第39話
節分の日に恵方巻きを食べる、その年の縁起が良いとされる方角に向かって。
その昔はきちんと食べる方角が守られていたそうだが、その当時の国鉄が集客目的で「こっちだよ!」「いやいやこっちだよ!」と嘘を吐いたことから、その方角も関係がなくなり今となっては恵方巻きの文化だけが残った。
「何でそんな嘘を吐いたのよ」
輪切りにされた恵方巻きを食べながら、姉が俺にそう訊ねてきた。
「縁起が良い方角って毎年変わるみたいで、その方角にある神社に初詣がするのが良かったんだってさ、それを当時の国鉄が利用したんだよ」
「なるほどね」
今日は節分の日である、鬼を払って福を呼ぶ、そんな日に俺たちは恵方巻きをはむはむしていた。とくに理由は無い、「そういえば最近恵方巻き食べてないね」と姉の一言でただ買ってきただけである。
ついでに豆も買ってきた、「もう機嫌が悪くなりませんよ〜に〜」と言いながら姉に豆をぶつけると、「悪かったって…」と急にしゅんとされたもんだから大いに焦った。
まあ、しゅんとしたのはほんの一瞬で俺が背中を向けた途端に反転攻勢、服の中に余っていた豆をぶちまけられて「福はうち〜〜〜!!」と背中を平手打ちされてしまった。やはり我が姉、いっ時も反撃する牙を休めない。
今日は節分の日である、鬼を払って福を呼ぶ、そして今日は小さな福も来る日だった。
*
院試の結果は合格、今年の春から私は晴れて院生になる。そして、念願の一人暮らしも始まる。
今日はつぐもさんのお家に寄って、それからお目当ての物件を探しに行く日である。今日まで何度も賃貸情報を確認し、大体の目星は付けてきた、後は現地で確認をして本決めをするだけである。
「──ふふっ」
駅からつぐもさんの家へ向かう道すがら、これから先の事を考え頬が緩んでしまった。自分の願いがいっぺんに二つも叶ったんだ、嬉しくないはずがなく、頬も緊張の糸が緩んで今朝からニヤケっぱなしだ。
青い春!なんか色んなしがらみから解き放たれ心もふわふわと──していたと思っていたのに!
「…何をやっているんですか?」
「ふぉ?」
「んへ?」
インターホンを鳴らしても出てくれなかったので、まあいいかと踏み込んだ先で...
この二人!恵方巻きをポッキーゲームよろしく端から食べているではありませんか!恋人ですか?!
「──ああ、日和」
「勝手に入ったら駄目じゃない、いくら仲良しだからって礼儀は守らないと」
「インターホン鳴らしましたよ!──え、ほんと何やってるんですか?いくら仲良しだからってそんな事します?」
「違うわよ、こいつの方からふっかけてきたのよ、私じゃないわ」
「良く言うわ。あんた、その歳にもなってポッキーゲームもした事ないの?って煽ってきたんでしょうが」
(ええ…全然照れてる様子がない…)
アウトオブ眼中ですか私。二人が私をそっちのけにして話し始めてしまった。
「──ちょっと!私の身長が低いから目に入らないってことですか!無視しないでください!」
「あれ、もしかして日和酔ってる?」
「あんたじゃあるまいに、用事がある日の朝から呑んだりしないでしょ」
「いや俺も呑んだことねえわ」
「そうだった?あんたって酒の事しか考えてないでしょ」
「いやそれはあってるけどさすがに呑んだことないよ」
「やっぱりそうなんじゃんか」
(え〜私ってば本当に空気なの…?)
まるで夫婦のような...いや言い過ぎかな、恋人のような距離感で話しをする二人、私はアウトオブ眼中ですか?
