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第20話

「い、行ってきます」


「はい行ってら。避妊はちゃんとしなさいよ」


「……そんな余裕があるんならとっくに「いいからさっさと行け」


 秋が去り、そしてこれから来る冬を予感させるように冷たい朝、俺は姉の家を出て最寄駅に向かった。

 ついにやって来たこの日、日和さんと会うのである。

 事の発端は誰でもない、この俺である。メッセージのやり取りにも慣れて、向こうから入試対策の勉強もひと段落しましたと教えてもらったので、良ければ会いませんか?と誘ったのである、そう、自分から誘ったのである。

 自分から誘っておいてこのテンションである、太陽は空に昇り、覆っていた夜を払ったというのに俺の心はどんよりとしていた。

 緊張する。嘘ではない。今日まで重ねてきた失敗が鎌首をもたげ、暗い影を落としていた。

 駅に到着し、切符を買って改札口を潜ろうとしたが何故だか上手く入らずバーが閉まった。後に続いていた人にぺこぺこしながら改札口を抜けてホームへ下りる。

 日和さんと会う場所は、地元にある植物園だ、子供か!と自分でも突っ込んだが日和さんからも是非、という返事は貰っている。

 乗り込んだ電車が進み始めた、果たして俺はここに帰ってくる時どうなっているのだろう。



「こんにちは。宮島 日和です」


「こ、こんにちは。帰島つぐもです」


 子供?それが第一印象。

 日和さんは俺より身長が若干低い、それから顔はまん丸として目もぱっちり、黒い髪はマフラーに撒かれて襟がこんもりと膨れている。

 それから厚手のコートに下はロングスカートという、まあ、普通の格好だ。けれど何というか、全体的にシルエットがマッチしていてただただ"可愛い"感じがした。

 そう、可愛いのだ、あのダンディーなDNAを受け継いでいるとは思えない可愛いらしさがあった。

 日和さんは俺より早く植物園に到着しており、白くて小さな花をじっとして眺めていた。


「ま、待たせてしまってすみません」


「いいえ、私が早くに来ただけですから」


 声も声変わりしていない高校生を思わせる、あまり大学生には見えなかった。


(というか歳下なんだよな、俺よりどっしりしている…)


「良ければ一緒に回りますか?俺はそんなに花は詳しくないんですけど…」


「はい、是非」


 鼻を少しだけ赤くした日和さんがそう頷き、俺はおっかなびっくりとしながら隣りに並んで歩き始めた。

 

「さ、さっきは何の花を見ていたんですか?」


 真っ直ぐに伸びる植物園の通りを眺めていた日和さんがさっ!とこちらに向いたので、俺は思わずさっ!と前を向いてしまった。


「ヘレボルスという花です、この季節でも咲く花なんですよ。ご存知でしたか?」


「い、いえ、初めて聞きました、詳しいんですね」


「いえ、そんな事はありません」


「…………」


「…………」


 初めて会ったばかりだから仕方がない、けれど冬の冷たさが気になって気になってしょうがなかった。



✳︎



「…………………」


「いやあん時はほんと笑ったわ、旅行先でまさか母親が恋人作ってあげる宣言をするとは思わなかったから──澪、聞いてんの?」


「あかん、ほんま吐きそう…つぐも君に紹介された女がいるとか…」


「大丈夫大丈夫、あのヘタレは泣きながら帰ってくるから」


「その自信はなんなん…?──あーー!!」と澪が叫び始めた、この子叫び癖ついてない?

 弟を見送った私は時間を持て余していたので、近くに住んでいる澪の家にお邪魔していた。

 弟にマジよりの好意を寄せている澪は、別の女性とデートをしている事にショックを受けたらしい。


(良く言うわほんと)


 白と黒のモダンにまとめられたキッチンのシンクにはコーヒーカップが二つあった、勿論私が飲んだからではない。

 それから澪はキッチンで歯磨きをする習性があるようで、カウンターにはプラスチックのコップに歯ブラシが二本置かれていた、勿論私の物ではない。


「──最悪。はあ〜〜〜………」


 叫び足りたのか、澪がふうと大きく息を吐いて落ち着きを取り戻していた。


「あんたね〜あいつに本気だとか言っている割にはまだ男遊びが続いているんでしょ?それ何とかしなさいよ」


「何とかしたら何とかしてくれるの?」


「うっ…」


「しょうがないよ向こうから会いに来るんだもん。それなのにさ〜つぐも君だけは来てくれないんだよね〜何でだろうね〜ふっしぎだな〜」


 目の下にくまを作っている澪がジト目でこちらを睨んでくる、辞めた先輩に代わってこの子が仕事を多くこなしているので、きっと睡眠時間も削っているのだろう。

 私は弟が澪を敬遠している心当たりを沢山持っていたので、その目から視線を逃してしまった。聡い友人だ。


「どうせ〜?あかりが〜?私の悪口を吹き込んでるからなんだろうけどね〜」


「分かったわよ、手を出さないって約束をするならこっちに来させるわ」

 

