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12,街だ!人だ!串焼きだ!




「うわ〜!中世ヨーロッパだぁ〜〜〜!!」


カタン、コトンと音を立てて石畳の上を行く馬車、その御者台で僕は目を見開いて声を上げた。


柔らかい陽の光が降りそそぐ午後、沢山の人たちが生み出す喧騒の中を、カイゼルさんの操る馬車で進んでいる。

見渡す町並みにはオレンジの屋根で、白い壁の家々が建ち並んでいた。


どの家も5階建てぐらいあってかなり大きい、マンションみたいな感じなのかな?

窓にはガラスがハマっており、太陽を照り返しきらめいていて、所々植木鉢に花が咲いてた。


道の真ん中に流れる幅の広い川では、三日月みたいな形の大小様々な船を、棒を持って立った人が巧みに操作して、荷物や人を乗せ行き交っている。

川の両端に連なる石畳の道は、馬車が何台も同時にすれ違えるほど広い。


端には露天が数え切れないほど出ていた。

美味しそうな匂いが、あっちこっちから漂ってきているよ。


この街に広がる風景は、岩センの授業で聞いた、1000年以上続く過酷な中世ヨーロッパではない。

サチねーちゃんが大量に持っている、ファンタジー小説に出てくる中世ヨーロッパのそれだった。


「おお!なんか色々といい匂いするなぁ!腹減がるぜ!」

「確かに!何だろね?あ!あの店も何か美味しそうな食べ物売ってる!」


特に香ばしい匂いを漂わせる店を発見して、何を売る店だろうと思い身を乗り出した瞬間に、ガタンという音を立てて、馬車が大きめに揺れる。


「おわあああっ!?」


僕の全身を浮遊感が包んだ。


「ぬお!?ヨシさん!」

「おっと」


クマジャナイに首根っこを掴まれ、体が御者台から半分飛び出した状態で止まっていた。

もし掴んでくれなかったら、クリスティアーヌの筋肉隆々なお尻へとダイブしていただろう。

僕の体は、そのままヒョイと馬車の座席へと引き戻される。


「あ、有難うクマジャナイ」

「おう、良いってことよ!」

「危なかったですなヨシさん、気をつけて下さい」

「・・・はい、すみません」


危うく中世ヨーロッパの旅が、馬に蹴られ馬車に轢かれて、人生ごと終わる所だった。

ううう、超恥ずかしいんだけど。

完全にハシャぎすぎだよね僕ってば・・・。

そう思い、縮こまっていると、カイゼルさんは言った。


「はっはっは!いえいえ、これだけ喜んで頂けると、城郭都市へとお連れしたかいが在るというものですな」


そう、僕達はついに壁の内側にやって来ていた。

あれだけ入ってみたいと思っていた場所に入れたのだ。

しかも、そこは想像など遥かに越える、素敵な町並みが広がっていたのである。


うん、やっぱりハシャぐのは仕方ないと思うね。

だってすんごいワクワクするもん。


「有難うございますカイゼルさん!おかげで楽しいです!」

「それは良かったですな!・・・あ、少々失礼」


カイゼルさんは、馬車の横を歩く護衛の人に話しかけた。

行商の馬車を護衛する内の1人であるゴリラ似な人である。


「ハバナさん、小腹が減ったので、あちらの露天で買い物してきて頂けませんかな?」


そう言って、僕が興味深々になり危うく馬車から落ちかけた店を指さした。


「んん?おお、あの串焼き屋ですかい」

「ええ、そうです。人数分お願いしますな。はい、こちら代金です」

「ごっはっは、ごっつぁんですぜ旦那!」


ハバナさんと呼ばれた護衛の人は、野太い笑みを浮かべて小走りで駆け出した。

なんかバナナみたいな名前で、見た目と非常に合ってると思う。


「少々お待ち頂きたいんですなヨシさん」

「ええ!良いんですか?」

「勿論ですとも」

「有難うございます!」


うおーカイゼルさん素敵!

串焼き屋だったのか、楽しみだなあ!


