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16,これが冒険者ギルドか〜




「ほらヨシ坊、ここは冒険者ギルドの本部だ」


ハバナさんが目前にある建物を指さす。

その建物は、カイゼルさんのお店に勝るとも劣らない立派さだった。

ここに来て始めて見た木造で作られた建物だ、しっかりと作り込まれた外観は特別な風情を漂わせている。

想像していたよりも10倍凄いぞ。


「これが冒険者ギルドか〜!!」


うお!よく見たら木じゃなくて、石に塗装して木目調にしてある。

めちゃめちゃ手間が掛かるだろうに、何かこだわりでもあるのかな?

・・・うーん分からないけど凄い。


そんな建物に結構な数の人々が頻繁に出入りしている。

街で普通にいる感じの人から、何だか高級そうな凝った服の人まで様々だ。


ーーよし、こんな所で眺めてても始まらない。

さあさあ!入って見ようじゃないですか、冒険者ギルドへと!!


「おーい、何してんだ。こっちだ、こっち」


冒険者ギルドへと入ろうとした僕達に、ハバナさんが声を掛けてきた。

何だか建物を通り過ぎて、こちらへと手招きしている。


「え、あれ?冒険者ギルド行かないんですか?」

「そこは違うからな、ほら行くぞ」


呼ばれて歩み寄った僕達を、顎をくいっと動かして、さらに誘導してきた。

頭にハテナが浮かんだ僕へと、歩きながら言葉を続けるハバナさん。


「ごはは!あれは本部だ、ほ・ん・ぶ」

「えっと、何か違うんですか?」

「そうだな、簡単に言えば冒険者組合の顔って感じだ。各ギルドの統括をしたり、依頼を受けたりと、お役所仕事を一挙に引き受ける場だな。だから、建物も綺麗だったろうが?」

「・・・はい綺麗でしたけど」

「仕事を依頼しに偉い奴らも来る。俺みたいなお上品な奴ならまだしも、コイツみたいなのがウロついてちゃ営業妨害だろうがよ」


そう言って肩に担いだヒャッハーな人をゆする。


「な、なるほど」


ゴリラ顔がお上品かどうかは置いといて、確かにモヒカンなヒャッハーたむろする建物なんか、絶対に入りたくないよ。

そんな話しをしている合間にも、ハバナさんはずんずんと進んでいく。

僕は少し速歩きで後ろをついて行った。


「なあヨシ、何か変な匂いしねーか?」


クマジャナイが少し顔をしかめながら鼻を動かしている。


「・・・そうかな?」

「なんかよ、空気が淀んでるって言うか、何てーかそんな感じ」

「ううーん、分かんないや。でも確かに町並みの清潔感が無くなってるような」


周りの建物は、白かったであろう壁が煤けているし、所々壊れていたりしている、何故か道にガラクタが積まれたりしている所もあるのだ。

すれ違う人達も何だかガラが悪いぞ。


「ほらよ、着いたぞ」


ガラクタの山から少しも行かない内にハバナさんが親指で指したのは、一軒の古めかしい大きな建物だった。


「これが冒険者ギルドか〜・・・なんかボロい・・・」

「ごっはっは!正直に失礼な奴だな」

「っは!?確かに!すみません!!・・・何と言うか、さっきの本部と趣が違いますね・・・」

「そりゃそうだ、こんな貧乏人の区画で外装なんて拘ってられんからな」

「そんなもんですか・・・」

「そんなもんだ。さあ、念願の冒険者ギルドに御案なーい、ってな」


僕たちはハバナさんを先頭に、入り口の大きなスイングドアを押して入っていく。


「・・・うっは!?」


建物の中は、思ったよりも活気があった、というか何かムワッとしているぞ。

各場所に置かれた丸テーブルに座っているのは、ゴツい鎧を来たオッサンや、フードを被った陰気そうなオッサン、あと目を引くのは筋肉ムキムキで上半身裸なオッサンとかである。

オッサンばっかじゃないか!実にむさくるしいよ。


いやでも、揃いも揃って真っ昼間から、陶器のジョッキで酒らしき物を飲んでるのは良いね!