「何その制限、何であかりがそれを決めるの?」


「あんた、弟が童貞よりの軟弱者だって分かっているわよね?」


「まあね。それで?」


「そんな奴にあんたがマジになって手を出して向こうが病んだら責任取れるの?あんたのその男癖はそう治らないだろうし、あんただってめんどくさかったらすぐに手を切るでしょ」


「つぐも君に限ってそんな──」


「私ですらあいつが鬱陶しくて仕方がない時があるのに?三六五日誰かを愛し続けるなんて無理、それにあんたは私より甲斐甲斐しく世話をするし優しいんだから、そのギャップで向こうの頭がおかしくなるのよ」


「………………」


「だから、一日だけなら弟と一緒にいていいわよ、邪魔はしない。そこであいつがあんたに惚れるようなら私は祝福する、ま、腹は立つだろうけどね」


「ふ〜ん………いいんだ?」


「あんたの言った通り、前に旅行へ行った時邪魔したことがあるからね、だからそのお詫びよ」


 聡い友人だ。


「ねえ、それってさあ、その紹介された女よりまだ私の方がいいってだけだよね?」


「当たり前じゃん。何?それに不満があるならこの話は無しにするけど「──ああいいです!それで結構です!」


 途端に元気を取り戻した澪がふん!と気合いを入れていた。


「よ〜しそうなったらまずは髪を綺麗にしてつぐも君が好きそうな服を買ってきて…ふふふ、いややっぱこういう事している時が一番楽しいな〜」


「良い事教えてあげる」


「なに?」


「あいつ、絶対上手い」


「は?──え、は?それってもしかして…」


 私は先日、手のマッサージを弟にしてもらった話をした、ちょっと恥ずかしいけど。


「手のマッサージをしてもらったんだけどね、力加減が絶妙で声がずっと出そうになってたの。あれ、きちんと教えてあげたら相当上手になるわ」


「………………」


 澪がごくりと生唾を飲み込んだ。

 こいつは男みたいな性欲を持っているな。



✳︎



(さ、寒気が…いや外にいるから当たり前か…)


 というかだよ、こんな寒い季節に外に連れ出すってどうよ?今さら自分のチョイスに自信を失くし、日和さんに大丈夫ですかと声をかけると、その一歩上を行く返答が返ってきた。


「中に入られますか?帰島さん、寒そうにされていますから」


(ああ!逆に気を遣われてしまった…情けね〜)


 植物園の見所はまだまだ沢山ある、先の通りには小さなプランターが所狭しと並べられ、この季節にも関わらず色取り取りの花が咲いていた。それなのに来た道を引き返す。


「あ、いいですか?思っていたよりも寒くて…」


「近くに湖がありますから、仕方ないですよ」


 この子本当に歳下なの?

 それから植物園内にある建物に入り、室内のガーデニングエリアに併設されているカフェテラスでコーヒーをしばくことになった。

 ついに来たこの瞬間、一対一のお茶会である。

 確か、人は真正面に座られると緊張する生き物らしいので、左右のどちらか、斜めに座るのが一番良いとネットで見たことがある。

 そして、その左右を見抜くには鞄の紐がかけられている肩の反対側とかだったはずだけど日和さんは可愛いらしいバックパック!判断できん!

 結局正面に座った。


(これで良い思い出は一つもない、緊張し過ぎて何を喋ればいいのか分からなくなってくるんだよな〜)


 ガーデニングエリアから一番近い席に座り、日和さんはそれらを見ながら防寒着を脱いでいる。

 マフラーに隠れていた髪は肩くらいの長さまであり、今は静電気のせいでぱちぱちと跳ねていた。

 コートを脱いだ下は、ピンクのニットセーターにシルバーのネックレスを付けていた、大人っぽい。

 注文を取りに来た店員さんにコーヒーをしばきますと伝え、そしてフリートークという、この世で一番難しい時間を迎えた。


「休日はいつもどうされているんですか?」


「休みの日は友達と買い物に出かけています」


 ウィンドウショッピング。ここから話を広げられる人っているの?