私は手刀を斬りながら、二人の間に無理やり割って入った。
「はい!もうラブラブな感じは終わりで!今日は私に付き合ってもらいますから!」
「分かってるって」
「はいはい、あんたも随分と騒がしくなったわね」
「誰のせいだと思ってるんですか!」
私がそう文句を言うと、つぐもさんもあかりさんもころころと笑った。
◇
何だかんだと私も恵方巻きを食べさせてもらい、腹拵えをした後に不動産屋へ向かった。
冬らしい薄い青空、きんとした寒さが私たちを包み込む。
「候補はどれくらい?」
(子供扱いでもしているのか)私の手を握っているあかりさんがそう訊ねてきた。
「全部で三つです、駅から近い所と大学から近い所、あとは自分の趣味で選んだ所」
「電車通勤は止めた方がいいよ〜」
(ラブラブ恵方巻きを食べたくせに)途中、コンビニで買った肉まんを頬張りながら、そうつぐもさんが言ってきた。
「電車止まったら洒落にならないもんね」
「それもあるけどね、ほんと電車の中ってカオスだから」
「どういう意味よ」
「色んな人が乗ってるって事」
「私は電車通学に憧れがありますね」
「え〜捨てな、そんな憧れ、一日で夢から覚めるよ」
「大人になったらつぐもさんみたいに冷めてしまうんですね」と言い返すと、優しく頭を叩かれた。
さて、そんなこんなでやって来た不動産は、私鉄の橋桁下に居を構えた小さな店舗だった。
担当してくれた人は少しキツい感じがする女性の方で、入店するなり「早速マンションへ行きましょう」と言った。着いて早々である。
最寄りの駐車場から営業車を取ってくるとその人が先に退店し、私はこそっとあかりさんに話しかけた。
「何だか忙しない人ですね…」
あかりさんはあっけからんと、
「別にいいんじゃない?仕事が早いのは好感が持てるわ」
「そ、そういうものですか…」
「無駄話されても相手するの面倒臭いし」
「姉ちゃん人見知りだもんね」
あかりさんが「余計な事言うな」と、つぐもさんの頭をまあまあな強さで叩いた。ここに来てまで見せつけるんですか〜?
まーた二人がイチャつき始め、やきもきしている間にやり手(?)社員の方が「お待たせしました」と店舗に戻って来た。
使い古された小さな軽自動車に乗り、早速一軒目のマンションへ向かった。
「一軒目はここですね、駅から徒歩圏内なので人気がある所です」
担当者の方が素早い手つきで車を停車させ、さっ!と車から降りた。何をするにしても早い人だ。
まずは一軒目、つぐもさんたちも利用している駅の近くにあるマンション。ち、ちくあさ?(築浅と書く、始めて見た)の物件で、汚れが無い白い壁が印象的な所だった。
つぐもさんもあかりさんも「ああ、こういうマンションって一度は憧れるよね〜」なんて言いながら眺めている。
無駄話を一切しない担当者の案内で空き部屋に入れてもらい、備え付けの家電や部屋の間取りについて、それこそマシンガンのように説明された。
「──以上です。何か質問はありますか?」
「え、あの…」こっちは都市ガスとプロパンガスの違いすら咀嚼できていないのに、質問なんかできるはずがない。質問の代わりに「もう少し見ていいですか」と訊ねた。
「構いません」
間取りは1LDK、私の家のリビングより一回り小さいぐらいの広さだ。
矯めつ眇めつしてみれど、何処を見たら良いのかさっぱりなので早速二人へヘルプを出した。
「え?何処を見たらいいかって?そんなもの傷に決まってるじゃない」
「え、傷ですか?」
「そうよ、前の住人が残した傷は入居前にきっちりと報告しておかないと、後々問題になるわよ。退去する時に百パーこっちのせいにされるからね」と話してくれたあかりさんの表情はとても苦々しい、過去に色々とあったようだ。そんな話を訊きたいんじゃない。
つぐもさんにも訊いてみた。
「ん?何処を見たらいいかって?そりゃお隣さんのベランダを見るべきだよ」
「え、ベランダですか?」
「そう、ベランダに私物があふれ返っているような部屋って何かと近隣トラブルが多いんだよ。ベランダが汚いのにそれを気にしない人って、自分が立てる音にも気を払わない人が多いからさ」だからそういう話じゃないの!そもそもお隣さんのベランダを覗き込むのは失礼でしょう?!
