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15,引っこ抜けモヒカンヘッド!止めろゴリラなバナナ




唐突に、よく通る太い声が響いた。

人混をかき分けて入ってきたのは、両刃の斧を背負ったゴリマッチョだ。

ゴリラ世界ならイケメンであろう、この顔には見覚えがある、カイゼルさんの馬車を護衛してた人だよね確か。


「その辺でやめときな美人の嬢ちゃん、それ以上は面倒臭いことになる」

「なんだオマエ?誰だ?」

「おうおう、美人さんに忘れられてるとは悲しいぜ・・・んー、ちと待て・・・ホレ」


イケメンゴリラ顔が、ぱっと開いた片手を持ち上げ、クルリと回すと、そこには1本の串焼きが握られていた。

あれは!悪魔の食べ物、火炙り肉串!?

目にした瞬間、なんかお腹の当たりが、きゅーっと締め付けられる感じがした。

というか何で急に手品をしたんだよ、妙に上手いし。


「おお!そりゃ、歯ごたえがあって旨い肉!!・・・分かったぞお前、肉をくれたゴリラ顔のバナナだなっ?」


・・・・!?

おい、やめろクマジャナイ!


「ゴリラ顔?・・・バナナ?何だそれは??」

「知らねぇ、ヨシがそう言ってたんだ」


二人の視線が僕に集まる。

確かに言った。

昨日の夜、腹痛の痛みにもだえ苦しみながら、様々なものを呪っていた時にだ。

あのゴリラ顔のバナナがくれた肉のせいだ〜って、間違いなく愚痴った覚えがある。


でも本人の前で言うなよっ!?


ど、どうしようコレ、説明とかいる感じ?

ただの悪口なのに・・・

・・・くそう、人を呪わば穴2つって本当だったのか!?


