深夜、好きなお姉さんキャラが部屋に出て来て、年上だと指摘された時の話! ~昔は年上で憧れの女性だった彼女は、いつしか年下になっていた。だけど、今でもその事実を断固として受け入れない~
インターネット上で目にした意見を参考に書きました。おじさんの年齢は、ご自由に設定して下さい。
「私のこと、お姉さんキャラって言うけど、あなたのほうが年上じゃない?」
深夜、おじさん年齢のあなたは、大きなタペストリーに描かれた女性キャラに指摘されて、戦慄が走った。
長年飾っていたこの等身大タペストリーが、喋るわけがない。
だが、明るい表情で立っている彼女の口は確かに動いていて、担当声優と同じ声で喋っていた。
あなたは夢かと思った。信じられないと思った。あなたは恐怖心から悲鳴を上げ、部屋から飛び出して、家の外へと逃げ……ようと思ったけれど、なんで好きな相手から逃げているのかと考え直す。
だんだんと、あなたは冷静さを取り戻していった。
恐る恐るあなたは自室に戻り、同じタペストリーを凝視した。
あなたお気に入りの、年上のお姉さんキャラクター。かつて、そして今も憧れを持っていて、他の関連グッズも手放さずに取ってある。
彼女は作中だと、大人びた口調で話す。容姿も発育も良い。同じ作品で一緒に登場する美少女キャラの中では最年長だから、ファンの間でも年上キャラだという共通認識がある。
確かにあなたが若かった頃は、本当に年上だった。
しかし、今や彼女は、おじさんのあなたよりもずっと年下だ。
あなたはそれを、認めたくない。
「私のこと、お姉さんって扱いをするけど、今だと私のほうが年下よね」
彼女は再び同じようなことを言った。
二回目の指摘を受けたあなたは、もう情けなく逃げたりはしない。
「年下なら敬語で喋ったらどうだっ!」
あなたは深夜に叫んだ。
「……分かりました」
敬語で返答した彼女の表情は、反省するような感じに変化している。
もし敬語で喋ろとあなたが言わなければ、彼女らしい言葉遣いが続いていたことだろう。
「ん?」
あなたが気づいた時には、彼女はタペストリーの外に出ていた。背後のタペストリーのほうは、彼女が切り取られたかのように残りの部分だけになっている。
彼女は精密な3Dモデルのようで、服をはだけさせる動きも、人間のように滑らかだった。
素晴らしい見た目の、本物のようなブラを、あなたへと晒す。
「あなたに意地悪を言ったお詫びです……」
彼女は胸部をあなたに圧しつけた。
絶対に嬉しいと信じられる、確かな感触があった。
「……ありがとう」
あなたは感謝を述べて、
「俺のほうもすまなかった。憧れた相手……いや、今でも好きな相手に取る態度じゃなかったよな……」
「いいんですよ。……私を今でも愛してくれて、ありがとうございます」
年下の彼女は、今でもあなたにとっては、年上のお姉さんだ。
違和感があるので敬語はもういいと、あなたは伝えた。
「分かったわ。じゃあ、もう一度、言わせて。私を今でも愛してくれて、ありがとう。今夜は、寝かせないわよ? あっ、ごめんなさい。性的な意味じゃないからね。私は君にそんなことをするつもりはないし……」
「いや、立派なものを圧しつけてくれてるじゃないか」
「これは感謝のしるしよ。お姉さん、君には喜んでもらいたいんだから。でも、一線は越えちゃダメなの」
「なんで?」
「だって私は、お姉さんキャラだから」
彼女は表情豊かに微笑んで、あなたが苦しくなるぐらい、特大な胸部をあなたに密着させた。
少し経って、ようやく豊満な世界から解放されたあなたに対し、
「このままでいいかしら?」
彼女は下着を見せたままでいいのか聞いてきた。
あなたが答えた後、あなたは過ぎ去ったかつてのことを思い出しながら、彼女とずっと話を続けた。
やがて、あなたは彼女の思いに反して床で寝てしまい、目が覚めた頃には、彼女はタペストリーに戻っていた……。
この深夜のことを忘れられない。
あれから彼女は、もう出て来てはくれないけれど、あなたはふと目に入ったタペストリーの、上部に溜まっていた埃を拭いた。けっこう積もっていたことを知る。
改めて、あなたは年上のお姉さんキャラを見つめた。
少しだけ、彼女の表情が好ましくなったような気がした。
(終わり)
誰もがいつかは共感するかもしれないお話です。
最後までお読み下さり、ありがとうございました。