「おう、ランバリオン!女子供連れでどうした。美人だからお前の女じゃねーな?護衛の仕事でも受けたのか?」


建物へ入った僕達を見て。

正確にはハバナさんを見つけて、ゴツい鎧のオッサンが椅子に座ったままヤジを飛ばしてくる。


「なんだバドラー、お前さんこそ護衛の仕事受けてただろう、昼間っから何酒飲んでんだ?」

「はぁー。それがよ、貴族門の方で大型の魔獣が出やがったらしくて、依頼人がビビっちまって行商キャンセルだとよ。んで、暇を持て余した俺は、ピクシーの涙ほどだけ出た違約金で飲んでるって訳さ」

「ごはっは、そりゃご愁傷様だ」

「ほんっとになぁ。ーなあ、美人さんに坊や、金があるなら俺も雇わねーか?仕事はきっちりこなすぜ?」

「一般人に絡むなや酔っ払い、俺はこのアホを連れてかなきゃならんから、もう行くぞ」

「へっ、まーたボコられてんのか、流石は鶏フェニックス、懲りねぇなぁ」


そう言ってバドラーとか言うオッサンは、サラミの輪切りを一つ口に運びビールで流し込み始めた。

このモヒカンの人、鶏フェニックスって呼ばれてるの?すごいアダ名だな。


「おいヨシ見ろよ、酒だ酒!いいねぇ、飲んでみてぇ!」

「ああ確かに、ビールっぽいのを皆んな飲んでるね、ここはやっぱり酒場なのかな?」

「1階はその通りだな、要件が済んだら何か食うといいさ」

「おっほー良いねぇ楽しみだぞ!!」


テンションの上がったクマジャナイの耳がピコピコと動いている。

声のデカさも相まって店中の視線を集めていた。


ズンズンと階段を登っていくハバナさんに続いて、僕たちも二階へと行く。

上がって直ぐに視界が開けた。

全部の部屋をぶち抜きにして、柱だけ残した広い空間だ。

沢山並んだ手前のベンチには何かを読んだりしながら複数人座っている。

奥には長いカンターがあって各ブースごとに仕切りで区切られており、その前で冒険者らしき人達が話しをしていた。


おおー

建物の外見がボロくて凄く心配だったけど、中はとっても冒険者ギルドしてる!!

いいねー、実にいい!


「俺はコイツを上に連れて行かなきゃならんから、ちーと待っててくれんか?」

「あ、はい」

「だがまあ、待ってるだけだと暇だろう、新人担当のドミニクちゃんにでも話しを聞いてみな。興味あるんだろ?優しく教えてくれるぜ」

「あ!ハイッ!」

「ごはははっ!ドミニクちゃんは13番の窓口だ、じゃあまた後でなヨシ坊」


豪快な笑いを響かせながら片手を上げて、ハバナさんはのしのしと階段を上がって行った。

それにしても、色々とお話しが聞けるだって?しかもドミニクちゃんが優しくって・・・受付嬢って事だよね!?なにそれ超楽しみっ!!


「あは〜さてさて早速」

「おうヨシ!楽しみだな、早く行こうぜ!」

「そうだね!行こうか・・・・って待ってクマジャナイ、何で階段降りようとしてるんだよ!」

「あん?酒飲みに行くんだろ?」

「いやいやいや、違う、全く違うよ!13番のドミニクちゃんって人に話しを聞きに行くんだってば!」

「ええ〜、まだ何かすんのかよ〜!酒飲みに行こうぜ〜!!もう待てね〜ぞ〜」


ううう、クマジャナイってば冒険者的な素敵要素に一ミリも興味無いな・・・

いやまあ、分かってたけどさ。


ーーしかたない。

僕は押し入れ鞄を漁る。

そして、二階の隅にある植木鉢の影に寄って、コッソリと絵を描き始めた。


ここを、こうして、こう!!

シャーペンをこれでもかと走らせ、出来るだけ素早く描きあげる。

ペカーと光るのは鞄の中に隠して抑えてっと。

よし出来た!!


