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別れの夜に (1)


ひゅ〜〜……、どーーーん!!


ひゅ〜〜……、どーーーん!!

 

バチバチバチ…

 

 

夜空いっぱいに花火が上がるたび、歓声が響き渡る。

 


 僕達の住む街の夏の風物詩、花火大会はいつも夏休みももう半ばを過ぎた頃にある。

 


 夏の終わりの合図みたいだった。

 


 僕は今日、花火が散って消えてしまうように、別れを告げに来た…。

 

 

 

(がく)が見つけたこの場所、人はほとんどいないし、何といっても花火と海までよく見えて最高だよね」


波の音も遠くに聞こえ、潮風が時折心地よかった。

 

 高台にある小さなさびれた公園、岳と花火をここへ見に来るのは三度目だった。地元の人にもあまり知られていないらしく、人も少なかった。

 

 岳と僕は手すりに前のめりに寄りかかっていた。後ろから見えないように、胸元の手すりの上でこっそりと手を重ねていた。

浴衣の下ろしたての特別な香りと、岳の匂いが混ざり合って、僕の胸はどきどきと早まる。

 

 にこやかに花火を見ている岳の顔には赤や緑に光る花火の色が映っては消え、映っては消え綺麗だった。僕は脳内でシャッターを切る。この瞬間を胸に焼きつける。

 


僕は小さな声で囁く。

「大好きだよ、岳…」

 

「…岳、僕を好きになってくれてありがとう…」

 

 僕はわざと花火が大きな音を上げて弾ける瞬間を狙って、何度も岳に愛の告白をした。

 

 声は花火の音にかき消されて岳には届かない。

 



 花火が一旦止み、眼下に見える花火大会の会場から、涼しさが入った潮風に乗って、楽しげな喧騒が上がってくる。


 僕たちはこの公園を見つけてからは、早い時間に下の会場にある露店を回り、花火が始まる前にはこの公園に来ることにしていた。人混みの蒸し暑さも無く、伸び伸びと見ることが出来るからだ。

 


那月(なづき)、花火はやっぱり最高だな!今年もお前と来れて良かったよ!絶対来年も来ような」

花火の迫力に(たかぶ)ったように、いつもより大きな声で僕に言った。

 

 


 

 


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