と笑顔に意識が遠くなっていった。





——マンション前で香織を見つけた時。


 花束を持った男が香織に詰め寄っていた。誰だ!その男は!怒りにカッとなるが、真っ青な顔の香織を見て思わず叫ぶ。

「香織!!」

 すると香織はすぐさま振り向いたと思ったら俺に向かって走り出した。そのまま俺の腕の中に躊躇なく飛び込んで来る。その瞬間、あまりの嬉しさに現実を忘れた。可愛い!しっかりと抱きしめる。と、腕の中の香織が微かに震えているのに気がつき、現実に引き戻される。

「香織、大丈夫か?怪我は?」

 俺にしがみついたまま首を横に振る。その仕草が可愛いと思いつつ、ホッと息を吐き「良かった…。」と漏らした。すると、そんな香織を見た男が声を上げたが、俺がもう二度と香織を離す訳がない。俺はいつもの無表情に戻り、怒りを抑えた声で言い返す。その会話に震えながら香織が口を挟んだ。その言葉に男が一歩近づいて来る。すぐさま静止の声を上げる。こいつ、バカか。香織が恐がっているじゃないか!俺は香織がこの男の視線に晒されているのさえ嫌になって、隠すように抱き込んだ。

 しばらくの間、睨み合う。

 そこに横から声が掛けられた。警官だ。その口ぶりからすると、香織の事情を知っているようだ。話が早くて助かる。その異様な雰囲気から最近の香織への嫌がらせがおそらくこの男だろうと検討を付けていた俺は、すぐに連れていってもらえるよう、頼んだ。

 その男は警官を見ても逃げる素振りも見せず、香織を見つめたまま小さくその名前を呟いただけで、おとなしく連れて行かれた。

 良かった。俺はやっと香織を抱きしめる力を少し緩め、その顔を見ながらできるだけ優しく話しかけた。

「香織、大丈夫だよ。もう安心していいから。」

 香織は泣いていたが一瞬表情を緩めて、安心からか気を失ってしまった。

 俺はその柔らかい身体をしっかりと抱きとめ、このまま香織の部屋に彼女を帰すのは心配だったため、自分の部屋へ連れて帰ることにした。







 ゆっくりと意識が浮上する。瞼の裏が眩しい。どうやら朝のようだ。私はそこまで感じると、急に昨日の事を思い出した。突然、震え出す。瞼が重い。おそらく寝ながら泣いたのだろう。

 そこで気づく。お腹の当たりがなんだか重たくって、暖かい。その暖かさにゆっくりと震えは収まっていった。が、今度は手が動かない。どうしたんだろう?

 私は小さく呻きながら、重たい瞼をゆっくりと開けた。

 天井が見える。しかし、自分の部屋の天井ではない。寝起きのほんやりした頭で考える。ここはどこだろう?ぼーっと天井を眺めていると声がした。


「香織?起きたのか?」


 崇史さんの声だ。ゆっくりと声の方を見てみると。


「はっ?」


 寝ている私の腰に腕を回し、胸に顔を埋めて抱きついている崇史さんがいた。


「おはよう。よく眠れたみたいだね。」

「なんでっ!?」

「昨日、あのまま香織を部屋に帰すのは心配だったから、俺の部屋に連れてきたんだよ。」


 私を見つめ微笑みながら言う。


「それより、なんか手が動かないんですけど!」

「うん。手、動かないように縛ってるからね。」

「だから、なんで!?」


 手を必死に動かしてみるが、どうやらベッドヘッドに繋がれているようで全く動かせない。崇史さんは身体を起こして私を見下ろし、黒い笑みを浮かべた。


「香織。全部、話してもらうよ。」


 コワッ!




思ったよりアッサリと解決しました。ってか、崇史さんが結構余裕でおもしろくない!もっと焦れば良かったのに〜!

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