「そういえばですが。先程言っておられた、ちゅーせいよーろっぱ、とはどういった意味でしょうかな?」

「え、あ・・・えーと。僕の地元では、異なる世界って意味なんです」

「ほう、なるほどなるほど。興味深いですなー」

「そうですか・・・・あははは・・・」


大まかには間違って無いだろう・・・きっと、多分。


「おいヨシ、アイツが何か旨そうなもん持ってきたぞ?」

「お、ほんとだ!」


ハバナさんは両手に串焼きを沢山持って、馬車へと追いついてきた。


「へい旦那、お待ちですぜ」

「有難うございますなハバナさん、ヨシさん達にもお渡し下さい」

「おうよ、ほれボーズ」

「買ってきてくれて有難うございます!」

「ほれ、美人の譲ちゃんも」

「おん?くれんのか!オマエ良いやつだな!」


受け取るやいなや、クマジャナイは串焼きにかぶり付く。


串焼きは結構大きく、薄めに切られて焼かれたお肉が3枚刺さっている。

タレがしっかりと塗られていて、少し焦げた匂いが何とも食欲を刺激してきた。


「うめえぞ!なんか歯ごたえが良い!!」


1口で1枚頬張るクマジャナイが喜びの声を上げた。

よし、僕も食べよっと。


おお、確かに歯ごたえが凄い!

僕の口では、噛み切れるギリギリといった感じだ。

飲み込むためには、何度も噛み続ける必要がある。

でも、濃いタレと肉の味が、口の中でしっかりと混ざって逆にそれが良いかもしれない。


「うん、確かに美味しい!」

「おお、それは良かった。わたくしも好きですから、気に入って頂けて嬉しいですな」

「そうだぜボーズ、やっぱりこの街に来たら名物の、この火炙り肉串を食わなきゃな!」

「火炙り肉串?なんか変わった名前ですね」

「ごははっ!そう思うよな!実はこの串はなあ」


話し始めたハバナさんを見て、カイゼルさんが苦笑いをしてるんだけど、何だ一体?


「この城郭都市には秘宝ってのがあるんだが、それを盗もうとした奴は、串刺しにされて火炙りの刑にされるんだ」


・・・ええ何その話し。


「それをイメージして作られたのがこの、火炙り肉串だな。ちなみに今でも、時々処刑されて晒されてるぞ」


オエーッ!!なんてこと聞かせてくれる!?

おい、このゴリラ顔!何ニヤニヤ笑ってるんだ!!


「ま、まあ、わたくしも初めて聞いた時は驚きましたが、味は良いですしな・・・

 ほら、肉も決して悪いものではなく、この辺りで良く食卓にのぼるファービットと呼ばれるネズミなんですよ」


フォローしようと言う気持ちを感じるけど、フォローになってないー!!

これネズミの肉なの!?


「おん?どーしたんだヨシ、食わねーのか?ならくれよ!」


串焼きを見ながら、悶々と考えていた僕に、横からクマジャナイが手を出して欲しそうにしてくる。

正直な話し、救いの手に見えた。

・・・しかし、奢ってもらっといて、そんな訳にもいかないだろう。


「ごめんなクマジャナイあげないよ・・・あ、あーおいしいなぁ・・・」


僕は、半泣きになりながら、串をまたかじり始めた。


「ちぇ、んだよー」

「・・・よ、ヨシさん、何だか申し訳有りませんな・・・・」

「何を言うんですかカイゼルさん!美味しいですよ!」

「そう言って頂けると幸いです・・・」

「旨いだろう坊主!ごっはっはっはっは!!」


そう、味はいいんだよ味は・・・ね。

というかゴリラ顔、お前許さんからな!!



僕達を乗せた馬車は、石畳をカタン、コトンと音を立てて進み続けていった。





・・・

・・・・・


あれからクマジャナイが飽きてモゾモゾし始めるくらいには馬車に揺られた。

カイゼルさんがもう少しだと言うので、僕は食べ物の絵を描いて実体化はさせず、どんな味がするかクマジャナイに語って聞かせたりと、何とか間をもたせる。

まあ何故か、カイゼルさんもクマジャナイに負けない程、話に興味津々だったんだけどさ。


それから本当にもう少しだけたって、目的地に到着したようだ。


「はい、到着致しました。コチラがわたくしの店ですな」


カイゼルさんがそう言って、馬車を停めた場所の横には、


「おおーでっかい!!」


予想以上に大きなお店があった。

マンションのようなお家の5軒分ぐらいはあるかな?

