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7 確実で犠牲の少ない方法



 オレとヲグナは一路クマソを目指して、西に向かって旅をする。


「見て兄上、バッター」


「おお、すごいな。

 よく捕まえたじゃないか、ヲグナ」



「見て兄上、マムシー」


「うおっ!?

 よく捕まえたな、ヲグナ。すごいぞ。

 ……けど、マムシは毒があって噛まれたらヤバいからな。

 今後は見つけてもほっとけ」


「ん、今度からはそうする。

 焼いて食うから捌いてー」


「……えーと、マムシの捌き方……?

 どっかで小耳に挟んだことはあるけどどんなんだったかな……?」



「見て兄上、クワガター」


「おお、すごいなヲグナ……またオレの顔に乗せる気じゃあねえだろうな……?」


「ばれたかー」


「ばれるわ!

 ……このヤマトまほろばプリンスオオウス、天丼ネタは喰らわね――あおっ!?

 御衣みその! 内に! くっ、クワガタがワキワキと横行闊歩! ひぃ!」


「あはは」


 ……そんな風に旅をして、オレとヲグナは西国、クマソに辿り着いた。


     §


「……厳重だな……」


 山に登り、そこで樹に上り、オレとヲグナは一帯を見渡す。


 眼下には、クマソタケル兄弟の居館とおぼしきものがあった。


 敷地は外周を水濠で囲われ、内側を木柵で三重に護っている。

 それら防御設備の中心に、ひとつ、目立って大きく真新しい高床建物があった。


 この辺りで見た限り、最も大きな建物だ。

 権力者の館に間違いないだろう。


「よし、あれがクマソタケルの家で間違いないな。

 じゃあ行こうぜ、兄上ー」


「待て待てヲグナ。

 真昼間から敵中に突っ込むつもりか?」


「夜だろうが昼だろうが、戦は勝つか負けるかだろ。

 二人でお互いの背中を守りながら、敵を殺していけばいい。

 そのうち、クマソタケルも殺せるさ」


「そ、そりゃ、ヲグナは強いから、不可能じゃないかもしれんが。

 なるべく確実で犠牲の少ない方法を取ろうぜ」


 ……おかしいな。


 ヲグナは――ヤマトタケルは、記録によれば智謀の英雄のはずなんだが。

 なんでド無策正面突破しようとしてるんだろう?


 オオウスオレが生きてるせいで、何かおかしくなってるのかな……?


「えー、なんでだよ、兄上?」


「ヲグナはどうにかなるかもしれんが、オレは途中で討たれて死んじまうよ」


「なら、おれ一人で行ってくるよ」


「待て待てヲグナ。

 可愛い弟を、無策で単身敵中に送るのはしのびねえ。

 ……それにタケル兄弟を殺したあとは、クマソの民もヤマトにまつろうんだ。

 貢物の量は働き手の数で決まる。

 後々のことを考えると、敵の犠牲も少ない方がいい。

 その上確実に勝てるんだ。

 なら、敢えて正面突破を選ぶ理由もないだろう?」


「なんかいい方法があるのか、兄上?」


「おうとも、ヲグナ。

 伊勢で賜った、叔母上の御衣みそ御裳みもブラがあるだろう?

 あれを使ってお前を女装させる。

 プリティガールと油断させて肉迫し、気を抜いてるところを殺すんだ」


「あはは、ふざけたこと考えるなあ、兄上……!

 面白そうだしやってみよう!

 バレたらバレたで、予定通り殺しまくればいいし」


「よし。それじゃあ、化けさせてやるから脱げヲグナ。

 ヤマトまほろばプリンス、オオウスPのプロデュースを見せてやる……!」


「はい、兄上ー」


 言って、ヲグナは全裸になる。


「ちんこまで出さんでいい!!!」


「着換え前におしっこしときたくて」


     §


 クマソの山中。

 オレはヲグナを女装させにかかる。


「……短剣を鞘ごと、こうして胸元にくくりつけ……」

「うん」


「……その上にパッドとタオルを重ねて偽乳を作り……」

「おー」


「……デカパイブラで覆い隠す……これで爆乳化は完了だ」


「うおー! おれボインボインじゃん! あはは」


 偽乳を揉みながら、ヲグナがはしゃぐ。


 叔母上とほぼ同サイズの豊かな偽乳が、ヲグナの小柄な体躯についている。

 ために、かなりすごい爆乳となっている。


「はしゃぐなはしゃぐな。

 肝心なのはこれからだぞ、ヲグナ?」


 その後も、オレはヲグナのドレスアップを続ける。


 御衣御裳みそみもをフィッティング。

 クマソ男子ウケを狙ったあざと可愛いメイクとヘアアレンジを施す。


 最後に微調整を加え……完成した。


「どうだ? ヲグナ」


 コンパクトミラーを使って、オレはヲグナに自身の姿を見せる。


「すげえ……かわいいな、おれ……!」


「素材の良さとオオウスPの技量のマリアージュよ。

 それじゃあ、晩飯時を狙って行くとするか、ヲグナ。

 まほろばパーリーピーポーは、バウンサーに自分を必ず受け入れさせるものだ。

 招待状などなくとも、な……!」



本作をご覧くださりありがとうございます。


感想、評価、いいね、ブクマなど、お気軽にリアクションくだされば幸いにございます。

次回更新も、明日の夜を予定しております。

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