(人選間違えたかな〜私はもっと夢のある話をしたかったのに…)
抱えた不満が顔に出ていたのか、あかりさんがくすりと笑みを溢した。
「な〜に〜?そういう話がしたいんじゃないって?」
「え、はい。こういう家はこういう家具を置いた方が良いとか、もっと前向きな話がしたかったんですけど…」
「そういう話をする為にも、自分が住む家はきっちりと確認するの、妥協せずにね。嫌でしょ?いざ住み始めたら傷だらけ、隣人はうるさい、引越しってそう簡単にできるものじゃないし、自分がリラックスできる空間は最大限気を付けないと」
「そ、そうかもしれませんが…」
あかりさんが一言。
「自分の家がリラックスできないなんて…病むわよ」
「は、はい…」納得した訳ではないけど、その一言には異様な圧力があったのでとりあえず首肯しておいた。
この物件の感想は「まあ、こんなものかな」程度で深い感動はなかった。綺麗なのは良い事だけど、それ以上の感想は得られなかった。
お次は二軒目、車で少し走った所にある大学近くの物件だ。
幹線道路を走り抜け、住宅地に差しかかった時、担当者の方が口を開いた。
「前もって言いますと、次の物件は騒音トラブルが多い所です」
「え、そ、そうなんですか?」
担当者が運転席、私が助手席、イチャイチャ(怒)している姉弟が後部座席。その後部座席に座っていたあかりさんが担当者の話に食い付いた。
「珍しいですね、ご自分から仰られるだなんて」
「はあ。私も面倒事は嫌いなもので、問題になりそうな事は事前に通達するようにしているんですよ」
「どうして騒音トラブルが多いんですか?」
私の質問につぐもさんが答えた。
「学生が多いからですか?」
「はい、大学周辺の物件はその大学生が多く入居されますので、何かと騒がしくなりやすいんですよ」
「ああ、そういう事ですか…」なんか、あれだな、私は思っていた事を口にした。
「何というか…家を決めるのって大変なんですね、住む家の事も気にしないといけないし、周辺の事も気にしないといけないし」
三人が口を揃えて「そりゃそうでしょう」と言った。
「私はもっと夢があるものだと…初めての一人暮らしですし…ここへ来る時はるんるん気分だったんですけど、正直もうめんどくさいです」
「部屋選びに失敗したらそれをもう一度しないといけないの、それも実費でね、妥協するなって言った意味が分かったでしょ」
「そうですね」
「どうせならうるさい所も見学しておきなさい、勉強になるから」
「そうですね」
私の後ろに座っていたつぐもさんが「やる気なさすぎ〜」と頭を突いてきた。構ってもらえたのでちょっとは機嫌が良くなった、ちょっとだけだけど。
二軒目の物件は...まあ、担当者の方が言っていたようにとても賑やかな所だったので、部屋の確認はせずマンションのエントランスで引き返していた。担当者も「ですよね」と謎の同意を見せ、とくに気にした様子も見せず淡々と案内を続けてくれた。
三軒目の物件は私がフィーリングだけで決めたマンション、何となく良さそう、そんな感じである。
フィーリングオンリーで決めた物件は駅、大学からも離れた場所にあり、閑静な住宅地──ではなく、人で賑わう商店街の中にあった。
「買い物には困らなさそう」
「何せ商店街ですからね」
商店街の目抜通りから一本入った道の途中に築浅のマンションがあり、なんかそこだけ別世界のオーラを放っていた。
「他の建物は古いのに」
「あのマンションだけ綺麗ね」なんて話をしながらエントランスを潜り、最後の部屋を見学することになった。
「ロフト付きね〜誰でも一度は憧れるロフト」
そう、あかりさんが言った通り、ロフトがある物件だった。柔らかいフローリングにシステムキッチン、リビングの他にも部屋があり、ロフトはリビングにあった。
備え付けられた梯子を見るとちょっとワクワクする、「見てもいいですか?」と訊ねると秒で「もちろん」と返事があったので早速梯子に手をかけた。
いざ上らん!と足もかけるとつぐもさんが「下着見えるよ」と言ってきた。
「?!?!」
「いやスカート穿いてるんだから気を付けないと」
「だったら向こうを向いててくださいよ!」気を付けろとか言っておきながらまだガン見している、よし、足蹴りしてやろう。
「──あっぶな!」
「あんた、子供の下着を見たいってどういうことなの」
「なーーー?!言ってはならないことをっ!」
ついにあかりさんまで!冗談だと分かっていても許せない!
