別れの夜に (3)
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岳はここからゆっくりと好きということはどういうことなのか、僕に向き合って知ってくれていった。
秋の夕暮れに、岳の手をとって繋いだのは僕が先だった。
冬の冷たい海岸で、緊張に震えながら「好きだよ…」と言って、初めて唇を重ねてくれたのは岳だった。
僕たちは、ゆっくりと恋をして、愛を知った。
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僕たちはずっとこのまま、今まで通りに幸せに一緒に過ごすと思っていた。
この夏に入る前に両親から話があった。
二人は離婚して、父は現在の単身赴任先に戻り、このマンションは解約して母は実家のある、ここからは随分遠い県に引っ越すことになったと言われた。母はそこへ一緒に行こうと僕に言った。夏休みの終わりには、引っ越すことになると言った…。
僕は動揺し、両親の離婚にも悲しさが湧いてきたけれど、僕は僕で、ここに全てがあった。昔馴染みの友達も、頑張って入った岳と同じ高校も…。…岳が、…僕の全ての岳が…。
僕は両親に初めて泣いて懇願したけれど、現実を変えることは出来なかった。
数日後、岳にこの話しをした。
岳は泣いてしまった僕を抱き寄せ、背中を何度もさすってくれた。
「…那月、大丈夫、俺逢いに行くから、遠くたって逢いに行くし、お前だって、うちに来ればいいよ、今までみたいにうちに泊まりに来ればいいよ。母さんなんて、お前のこと小さい頃から大好きなんだぜ!」
「…遠距離恋愛、きっとロマンチックだよ。LINEもしよう、電話もしよう!俺ずっと那月のこと考えるから。好きだって、今以上に沢山伝えるから!」
岳は僕を励まそうと一生懸命笑顔を作って、岳が思い付く二人にとってプラスになりそうなことを矢継ぎ早に言ってくれた。
僕は一度落ち着きを取り戻した。
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