「ほらクマジャナイ、バナナだよ〜」


隅でゴソゴソやっていたのを覗き込んでいたクマジャナイに、鞄から取り出した黄色くたわわな房を見せ付ける。


「おお?・・・あ、さっき言ってたやつかソレ!」

「そうそう、房からもいで黄色い皮を剥けば、ほーら 真っ白な中身がこんにちは〜」

「うおー!!旨そう!欲しい欲しい!!」

「じゃあもう少しお酒は我慢してくれるかい?」

「ぐぅ・・・お、おう、少しだけ我慢する!」

「おっけー、それじゃハイどうぞ」

「うひょー!」


僕が剥いた一本を受け取って、即座にぶりつくクマジャナイ。


「うは〜甘くてマッタリしてて、うめー!!」

「うんうん、美味しいよね」


僕が描きあげたのは、ハイランド産のバナナだ。

母さんの好物で、大概いつも家にあった。

高い所で育ったバナナは発育が遅い代わりに旨味たっぷりに育つらしい。

美味しいから僕も時々食べていた。


残りの房もクマジャナイに渡し、お絵描きセットを押入れ鞄に仕舞ってから、植木鉢の影から出る。


「それじゃ話しを聞きに行くよ〜」

「おう!」


僕達は区切られたカウンターの端っこ、誰も並んでない13番ブースへと向かった。

これからドミニクちゃんに、冒険者のあれやこれやを教えてもらうのだ。

足取りも自然と軽やかになると言うものである。


でも、そんな淡い幸せをぶっ壊すかの如く、たどり着いたそこには。


オッサンが座っていた。


しかも普通のオッサンではない。

スキンヘッドにでっかい十字傷のある、茶色い革の眼帯で片目を覆った凶悪そうなオッサンなのだ。

・・・・えーと。


「ようこそ、いらっしゃいませ」


十字傷スキンヘッドのおっさんは、意外と小綺麗でちんとした格好をしており、その服装が似合う言葉遣いで話しかけてきた。

しっかりと笑顔だ。

でも、その顔はまるで獲物を前にした山賊である。


「あ、はぁ・・・どうも・・・」


僕はもう一度、区切りの壁に書かれている数字を確認した。うん、やはり13番ブースで間違い無い。

訳が分からなくなってる僕に、十字傷スキンヘッドのおっさんが、また語りかけてきた。


「あのですね、構いませんでしょうか?」

「は、はい何ですか?」

「階段の所でランバリオンさんと会話されておりましたよね?勝手に聴いてしまい失礼だとは存じますが・・・先程されていた会話の内容を考えるにですね。あなたランバリオンさんに、からかわれておりますよ」

「え?それってどういう・・・」


十字傷スキンヘッドは、何だか少し申し訳無さそうな表情で続ける。


「私が新人担当のドミニクです」


・・・

・・・・

・・・・・なるほど。


・・・

・・・・・

あんのぉゴリラ顔おおおおおぉぉぉぉぉ!?

またやりやがったなっ!!

くっそー!くっそーーう!!

帰って来たらパンチしてや・・・

・・・いや、多分こっちの拳が砕けるだろうから、なんかこう、良い感じにやり返してやるぅ!!


ふつふつと怒れる僕に対して、ドミニクさんが頭を下げた。


「なにかこう、申し訳ありません・・・」

「いえ!ドミニクさんは決して悪くないです!!」


本当に、本当に悪いのはあのゴリラ顔なんです!


頭を上げると、ドミニクさんはクマジャナイの方に目をむけた。


「あと、申し訳無いついでなのですが、二階は食事禁止となっております」

「え、あ、はい、そうだったんですか!クマジャナイここで食べちゃ駄目なんだって・・・」


後ろを振り向くと、バナナを取られまいと皮ごと全部口の中に入り込み、頬袋がパンパンになったクマジャナイが、あさっての方向に目線を向けていた。


「・・・なんかすみません」

「いえ、次からお気を付け頂けたら問題ございませんので」


そういって笑顔になるドミニクさんは、ちょっぴり良い山賊に見えた。











ご覧いただき有難うございます。


X(旧ツイッター)とか初めてみたんですけど、昔から持ってるアカウントは放置のかぎりを尽くしておりまして。新アカウントを作って久々に開いたら、全く使い方が分からなくなっていました。

なにこれ変わり過ぎぃ!

パソコンを前に、テーブルマナーに戸惑う初フレンチディナーに来た人みたいになってしまいましたよ。


投稿日2024日3月16日

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