梯子にかけていた手を離してあかりさんへ突撃するも、「はいはい」と簡単にいなされてしまった。悔しい!
「皆さん、仲良しですね」
無駄話を一切しない担当者が、初めて仕事の事以外で口を開いた。
*
側から見たら仲良し姉妹に見える二人の微笑ましい(?)喧嘩も終わり、ゆっくりと部屋を見た後に日和が言った。
「あの、ずっと気になっていたんですけど…質問いいですか?」
「何ですか?」
姉から優しさを全抜きしたような担当者(つまり美人)が、キリっとした目付きで応えていた。
「今日回った物件って、一応人が住む所なんですよね?」
「?」
「?」
「?」
その質問には俺たち三人が首を捻った。何を言ってるんだ?
担当者も姉も俺も顔に出ていたのだろう、日和が少し慌てた様子でさらに言った。
「あ、いえ、私実家から出たことがなくてですね、一般的な広さが良く分かってなくて…ここって、猫ちゃんが住む所、ではないんですよね?」
「………」
「………」
「………」
忘れていたよ、日和ってお嬢様だったわ。クールに仕事をこなしていた担当者もさすがにショックが大きかったのか、帰る時はちょっとだけしょげていた。
店舗に戻ってきて担当者が一言。
「次は人間が住むお部屋を案内しますね」
「???」
(めっちゃ根に持ってる)
日和は担当者の言葉が皮肉と気付かず首を傾げるばかり、さすがに可哀想だと思ったので「ご丁寧にありがとうございました」と頭を下げてから店舗を後にした。
お昼を前にした時間帯である、寒いのは相変わらずだが日光のお陰でふんわりと暖かく、恵方巻きと肉まんを平らげたお腹の虫もまた騒ぎ出してきた。
店舗前に張り出されていた賃貸情報を眺めていた日和に声をかけた。
「これからご飯でも食べに行く?」
「──え?私ですか?」
「他に誰がいるの」
「え?あかりさんではなく?」
姉は面倒臭そうに「私はいいわ〜」と手を振った。
「うん、せっかくこっちまで来たんだし、このまま帰るのは勿体なくない?」
「え、え〜…そうですか」どことなく嫌そう。
「え、一緒にご飯食べるの嫌?もしくは予定あった?」
「え、はあ、まあ、別に」
首元に巻いたマフラーをいじりながら、変な角度に首を曲げてしどろもどろにそう答えた。あと頬も赤くなっている。
これはさすがに照れているだけだと分かったので、意地悪な質問をした。
「何が別になの?」
「いやだから、まあ、はい」
「行く?行かない?」
店舗の向かい側に立っている下町中華屋の方見ていた日和がちらりとこちらを見て、俺はきっとニヤニヤ笑っていたのだろう、途端にかっ!と襲いかかってきた。
「──笑ってるやないですか!──意地悪して〜!!」
「ごめんごめん」
「はいはいご馳走様、避妊はちゃんとするのよ」
「そんなことせえへんわ!」
「何か前にも聞いた記憶が…」
ぶっきらぼうに手を振りながら、我が姉が雑踏の中へ消えていった。
それから俺たちは当てもなくブラブラと街を歩いた。
少しは機嫌が直ったらしい日和が、(それはわざとなのか?素なのか?)下からこちらを覗き込むようにして言った。
「私はてっきりあかりさんとご飯するものと思っていましたよ」
「何で?」
「あんだけイチャイチャしておきながらよくもまあ…」
「いやいや、仲直り?はしたけど、さすがにそこまでベタベタせんよ」
「ふーんそうですか」
あざと可愛い仕草をしていた日和がまたぷいっと他所を向き、けれど俺から付かず離れずの距離を歩いている。
「どこの物件にするか決めた?」
駅近くの繁華街、人もビルも雑然とそこに在り、賑やかな話し声と足音に包まれている。日和はそれらの景色を見るともなく眺めながら答えた。