「そ、そうなんですね。大学はここから近いんですか?」


「はい、○○大学です」


 地元の大学だ、俺の友人も何人かそこへ通っていたはず。

 コーヒーが来るまでの間、一門一答の会話を続け、やって来たコーヒーにそそくさと口を逃した。

 


 それからの事は何も覚えちゃいない、話はしたと思うけどどれも上滑りしていたように思うし、日和さんも俺が黙りとしていた時はすぐ隣にある花々へ視線を向けていた。

 長いようで永遠のように思われたお茶会も終わり、なけなしの意地を見せて「もう少し見て回られますか?」と尋ねる、相手は「もう十分ですよ」と言い、俺と日和さんの初対戦(デート)が呆気なく終わった。

 もう...十分ですよって...花好きって言ってたのに...俺と回っても楽しくないからだろうか...

 惨敗だった。



✳︎



 澪の機嫌を取ってから早々に帰宅し、手洗いを済ませている間に続けて弟も帰ってきた。

 随分と早いご帰宅だ。

 洗面所から顔を出して「お帰り」と声をかけようと思ったけれど、あまりにあんまりな顔にぶふっと吹いてしまった。


「おっ、おかっ、えりっ、ど、どうだったっ…」


 スキニーパンツにピーコートという、どこぞの量産型のような服装をした弟は顔面蒼白、決して寒いだけではなかろう。

 死んだ顔つきをした弟が挨拶を返さず、「笑いたければ笑え」と言ってきたので遠慮なく笑ってやった。

 笑えと言ったくせに、洗面所の縁に手を置いて肩を震わせていた私のお尻をぱしん!と弟が叩いてきたではないか。まあまあ痛い。

 弟のプライベート空間は無い、私が洗面所を占領していると着替えられないので笑いながら寝室へ行き、着替え済ませた後またお尻を叩かれた。


「笑い過ぎじゃないですか〜〜〜?!」


「あんたが笑えって言ったんでしょっ」


「あ〜あ避妊する必要すらなかったよ…」


「まだ早かったみたいね〜……くくくっ」


 弟も着替えを済ませ、作り置きのカレーを火にかけていた、昼食すら取らなかったらしい。

 私は優雅な気持ちでキッチンテーブルの椅子に腰掛け、話を振ってやった。


「で、何がどう駄目だったの?」


「言いたくねえ」


「あんたね、女が目の前にいるのよ?訊きなさいよ一生成長できないわよ」


「確かに。今日は……」


 それから弟が遅い昼食を食べる終わるまで初デートの内容を聞いてあげた。 

 聞き終わった私の感想は、


(それの何が駄目なの?)


 こいつはあれか?自分自身に対する理想が高すぎるのではなかろうか。


「帰る時、向こうは何て言ってたの?」


「え?ああ…それではまた、みたいな感じだったと思うけど」


「また会いましょうって言ってくれているんでしょ?気にする必要ないわよ」


「ええ?それただの社交辞令でしょ?」


(駄目だこいつ)


「──まあいいわ、で、あんたは何が一番引っかかるの?」


「花が好きだって言ってたのに、俺が最後に回りましょうかって誘ったら断られたことかな〜」


「いやそれあんたの事を気遣ってでしょうが。相手に屋内へ行きますかって訊かれて実際に入ったんでしょ?そりゃ誰だってこいつは寒がりだって思うわよ」


「あ〜そういうやつなの?」


「あんたね〜卑屈になるのは勝手だけど相手の気遣いを斜めに捉えるのはどうなのよ、失礼にも程がある」


「うぐっ…それは確かに…」


 弟は私の前で腕を組んでうむむと唸っている。


「それと、あんたの話を聞いたけど、別に変な所は無かったよ、ちょっと理想が高すぎるんじゃない?初めて会ったばかりなんだからそりゃ盛り上がらなくて当然でしょ?」


「いやでも話が上手い人はそういうの関係ないじゃん」


「そりゃ確かにね、でもあんたって相手が気にしている事をネタにして冗談を言ったりしないでしょ?」


「え?俺と会話をしていて何を聞いていたの?」


「今はそういうのいいから。話が上手い奴ってそういう所のデリカシーが無かったりするから、たとえそれで笑いがあっても言われた本人は何だこいつって思っている場合もあるわよ」