「え、えっと・・・僕の故郷に、強くて筋肉モリモリで優しい、森の賢者って呼ばれる動物がいてですね。

 なんだか似てるな〜と、それで、好物がバナナって果物なんです・・・」


僕の説明を聞いて、目を丸くするゴリラ顔のバナナさん。

我ながら、素晴らしい説明ができたと思う。

うんこを投げる習性があるとか、そういった誰も幸せにならない情報は伝えなくても良いのだ。


「何だよその動物は、極上過ぎねえかい??・・・まあ、一応ではあるが褒められたってことに、しといてやる。なあ坊主?」


そう言って、ニヤリと笑う。

やはりその笑顔はゴリッとイケメンだが・・・

うひー!何か含みがあるよ、勘が鋭いぞこのゴリラ顔ってば。


「なあなあヨシ!バナナって旨えのか?」

「え、ああうん。凄く美味しいよ」

「へーっ!食べてみてぇぞ!!」

「良いけど・・・あ、そうだ!その手に持ってる頭を引っこ抜くの止めてくれたら、後から食べさせてあげるよバナナ!!甘くてクリーミーだよ〜!?」

「そうなのか!?おう、食いたい食いたい!こんなのいらねえや!!」


そう言って、持っていたモヒカン頭を気軽にポイっと放り出す。

ヒャッハーな人はドチャリと音をたてて、石畳にぽてくり落ちた。


「引っこ抜くのは止めたのかい嬢ちゃん?」

「おう、バナナ食いてぇしな!」

「そうだな、確かに俺も食ってみたいぜ、なんせ俺の好物らしいからな」


そう言ってチラリと僕を見てくる。


「はい!また後から、お渡し致します!!」

「そうかい、そいつぁ有難よ・・・ちなみに俺の名前はバナナじゃなくてハバナな。ハバナ・ランバリオンってんだ」

「ハバナさんですね、僕はヨシ、角野 良ですよろしくお願いします」

「ごっはっは、礼儀正しいなヨシ坊は。よろしくな」

「・・・・・」


ハバナさんは、僕の自己紹介に口の方端をニッっと上げてから、クマジャナイの方に向き直った。

おい、誰が坊だ!!と強く言いたい・・・言えないけども。


「んで、美人の嬢ちゃんはなんて名前なんだい?」


そう言われても、クマジャナイは無反応だ。

僕はこっそりと耳打ちした。


「・・・ほら、自己紹介だって」

「んアタシか?・・・そうか、名乗れる名前があったんだった。へっへーアタシはな〜」


クマジャナイは満面の笑みで答えた。


「クマジャナイって言うんだぜ。よろしくなバナナ!」


おいやめろ、蒸し返すな。


「バナナじゃなくてハバナだって言ってるだろーに。・・・まあいいさ、よろしくなクマジャナイの嬢ちゃん

 ほら、お近づきの印にコレやるよ」


肩をすくめながらも、挨拶を返してからハバナさんは、持っていた火炙り肉串をクマジャナイに差し出す。


「おお、マジで?サンキュー!おまえ良いやつだなバナナ!!」


クマジャナイは火炙り肉串を受け取って、早速かぶりつく。

ハバナさんはもう一度肩をすくめて苦笑しながら、目線を地面に落ちているヒャッハーな人に向けた。


「それで、だ。コイツの身柄を俺に任せちゃくれんか?悪いようにはせんからよ」


まあ、僕ではどうしようもないし、クマジャナイだと引っこ抜くだけだろう。

任せろと言われたら、どうぞどうぞと言うしか無い。


「ええと、お願いします・・・でもどうするんですか?」


顔面陥没したヒャッハーな人をどうするのか凄く気になる。


「このアホはうちのギルド所属だからな、同じ組員としては連れてかなきゃなんねえ。

 まあ一般人に手を出しやがったから、生きてりゃ何らかの罰則が下るうだろうぜ。

 コイツから手を出したってことも、俺が証言しといてやるからヨシ坊達はお咎め無しだ」


・・・なるほど、ギルド所属だと色々あるんだな。


ーーん?ギルド!?


「あ、あの。ハバナさん、ギルドって何のギルドですか?」

「ん?ああ、冒険者ギルドだ。知っているか?」

「ーー冒険者ギルドですかっ!?」


ふおおおおおおお!?

きたきたきたーっ!!


ファンタジー異世界に無くてはならない組織ナンバー1の冒険者キルドだっ!!

数多のファンタジー小説、特に中世ヨーロッパ系なら、100%の確率であると言われる冒険者ギルドっ!!

やはりこの世界にもあったか!嬉しいっ!!


「おい・・・いきなり興奮しだすなよ。ビックリするわ」


・・・っは!?

しまった、我を忘れていた!


「い、いえ何でもないです。冒険者ギルドですか〜なるほど、へー!」

「証言の為に一緒に来てもらうけど構わんか・・・」

「ーー是非にっ!!」

「・・・全身全霊で興味津々だなオイ。まあ、手間が省けて、こっちとしては有難いんだが」


やったー!冒険者ギルドに連れてってくれるらしいぞ!!

フーゥ!願っても無いさ!!


「ん?なんだ、どっか楽しい所に行くのか?」


火炙り肉串を食べ終わったクマジャナイが不思議そうに聞いてきた。


「ああクマジャナイ、冒険者ギルドだよ!!」

「それは何する所なんだ?」

「えーと・・・うん、冒険とか?」


いや、よく考えたら、この世界の冒険者ギルドのことなんて全く知らない。

なんて答えて良いか困ってる僕を見て、ハバナさんが変わりに口を開いた。


「ごはは!そうだな、冒険とかで間違いない。あとクマジャナイの嬢ちゃんに朗報だ、飯食うところもあるぞ。量だけは凄えから期待してな!」

「おっ!マジで!?いいな、行く行く!なあヨシ早く行こうぜ!!」


ハバナさんの巧みな話術?によりクマジャナイも冒険者ギルドに行く気満々だ。

そうかー、ご飯食べる所もあるタイプかー。

昼間っから、お酒飲んでる冒険者とか見られるのかな?実に楽しみである。


「それじゃあよ、案内するから付いて来な!・・・よっと」


軽い掛け声と共に、ヒャッハーな人をヒョイっと肩に掛けて持ち上げる。

細身とは言え結構な高身長の男なのに、まるで重さを感じさせない。

とんでもない力だね!流石は冒険者!!


「何が食えるのかなー、楽しみだなヨシ!」

「お酒に合う食べ物じゃないかな?そんな気がする」

「はーん、酒もあんのかぁ」

「いや予想だからね、あくまでも」

「でもよーあるといいなぁ酒も」

「お酒好きなの?」

「いんや、飲んだことねーんだよ。ヨシはどーなんだ?」

「僕も全く無いよ、未成年だしね」

「そうか、ヨシはまだ小せーもんな」

「な、なんだよーこれからだよ、どんどん男らしく筋肉だってモリモリっと成長するんだからさ!」

「そうだな、でも筋肉モリモリは駄目だぞ似合わないからな」

「・・・似合うと思うけどなあ」

「いやだ!」

「うわ、なんで持ち上げるんだよ!うっぷ・・・やめろってば!顔が埋まって・・・息が出来ないって!!」

「オメーら・・・イチャつくのは二人切りの時にしてくれや・・・」

「い、いちゃ!?」


イチャついてなんか無いやい!!

勘違いも大概にして欲しいものである。

火炙り肉串の件といい、おちょくって来るばっかりして!本当にもう許さないぞ!?


・・・ああでも、今から冒険者ギルド連れてってくれるんだった。

うーん・・・


ーーよし、今回は許しちゃうっ!!


野次馬の輪を割って歩くハバナさんの後ろを、僕達は足早に付いていく。








ご覧いただき有難うございます。


昨日は1話の大幅変更と、2〜10話までの細かな修正を投稿しました。

大筋は変えていませんけど、かなり読みやすくはなったと思います。

気が向いた方は一読ありますよう願います(^^)


投稿日2024年3月15日

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