「いいえ、決めていませんよ。つぐもさん的には何処が一番良かったですか?」
「最初の所かな〜部屋も綺麗だし外の音も入ってこなかったから防音もばっちりだし、隣人さえ良ければ一番良い物件」
「そんなに隣人って大事なんですか?」
「話すと長くなるよ?」
「じゃあいいです」
そう言ってまたすぐにぷいっとそっぽを向いた。
ほんと、自分も成長したもんだと思う。少し前まではあんなにデートに怯えていたのに、今となってはこうして普通にできている。
相手が日和だからだろうか、それとも色んな人の関わりがあったからだろうか。不思議とこう...ムラムラっとしたものはないが、相手から感じる好意に戸惑うことなく、自分も素直に好意を伝えられている──と、思う。思いたい。
結構な距離を歩いても、日和からリクエストがこなかったので直接訊ねてみた。
「何か食べたい物はない?」
すっかり機嫌が直ったのか、とくに拗ねることなく「ん〜…」と首を傾げながら考え、「物より場所を選びたいです」と言ってきた。どういう意味?
「どういうこと?」
「あかりさんが住んでいたというマンションで家ご飯がしたいです」
◇
「それでこの家にやって来たというのかね君たちは、どんな神経してんの?」と、嫌そうにしながら出迎えてくれたのは妹のたまねだ。ほんとに嫌そう。
ちょうど休みだったのか、とんでもない組み合わせのルームウェアを着て、顔には白いパックを乗せたおばちゃんコーデの妹が嫌々ながらも家に上げてくれた。
「大丈夫です、たまねさんの分もありますから」
「そういう事じゃないんだけどね──デートの終わりに他所の女の所に来てご飯にする普通?」
「お前は俺の妹だよ、女じゃない」
「………………」
「──と、とりあえず中に入ろうか日和、ね?「何でちょっと焦ってるんですか?」
日和の質問を無視しながら、現在妹が使っている姉の元部屋に上がり込んだ。
「──なっつ、なんか懐かしいわ」
「そういやお兄ちゃんも一時期ここに住んでたもんね」
「え、そうなんですか?」
何かムカつく事があって姉の尻を叩いた洗面所を過ぎ、リビングの扉を開けると──
「──いやひどすぎじゃないこれ?!めっちゃ散らかってるやんけ!」
ゴミ屋敷ですかここは、感傷に浸る間もなくあまりの惨状に俺は怒鳴り声を上げた。
津島さんのお土産で溢れ返っていたキッチンの戸棚には何故だか女性物の下着が詰め込まれ、初めてお泊りをした時に野菜炒めを食べたテーブルの上には書類の束が置かれ、俺が寝床にしていたリビングの角は謎にぬいぐるみコーナーと化していた。
日和も「うわぁ…」と眉を顰めながら、けれど初めて見る光景に好奇心を抱いているような顔をしていた。
妹は全く悪びれた様子を見せずに「花嫁修行の反動」とだけ答えた。
「いやだからってこれは…」
「ご飯の後片付けはちゃんとしてるよ?「いやそういう問題でもねえわ「虫湧かなきゃ平気でしょ」
スーパーの袋を持ったままの日和が「たまねさん」と呼び、にっこり微笑みながらこう言った。
「茜さんに報告してもいいですか?」
「…………」
「私も手伝いますので一緒に掃除をしましょう」
「あ、あい…」
なんか弱味でも握られているのか、妹があっさりと観念して三人で大掃除をすることになった。いや俺もなの?
掃除をしながら妹が「やっぱ義理の妹には敵わんわ〜」と言った。
「義理の妹?」
「そうだけど。あれ、お母さんから聞いてないの?」
俺が「何を?」と訊ねると──
「お母さんと宮島父、入籍したってさ、だから日和ちゃんはもう私たちの家族なの」
※次回 2023/9/16 20:00 更新




