文化修行とニダイの村
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5、魔法小学校Try4
歩を進めると、思いの外、すんなりとイチノサンの祠にたどり着いた。
祠には、勇者が三十名、すでに待ち構えていた。誰もがみんな、強力な武器を携えている。
さっさと修行を終わらせて討伐に打ち込みたい勇者で、懇談の宴という名の戦場は、欲望が渦巻いていた。
どこからともなく法螺貝を吹く音がして、懇談の宴が遂に始まった。
多くの勇者が立候補のため、一斉に剣を抜いた。
村人から得た〈祝福の知識〉から、勇者たちが純粋なボランティア精神で立候補しているわけではないことは容易に想像がついた。
おそらく、出てきた食事は嫌いなものから先に食べ、残りを落ち着いておいしく食べたいタイプの者たちばかりなのだろう。
治安の良い村だけあって、人間レベルの高い者たちばかりのようだ。レガシーも同じく、さっさと修行を終わらせてスッキリしたいタイプだった。
レガシーは闘った。しかし、難しい闘いだった。一斉に振りかざされる剣のうち、一本がレガシーの脇腹を貫いていた。
ザシュ!!
「く……!」
苦悶の表情を浮かべ、レガシーは倒れ込んだ。
意識が遠のいていった――
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6、魔法小学校Try5
月日も流れ、懇談の宴の闘いに負け続けたレガシーは修行に当たらないまま、いつしか四年目に突入していた。
今日は四年目の懇談の宴に来ていた。
ふと目をやると、隣の勇者は、かなり強そうな身なりをしていた。強力な武器も携えている。かなりレベルが高そうな奴だ。
レガシーは、隣の勇者に近づいてみた。
「三人兄弟の末っ子の魔法使い故、すでに山ほど懇談の宴に参加させられているもので……」
「なるほど。ちなみに、そなたは何の修行を申し出るつもりだ?」
「私は申し出ないつもりだ」
A、そうなんだ
→B、なぜなんだ!?
「なぜなんだ!?」
「この修行には、時として二巡目というものが存在します」
A、そうなんだ
→B、なんだと!?
「なんだと!?」
「修行を終えた勇者ばかりという偏りが出るクラスがあるのです。六年目の懇談の宴で発生するものです。恐ろしいことです……」
A、仕方ないよ
→B、本部は対策をしないのか!?
「本部は対策をしないのか!?」
「どうしようもないシステムです。運命です。すべては神のお導きのままに……」
「なんということだ……」
レガシーは〈祝福の知識〉を得た。
レベルが500から1000に上がった。
そして、六年目で二巡目に当たったら物凄く嫌だから、ベテラン勇者の彼と同様、四年目、五年目の宴では闘いをスルーすることにしたのだった――
7、魔法小学校Try6
六年目の懇談の宴が始まった。
幸いなことに、ロクノヨンの祠では二巡目は発生しなかった。そのため、祠中は穏やかな空気に包まれている。多くは修行を終えて呑気にお喋りをしている勇者たちで溢れ返っていた。
闘いは容易だった。立候補する勇者も当然ながらいないため、魔女の差し出される呪いの壺から修行名が書かれた貝殻を引き抜く作業をするだけであった。
レガシーが引いた貝殻には『文化修行』と書かれていた。
あっけなくも懇談の宴の闘いは終わった――
8、文化修行Try1
今日は、村の夏祭りの実行修行会の日だ。
それは、夜の刻に始まった。
レガシーのように討伐をしている若い勇者もいるが、多くは討伐を引退して、年金を貰いながら人生の余暇を楽しむ年配の勇者たちで溢れ返っていた。
レガシーは隣の勇者に近付いてみた。
「魔王の提案に逆らってはならぬぞ」
A、そうなんだ
→B、どういうことだ!?
「どういうことだ!?」
「こちらが提案しても却下されるだけだ。時間の無駄だ」
その時、魔王が教壇に立った。
「皆のもの、お忙しい中、お集まり頂き、ありがとう。これより、夏祭り実行修行会を執り行う。毎年同様、魔法小学校のグラウンドでテント張りを……」
数分間の説明を根気強く聞いたレガシーは、ふと思い立ち、挙手をした。
「熱中症警戒アラートが発令されるようだが、それについてはどう対策されるおつもりか?」
「熱中症の危険性はあるが――執り行う」
A、そうなんだ
→B、なぜなんだ!?
