6 伊勢
「……よくぞおいでくださいましたね、オオウスの皇子よ。
クマソ征討に向かわれる件、既に聞き及んでおります。
天照大御神の御加護がありますよう、ねんごろに祭祀を執り行うとしましょう」
「なー、叔母上、おれ、ちょっと苦しい……」
ヲグナを抱きすくめ巨乳に溺れさせながら、ヤマトヒメは厳かな口調で言う。
「――そ~いうわけだからっ♪
今日は叔母上のところに泊まっていきまちょうね~♡ ヲグナきゅん♡
どうする? 何する? ヲグナきゅんはまずどうちたい?
ご飯食べる? ゲームする? お昼寝する? お風呂入る?
なぁ~んでも、ヲグナきゅんの好きにしていいよ~♡」
「……じゃあ、飯食おうぜ、叔母上。
おれお腹減った」
「はぁ~い、ヲグナきゅん♡
ご馳走用意するからぁ♡ ちょ~っと待っててね~♡」
言って、ヤマトヒメはその場を去る。
おそらくは食事の支度の指示を出しに行ったのだろう。
……ヲグナへの口調の甘さにびっくりして、何も言えなかった。
ヤマトヒメは、古事記においてもヤマトタケルに親切な人物ではある。
しかし、ここまで好意的だとは……!
とりあえず歓迎されているようでよかった。
§
食事の支度が整えられた。
見るも鮮やかな美食の数々が、豪奢に供せられている。
「ヲグナきゅんのお席は私の隣ね。
それとも、叔母上のお膝に座る?」
「隣にしとく」
「えー、ヲグナきゅん、叔母上のお膝、嫌い?」
「だって叔母上、狭いじゃん。
おれ、もうそんなにちっこくないんだぞ」
「ウフフ♡ ヲグナきゅんごめんねぇ~♡
叔母上、ヲグナきゅんが赤ちゃんだったときのイメージ強くてぇ~♡
もうこんなにおっきくなっちゃったのにねぇ~♡
……はぁ……♡
おっきくなってもかわいいねぇ、ヲグナきゅん……♡」
§
「はーい、ヲグナきゅん、伊勢エビですよ~♡
あーんして?」
「あー」
ヤマトヒメに差し出された伊勢エビを、ヲグナは口で受け取る。
「おいしい?」
「うまい!」
「おいしくてよかったね~♡
伊勢エビ食べれて偉いねぇ、ヲグナきゅん……♡」
「はーい、ヲグナきゅん、鮑ですよ~♡
あーんして?」
「あー」
ヤマトヒメに差し出された鮑を、ヲグナは口で受け取る。
「おいしい?」
「うまい!」
「おいしくてよかったね~♡
鮑食べれて偉いねぇ、ヲグナきゅん……♡」
「はーい、ヲグナきゅん、舞茸ですよ~♡
あーんして?」
「あー」
ヤマトヒメに差し出された舞茸を、ヲグナは口で受け取る。
「おいしい?」
「うまい!」
「おいしくてよかったね~♡
きのこ食べれて偉いねぇ、ヲグナきゅん……♡」
そんな風に、ヲグナが始終ヤマトヒメに可愛がられるのを見ながら食事をした。
結構な食事だった。
献立が豪勢だったのもあるし、
ヲグナが素直に可愛がられているのを見て、穏やかな気持ちになれたのもある。
その後、デザートの赤福と茶が出された。
この辺りから、ヲグナはうつらうつらし始めた。
食後、満腹になったためか、ヲグナはヤマトヒメにもたれて眠ってしまった。
「……すやぁ……」
「……ウフフ……♡
ヲグナきゅん、ほんとにかわいいねぇ……♡」
ヲグナの髪を指先で弄びながら、ヤマトヒメが言う。
「……私としても、叔母上がヲグナをお慈しみなさるさまを見るのは快い。
今後も、ヲグナに良くしてやってくださいますよう……」
オレは頭を下げつつ、ヤマトヒメに言う。
……古事記のヤマトタケルは、父景行天皇には恐怖される。
しかし叔母のヤマトヒメは、一貫して親切だ。
「父が自分の死を望んでいるとしか思えない」
という嘆きの言葉も、伊勢でヤマトヒメに対して話されるものだ。
惨殺されるはずだったオオウスが助かったように、
悲劇的なヤマトタケルの最期をなんとかする。
そのために、ヤマトヒメとはなるべく仲良くしておきたい。
そう思って、オレは一応言っておく。
そもそも古事記でも不仲ではないのだし、
オオウスがどうこうしようがするまいが無意味かもしれないが。
本来、死んでいる人物の言葉なわけだし。
「もちろんです。
……しかし、オオウスの皇子よ。
あなた、何か少し変わりましたね?
ヲグナの征旅に同行したり、
そのような気遣いの言葉を発するなど、以前なら考えられません」
……おっと、現代人の要素が出すぎたかな?
「何、ちょっとした気まぐれですよ」
軽い口調でオレは言う。
まほろば金縁涙型サングラスで目元を隠しながら。
「西に物見遊山に行くのもインタレスティング、
そこにヲグナとクマソの戦が加わるならばなおさら、というだけのことです」
§
「――神風の伊勢国祈く――」
武運長久の祭祀が行われる。
当初の目的を遂げたので、オレとヲグナは伊勢を去ることになった。
§
「……ううう……ヲグナきゅんが行っちゃうの、叔母上つらいなぁ……
けど、しっかりするから。
ヲグナきゅんもしっかりね……!」
「はい、叔母上ー」
「うんうん、可愛いお返事……♡
――さて。
可愛いヲグナきゅんに、叔母上から贈り物です。
私の、御衣、御裳、御Hカップブラジャーを授けます。
伊勢の斎王である私の衣服とは、天照大御神の御加護も同然。
きっと、ヲグナきゅんを助けてくれることでしょう……!」
「ありがとうございます、叔母上ー」
「それじゃあまたね~、ヲグナきゅん……♡」
……そんな風にして、オレたちは伊勢を去った。
西へ赴き、クマソと対決するために……!
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