買い物客が馬車を置くスペースなども合わせると、複合的なスーパーマーケットほどの広さがある。

建物の中央には、髭のマークが目印の看板が、デカデカと出されており何とも印象的だね。


「昨年この街に初オープンさせました、わたくし自慢の店ですな。どうです、中々のものでしょう?」

「はい、驚きました!すっごいです!!」

「はっはっは!有難うございますな」


これは正直、本当に凄いと思う。

だって、石造りなのも相まって、もうちょっとした城に見えるのだ。

もしかしてカイゼルさんって大金持ち!?


「では参りましょうかな」


そう言って、カイゼルさんは裏口へと馬車を移動させ始めたのだった。





◇◇◇




・・・

・・・・・

僕の前には、控えめな高さの金貨タワーが何本も立っていた。

机に置かれたトレーの上に、あ11本と少しである。


「それでは、占めて金貨225枚になりますな、お確かめください」

「・・・おおぅ」


あれから立派な応接間に通されて、ふかふかな椅子へと座り、品物を見せた。

全ての品に対してカイゼルさんは、改めて良いリアクションをしてくれている。

それはいい、それはいいのだが・・・


金貨ってあれだよね、金で出来てるんだよね、ということはお高いんでしょう?

ーーなんでこんなに積まれてるの!?


「かさばらないように、小金貨で用意いたしました。内訳は、さほどお話した通りとなります。羊皮紙に記入して後ほど別途お渡し致しますな。」

「・・・は、はあ・・・」


中古販売の店で、ゲームの買い取りぐらいしか物を売った経験のない僕には、なんだか現実味が無い。

だって、いきなり金貨とか言われても・・・ねえ?


「ヨシさん、いかがなされました?」

「あ、あのー。金貨って使ったことなくて・・・コレ一枚で何が買えるものなんですか?」


僕はおそるおそる金貨を指さして、カイゼルさんに聞いてみた。


「・・・そうですな」


カイゼルさんは、自慢の髭を指で摘み撫でながら、ほんの少しだけ思案して答える。


「この辺りの物価ですと大体、質の良い雌仔牛、羊、山羊どれも大体1頭買えますな、鶏でしたら30羽、卵は400個

 エールですと20ガロン(約80リットル)、先程お召し上がりになった串焼きだと333本といったところでしょうか」


な、なるほど・・・ってことは、この金貨タワーは山羊225頭と同等の価値と言うことか!


ーーよくわかんないよっ!?