「それはまあ…確かにね〜」


「気にし過ぎ。いいから相手にメッセージ送ってやんな」


「う、うん……も、もうちょっと休んでから…」


「何じゃそりゃ。──あんた、明日も休みよね?」


「え?うん、そうだけど」


「澪と一緒に遊んできなさい」


「…………」


「またアップデート?」


「ううん、マジで言っている意味が分かんなかったから。何で?」


「あんたが異性に慣れるように、もうお母さんに心配されたくないでしょう?」


「え、二日連続でデートすんの?俺そこまで耐久値高くないよ」


「SAN値じゃなくて?」


「それ言ってる時点で駄目だよね」


「いいから言って来なさい、澪も協力するって言ってくれているんだから。あんたに足りないのは場数よ場数、とにかく異性といることに慣れろ」


 弟が、


「…世の中全員姉ちゃんだったら良かったのに…」


 と、ぽつりと呟いた。


(〜〜〜〜〜〜っ)



✳︎



つぐも:おはようございます、今日は何卒よろしくお願い申し上げます


津島さん:かた


津島さん:挨拶かた


津島さん:おはよう〜いつでも来てね〜⭐︎


 翌る日、日和さんと会った次の日である。姉には「気にするな」と言ってもらえたがやはり今でも尾を引いており、昨日のダメージも残っている中で俺は一人で津島さんの家に向かっていた。

 徒歩で一〇分そこら、すぐに着いた。


(お家デートをしましょうって…)


 津島さんからそう提案されたので、俺は津島さん専用の戸棚からお土産を持って来ていた。ただの里帰りである。

 津島さんの家のインターホンを鳴らすとすぐに迎えてくれた。


「いらっしゃ〜い」


「お邪魔します」


 今日の津島さんは全身長袖である、髪も括っておらず、何だかリラックスしている雰囲気があった。

 玄関に上がらせてもらった時にお土産を渡した。


「あ、これ良かったから」


「ありがとう〜」


(全然気付いてない)


 初めて来た時よりもリビングに置かれている家具が増えており、初めて来た時と同じようにキッチンテーブルの椅子に腰を下ろした。


「何だか増えてますね、前より賑やかです」


「そう〜?とりあえずコーヒーでも淹れるね〜」


「あ、ありがとうございます」


 服装と相まって今日の津島さんは大人しい、普段のテンションではなくとても落ち着いていた。


(家だとこんな感じなんだろうか)


 コンパクトなスピーカーから流れてくるのは前回と違ってヒーリングミュージックである、川のせせらぎに合わせてバイオリンの音色が流れていた。全然津島さんっぽくない。

 津島さんが淹れてくれたコーヒーをずずと啜る。昨日と同じタイマン形式だけど向こうも同じようにコーヒーを啜り、何を話すでもなく音楽に耳を傾けているよう、お陰であまり緊張せずにいられた。

 嘘である。何も話さない津島さんほど怖いものはなく、早速俺は何かやらかしたのではないかと冷や冷やしてしまった。

 

(いやでも曲がりなりに一緒にお風呂入ったんだしこれぐらいの無言は…でも今までずっと姉ちゃんも一緒だったから何気二人っきりってこれ初だよね〜)


 津島さんは今何を考えているのだろうか...



✳︎



(あかん、めっちゃ手出したい…あかーん!何でお家デートにしたん私〜これなら外に出とった方がマシやで〜)


 そうだ思い出せ澪!今の目の前で自信無さげに座っている男子を自分に惚れさせるためにわざわざ回りくどい事をしているのだ!

 つぐも君が好きそうな清楚な髪に整えて、肌の露出が少なくかつボディラインが出るこの服を買ってきたではないか!

 つぐも君がこちらの様子を窺いながら口を開いた。


「津島さんはこういう曲も訊くんですか?」


「え?!こ、こうって?!」


「え、あ、いや…ヒーリングミュージックというか…」


 自分の煩悩と戦っていたので変な声が出てしまった。


「あ、あ〜うん、たまにね、いいかなって〜」


 嘘である。一度も聴いたことはない。全ては雰囲気作りの為だ。

 この曲が好きではないのか、つぐも君が口を閉ざしてしまった。


「曲変える?」


「え、いえ、これでいいですよ、俺も寝る時たまに聴きますから」


「そう?変えてほしかったら言ってね〜」


 煩悩を撃退できたお陰で普段通りに喋れるようになってきた。

 

(いやでも何でそんなに自信無さげなの?)


 本人にズバリ訊いてみた。

 血を吐くかと思った。


「──という事が昨日あって、それでまだ引きずっていまして…」


(何でそんな話をうちが聞かなあかんの…?──訊いたん自分やわ!)


「へ、へえ〜…そ、そうなんだ〜…」


 というかこの子もあかりと似てたらしの所があるな、曲がりなりにも告白した相手に初デートの事を包み隠さず話すか普通。

 よし作戦変更!ここは大人の私がリードしてあげようではないか!