「なぜなんだ!?」
「魔法使いたちの笑顔のためだ」
「……涼しい十月に延期してはどうか?」
「運動会がある。グラウンドは空きがない」
「どういうことだ。運動会は一日で終わるものだろう」
「そなたは何も分かっておらぬようだな。この村には、他にも市民運動会と放課後クラブの運動会もあるのだ。更にはサッカークラブにもグラウンドを貸している。運動会の予備日も合わせれば、十月に空きなどどこにもないわ!」
→A、思い切って中止にしてはどうでしょう
B、分かりました
「思い切って中止にしてはどうでしょう」
「黙れ小僧!」
突然だった。魔王の振りかざす剣はレガシーの身体を貫いていた。
ザシュ!!
「く……!」
苦悶の表情を浮かべ、レガシーは倒れ込んだ。
意識が遠のいていった――
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9、文化修行Try2
「十月に空きなどどこにもないわ!」
→A、3月の祭りと合同にしてはどうでしょうか
B、分かりました
「3月の祭りと合同にしてはどうでしょうか」
「黙れ小僧!」
突然だった。魔王の振りかざす剣はレガシーの身体を貫いていた。
ザシュ!!
「く……!」
苦悶の表情を浮かべ、レガシーは倒れ込んだ。
意識が遠のいていった――
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10、文化修行Try3
「十月に空きなどどこにもないわ!」
→A、せめて時間を短縮してはどうか
B、分かりました
「せめて時間を短縮してはどうか」
「黙れ小僧!」
突然だった。魔王の振りかざす剣はレガシーの身体を貫いていた。
ザシュ!!
「く……!」
苦悶の表情を浮かべ、レガシーは倒れ込んだ。
意識が遠のいていった――
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11、文化修行Try4
「十月に空きなどどこにもないわ!」
→A、今年はやめて、来年の5月に開催するよう来年度に申し送りをしてみてはどうでしょうか
B、分かりました
「今年はやめて、来年の5月に開催するよう来年度に申し送りをしてみてはどうでしょうか」
「黙れ小僧!」
突然だった。魔王の振りかざす剣はレガシーの身体を貫いていた。
ザシュ!!
「く……!」
苦悶の表情を浮かべ、レガシーは倒れ込んだ。
意識が遠のいていった――
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12、文化修行Try5
「十月に空きなどどこにもないわ!」
A、今年はやめて、来年の5月に開催するよう来年度に申し送りをしてみてはどうでしょうか
→B、分かりました
「分かりました」
本来は二時間で済む宴が長々と続いたことに、その場にいる者は皆一様に顔を曇らせていた。
結局、最終的にはこちらが折れてお開きとなった。
今年度も魔王を倒すことは叶わなかった――
魔王の一声で、熱中症警戒アラートが発令されようと夏祭りは実行されることとなった。
その後、景品の買い出し、テント張り、ライトの設置、段ボールで作ったゴミ箱の設置、看板の設置……。仕事は山ほどあった。
勇者は闘った。
(一年間だけの修行だ……!)
それだけが心の支えだった。
そうして、月日は流れゆき、勇者の魔法使いは魔法小学校を無事に卒業した――
13、ニダイの村
レガシーはまた旅に出た。転勤族のため、討伐のエリアが変わったのだ。
そして、ある村――ニダイの村にたどり着いた。
一人目の村人を発見した。
レガシーは、早速、近づいてみた。
「この村では、自治会の班長という修行があります。そこでは、このエリアの班長と兼任して、もう一つの修行をしなければならないのです」
「それはどんな修行だ」
「防災防犯修行、衛生修行、庶務修行、会計修行、地蔵盆修行……」
「どれが一番楽なのだ!」
レガシーは叫んだ。
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読んでくださって、ありがとうございました。
家事に育児に仕事に役員に、勇者の皆さん、本当にお疲れ様です。
読んで意味が分からなかった方のため、念のため記しておきます。
勇者→保護者
魔法使い→子ども
修行→委員
懇談の宴→懇談会
祠→教室
討伐→仕事
こんなバカげた話を書くのに一年以上もかかるとは……。なにやってんだって感じですが、久し振りに書き上げられて達成感を味わうことができて良かったです。
本当にありがとうございました。