・・・いやまあ、やっぱり結構なお値段っぽいというのは、理解出来たから良しとしようか。


「ふむ、宜しければ、簡単に表記した物ではございますが、この辺りの物価に合わせた値段表も、おつけ致しましょうかな?」

「有難うございます!助かります!」

「いえ、なんのなんの」


僕は、人生初の金貨を手にとってみた。

1枚1枚は結構薄く、1円玉よりちょっと大きいかな?という程しかないのに、100円玉ぐらいの重さを感じる。

思ったよりも輝いてはいないものなんだな。

これなら磨いた5円玉の方が、よっぽどキラキラしている。

でも鈍い輝きは、重厚感を感じさせるね。

僕は金貨の枚数を数えていく。


「・・・はい確かに、225枚あります」

「それでは、お納め下さいませ。ああ、良ければ、こちらをお使いください」


そう言って、皮の小袋を手渡してくれた。

早速中に金貨を詰めてみたのだけど、傭兵とかが「報酬だ受け取れ」って言われて投げ渡される小袋みたいだな。

かなりずっしり来る。

もし不意に投げ渡されたら、僕なら落とすかもしれない。


「もし小金貨が使いにくいようでしたら、数枚ほど両替を致しましょうか?」

「いえ、問題ないです」


どうせ使えばお釣りをくれるだろうしね。

カイゼルさんは、僕の言葉に目を細めて笑いながら口を開いた。


「それでは、これにて買い取りを確定させて頂きます、大変良い品を買わせて頂き、有難うございますな!」


こちらに向かって頭を下げる。

ああ、やっぱり頭を下げる挨拶も在るんだ、と思いながら、僕も急いで頭を下げた。


「おお?やっと終わったのか、待ちくたびれたぜ!」


そう言ってクマジャナイが座ったまま伸びをする。


「よく言うよ、お茶菓子を食べてただけじゃないか」


カイゼルさんが気をきかせてくれて、山盛りのお茶菓子が用意されていた。

お二人でどうぞって感じだったのに全部食べられてしまっている。


「そういえば、ヨシさんはこの後のご予定などはありますかな?」

「いえ、特には・・・多分、街並みを見て回ると思います」

「そうですか、では宜しければ良心的な価格で、ご飯の美味しい宿などご紹介致しましょうかな?」

「ええ、良いんですか?ありがたいです!」

「お安い御用ですとも!では、お送りいたしましょう」


こうして僕達はカイゼルさんと共に、応接間を後にしたのだった。


・・・おおう、なんか凄いお金持ちになってしまったぞ。




・・・

・・・・・

裏口の玄関に出てあまり経たない内に、馬のいななきと共に馬車が止まった。

今度のは荷を運ぶための物ではなく、人が乗るための馬車である。

向かい合った座席のついた、1つの部屋みたいな作りの箱を引っ張る、普通の馬1頭立ての馬車だ。


「それでは、こちらをどうぞ。買い取りの証明及び内訳と、この街での簡易な値段表です。あとこちらも後ほどお読みください」


そう言って、カイゼルさんは羊皮紙の巻物を複数渡してくれた。

僕はお礼を言い受け取って、肩掛けカバンに羊皮紙を入れる。


「行き先は伝えてありますので、どうぞお乗りくださいませ」

「あ、はい。どうもありがとうございました」

「いえいえ、こちらこそでございますな。それでは、また何かございましたら、

 是非ともこのカイゼル商会のカイゼルへとご一報下さいませ」


馬車へと乗り込む僕達に、カイゼルさんは手を胸元に当て、深くお辞儀をする。

それは、僕達が馬車に乗り込んで、走り去るまでずっと続いていた。





・・・

・・・・


そんなに時間も掛からず馬車が止まったのは、1軒の建物の前だった。

多分ここが宿屋なのだろう。

大きさは、他の家とあまり変わらいのだけど、外観が少し違う。

立て看板が出ているのと、あとは何というのだろうか、古いのだけど品があるというか、拒絶感が無いというか

どうぞお入り下さいというのが伝わってくる、そんな見た目をしている。

もう夕方に差し掛かって、日が落ちてきたからだろうか?それとも建物の入口が大きいからだろうか?


