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手痛い別れ

作者: 小雨川蛙

いわゆる胸糞系の話です。

ご注意を。

 

「このバカ!」


 そう言って彼女は僕の頬を思い切り殴った。

 呆然とする僕に彼女はさらに言った。


「このバカ男! 二度とその面を見せないで!!」


 弁明をしようとした僕をそのままに彼女は背を向けて走り去ってしまった。

 呆然とした僕を独りにしたまま。


 ・

 ・

 ・


「……ぁ」


 重い感覚から目を覚ます。


「あっ!?」


 彼女の妹の声が僕の耳に響いた。


「お義兄さん!? 目が覚めた!?」


 その声と共に僕は思い切り彼女に抱きしめられた。

 朦朧としたまま辺りを見回す。

 どうやらここは病院らしい。


「お義兄さんのバカ! こんなことをしたってお姉ちゃんは喜ぶわけないでしょ!?」


 その言葉に全てを思い出す。

 頭が重い。

 だが、どうにか僕は妻の妹を抱きしめ返した。


「ごめん。僕が……どうかしていたよ……」


 そう言うと義妹は大泣きしながらも安堵の息を漏らしていた。


「妻に……叱られたよ……二度と……その面を見せないでって……」

「お姉ちゃんらしいや」


 義妹は泣きながら笑う。


 そう。

 僕は妻を失った。


 故に慌てて僕は彼女を処分しようとしたのだ。

 火ならば傷も含めて消し去ってくれると分かっていたから。

 だが、ちょっとしたミスで僕の身体にまで火が燃え移ってしまったのだ。

 それをこの義妹は妻を失ったことで狼狽えた僕が心中をしようとしたと勘違いしたらしい。


 あぁ。

 やっぱり、僕って運が良いなぁ。


 罪がバレなかった上に。


「お義兄さん。もう死ねないように私が見守ってあげるから……」


 新しいおもちゃも手に入るなんて。


 窮地に一生を得た僕を義妹は安堵したように見つめるばかりだった。

お読みいただきありがとうございました。


作品としてはここで終わりですが、この男の結末は読者の皆様に委ねます。

煮るなり焼くなり好きにしてください。


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― 新着の感想 ―
 まえがきあとがきの実験的な試行を思考したのだろう作者の人心が見えて安堵する不思議な読み心地……
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