「う〜ん…つぐも君はさ、もっと自信を持っていいと思うよ」


「は、はあ…」


「あのね、女の人ってどうでも良い人を家に呼んだりしないから。これ、どういう意味か分かるよね?」


「まあ…はい、それは分かります」


 続けて私が言おうとしたら「けど」と向こうが言葉を挟み、


「津島さんは色んな人に声かけてるんですよね?」


「……それ今言う必要あるの?」


「え、だって、キッチンカウンターのコップに歯ブラシが二本あるし、これ絶対男の人の分ですよね」


「?!?!?!?!」


(しもたー!!直すの忘れてたー!!)


「津島さんって何人の方と付き合っているんですか?」


「え、ちょ、ちょっと待って、それ訊くのさすがに失礼過ぎない?」


「え?あ、すみません…」


 急にしゅんとしてしまった、自覚が無かったらしい。


(この子もしかして…素はSなのかもしれない…)


「う〜ん…つぐも君はさ〜もしかしたら普段から相手を虐めるのが好きなのかもしれないね」


「え〜?それはさすがにないでしょ」


「そう〜?昨日の女の子は子供みたいな人って言ってたよね、見た目で判断していつもの冗談も言えなかったんじゃない?」


「あ〜ま〜言われてみれば…」


「で、君も冗談は人を泣かせる時があるって理解しているからわざと自分をセーブさせて、それがストレスになって会話がし辛くなっていたんじゃないかな〜って私は思う」


「う〜ん……そういう言われ方をしたら確かにって思いますね……俺ってそんなに冗談言ってますか?「言っとるわ!!」


 素で突っ込みを入れると、暗い顔をしていたつぐも君が笑い声を上げた。


(よしよし…)


「ね?だから君の場合、結構相性が絞られるんじゃないかな〜だから今までデートをしても楽しめなかったんだよ〜」


「ま〜…確かに今は津島さんと喋ってて楽しいですね」


(──はぅっ!!)


 あかん...この子もあかりのDNA引いてはるわ...

 危うくノックアウトされかけたけど何とか持ち堪えた。


「だ、だから…君は歳下より歳上の方がいいんじゃないかな?」


「う〜ん…そうかもしれないですね〜…今日までデートをしてきた人って同い年か歳下でしたし…」


「うんうん」


「津島さんの彼氏さんは皆んな歳下なんですか?「ナチュラルに失礼な事訊くのやめてくれない?」


 私はマジで言ったのにつぐも君はまた笑い声を上げていた。いや絶対Sだわこれ。


(あかりは絶対上手になるって言ってたよね…どうしよう…めっちゃ興味ある…雰囲気も良くなってきたしいけるかな…)


 うん!いこう!いってみましょう!


「ところでさ、あかりから聞いたんだけどね、つぐも君って手のマッサージができるの?」


「見よう見真似ですけど」


「私パソコン仕事だから手が痛むことがあってね、それやってもらえないかな?」


「いいですよ、俺で良ければ。ハンドクリームとかありますか?」


「あるよ〜女子舐めんなし〜」


 マイハンドクリームをつぐも君に渡してあげる。彼は慣れた手つきでクリームを付けて広げていた。


「何か…慣れてるね」


「え?ああ、俺乾燥肌なんで良く使うんですよ」


「へえ〜」


「じゃあ、いいですか?ちょっと緊張しますけど」


 こういう所があるから揶揄いたくなるんだよ!

 私は自分の手をつぐも君に預け──。


「──んんっ」


「……っ!」


 秒で自分の口を手で塞いだ。


「…………」

「…………」


 待って...待って...待って...出すつもりは一切なかった、あんな媚びを売るような声...

 ちらりと盗み見たつぐも君も顔を赤く染めている、ただただ恥ずかしい、さすがに誤魔化せない。


「え…や、やめますか?」


 やめときゃいいのに私は首を振って否定した。


「つ、続けますね…」


 クリームで良く滑るつぐも君の指が、手で痛む所を絶妙な力加減で解してくる。

 痛いのと気持ち良いのと、それで声が出てしまう。


「んっ…んっ…あっ…いやっ…」


「………つ、津島さん、ふざけてます?」


 塞いでいた口から手をパッと離して「ふざけてへんわー!!」と素でキレた。

 やっぱりドSな彼が「じゃあ黙っててください」と本気でやってきた。じゃあさっきの照れは何なの?


「ふーっ、ふーっ、ふーっ、ふーっ」


 発情した猫のような鼻息が出続けてしまう、本当にやってるような感覚に陥ってしまった。


「はい終わりましたよ」


「──はあ〜……」


「じゃ、もう片方の手を出して「いやもう無理っ!!!!」


 彼には悪いが帰ってもらった。

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