僕達は礼を言って、馬車から降ろしてもらい、開け放たれた大きな扉をくぐって宿屋へと入っていった。

店内は、1階の入り口が食堂となっており、並べられた大小様々な長机には、今もまばらに人が座って食事をしている。

奥の厨房では、なにやら恰幅の良い男性が、カチャカチャと調理器具を鳴らしながら、せわしなく動いていた。


「はーいらっしゃーい!」


威勢のいい声で迎えてくれたのは、20代後半ほどのキッパリ、サッパリとした感じな女の人だ。

前掛けを付けて、食べた後のお皿を運んでいる。


「ちょーっとまってねー、すぐ行くからー!」


そう言って、遠くからニカっとわらって去っていった。

太めで凛々しい眉毛が、よく似合う笑い方である。


「なあヨシ!何か色々いい匂いがするぞここ!!」


クマジャナイの嗅覚が早くも、食堂のから流れ出る香りを嗅ぎつけたようだ。

言われてみれば確かに、厨房の方で何かを煮込んでる感じの匂いがする、気になるな。


「はい!お待たせだね!2名さんかい?」

「あ、はい」

「食事かい?それとも宿泊?」

「ええっと宿泊で、あとご飯も食べたいです」

「宿泊の食事つきだね!1泊1人、大銅貨6枚だ、良いかい?」

「お願いします」

「料金は前払いでお願いね」


お金袋から金貨1枚を取って渡すと、少し間を置いて苦笑しながら、奥へ引っ込んで行く。

どうしたのだろうと思っていると、すぐに戻って来た。

そして、僕の手に大量の硬貨を乗せた。

威勢のいい凛々しい眉の女の人は、またニカッと笑う。


「このあたりは、でっかい買い物以外じゃ、大銅貨以下のを使うのが主流さ。お釣りは全部崩しといたから使いな」

「ああ、そうだったんですか。ありがとうございます」


そうか、カイゼルさんが両替するか聞いてきくれたのは、こういう理由だったんだな。


「あいよ!それじゃあ新規の2名さんいらっしゃい!・・・ドンソン、お客さん案内してくるから、下お願いね!」


ドンソンと呼ばれた厨房の恰幅の良い男は、こっくりと頷いた。


「じゃあ、部屋に案内するから付いといで!」


僕もつられてこっくりと頷いた。

なんか妙に迫力があるというか、引っ張る力の強い人だなあ。



僕達が案内された部屋は3階だ。

内装はこじんまりとしていて、豪華では無いけど、清潔さを感じる。

簡素な机と椅子があり、外がよく見える大きな窓には木枠の扉が付いていた。

2つあるベッドには、真っ白なシーツがかかっている。


・・・うん?ちょっとまて。

なんでクマジャナイと同じ部屋なんだ?


「すみません。別々の部屋ってありますか?」

「あれ、そうかい?大丈夫、あるよソッチにするかい?」

「はいお願いし・・・」

「はぁん!?なんでだよ!一緒に決まってるだろ!!」


今まで食堂からの匂いに気をとられ、話しに全く興味を示さなかったクマジャナイが、急に大きな声をあげて抗議してきた。


「いや、クマジャナイ・・・ほら、その・・・色々駄目だって」

「おん?よく分からねーけど、離れてると夜添い寝できねーじゃん」

「添い寝する気なの!?」


流石にそれは駄目過ぎると思うんだ!

うさ耳美人クマジャナイの添い寝だなんて、もう色々とすっごく嬉れしい・・・

・・・じゃなくて、寝付くことが出来ないだろう。


「おん!当たり前だろ!」

「流石にその見た目じゃ無理だって!!」

「そうか?ならすぐ元に戻って・・・」

「わー!まてまて!!やめろー!」


とんでもない事を言い始めたクマジャナイを止めていると、


「くく、あっはっはっ」


なんか笑われてしまった。


「何だい、面白いねお客さん達!部屋ぐらい、いつだって変えるからさ!まあ、差額分はしっかりと貰うけどね」


そう言って、また威勢よく笑った。


「私はロゼッタって言うんだ、下にいるから決まったら声掛けなね」


ロゼッタさんは、そう言うと颯爽と部屋を出て下の階に行ってしまった。


「・・・ほ、ほら笑われちゃったじゃないか」

「そんなこたぁどうでもいい、添い寝するからな絶対に!」

「いや、でもさ・・・・・・・・・・ウッ?」


クマジャナイと言い合いしていた僕のお腹に、急激な便意がやってきた。


「ちょっとタンマ!・・・部屋にトイレは・・・無い・・・悪いけど部屋で待っててクマジャナイ!!」

「お、おん?」


そう言って、僕は部屋を出て階段を駆け下りていった。





・・・

・・・・・


「ぐあ〜!!ぬおおお〜〜!!!」


僕はトイレから返って来てもなお、部屋でお腹を抑えながらのたうち回っていた。


「おいヨシ、大丈夫か!?変なもん食ったのか??」

「・・・へんなもん・・・あ!串焼き!!」

「おん?あれは別に腐ってなかったぞ?」


聞いたことがある、日本人は海外の屋台で買い食いしちゃ駄目だって。

現地の人には全く問題なくても、日本人の温室育ちな腹には、アウトな品質管理がなされているらしいんだ。


「ぐおおお〜こう言うことか〜!!ら、ラッパのマーク!ラッパのマークゥ〜〜!!」


紙を取り出して、こんな時の頼れる味方を描き出そうとした。

しかし・・・


「か、描けないッ!!」


冷や汗が吹き出し、目がかすみ、手が震えるのだ。

そしてなにより便意が激しい。

こんな状態で、気持ちをこめて絵を描けるハズがないだろう。


「うおおおあああ!!絶対に、もう絶対に屋台なんかで物を食べるもんかあああああ!!!」


クマジャナイに背中を擦られながらも。

そう言って僕はベッドの上でもだえ続けた。








読んで頂きありがとうございます。


火炙り肉串じゃないんですけど、僕は鳥の炭火焼きが大好物です。

大好きで毎日食べたいんですが、高いんですよね。

ときど~きしか食べられません。

諦めきれず、自分で作ってやる!って思い、炭を買いました。

・・・あれから1年。

未開封の炭って寿命はどの位なんですかね?


投稿日2024年3月11日

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