我の本能
ちょっといつもより長いです。
我、庭にて日向ぼっこなる優雅な状態である。
「……温い……」
目がとろーんと、瞼に錘が乗ってくるぅ……。
──ん?
視界に入る赤いもの。
ちらちら動く小さいもの。
何ぞあれは。
我の狩猟本能が呼び起こされた。
しかし、我はそれを放っておくべきだったのだ。
チョロチョロと素早く右へ左へと場所を変え、我を翻弄するそれ。
「ぜーはーぜーはー」
我、残念なことに手足が短いんだがっ!?
とーどーかーなーいー!
走るより、転がった方が速いとはどういうことか!?
「ぜーーはーーぜぇーーはぁーー」
端から見れば白い毛玉が庭中を縦横無尽に転がってるだけである。
「…何か大きいケサランパサランが転がってるー」
「白い粉撒いときゃもっと歓ぶんじゃね?」
「……庭に変なもの撒いてないわよね…アンタら?」
遠くで小娘様達が何ぞ言ってる。
ケサランパサランとは何ぞ?それ美味しいの?
赤いものは意思があるかのように我の短い前足に(言ってて悲しい)触れることなく逃げ回る。
『ホントに、何ぞあれはー!』
それは我を揶揄うかの様に、我を翻弄する。
…。
……。
………。
…………。ぷち。
我は怒ったね。
もう切れちゃったよ!
甲高い雄叫びと共にそれ目掛けて跳ぶ──きれいな放物線を書いて空に上がる我。だが、それをそのまま維持できるわけもなく……最高点から地上に落下した。
──びたん。
痛そうな音がした。
後で小娘様が教えてくれた。それを【自由落下運動】と言うらしい。我、一つ賢くなった。……ぴえん。
結局小一時間である。走り回った……否、翻弄され続けたのは。
最後は……壁に叩き付けた。(弱い)風で……。
あれ?最初からそうすれば良かったんでは……?
遠くで小娘様達が何ぞ言ってる。
「……神狼の運動能力、残念すぎない?」
「個体差だろ……一番残念なのが放り出されたんだろうな」
「莫迦な子ほど可愛い……たぶん」
我、何も聞こえてない。
うん。聞いてないから……。
我の心、抉れるから……やーめーてー!
残念な子見る目で我見るの、辞めてくださいーー!
我の心、折れちゃうからーー!
無駄に耳が良いの、悲しい……。
我、壁際に行って先程の赤いものを回収作業である。
赤いの赤いの何処いったっ!?
──ごそごそ
……あ。多分これだ。
…………まずい。これ、ちょーまずいやつかも。
ツンツン。
動かない。
ツンツンツンツン。
ぴくり。
ツンツンツンツンツンツン!起きんかいっ!
のぉー。死んだふりしやがったー!
「おい!こっち持ってこい!」
ギャァァァァーーーーー!
名状しがたい恐怖のお方から命令キター!
我、まず足を綺麗に拭いて、それ咥えて身体を綺麗に洗ってタオルに身体を擦り付けて水分、拭き拭き。ブルブルってやると怒られるの、我。床が濡れるから……。悲しい。
「……えーっと」
困惑する刃物娘。
ぽいっと、小娘様達の前に出したもの。さっき捕獲した赤いもの。
「……トカゲ?」
真っ赤なトカゲである。
死んだふりしてます。
我、知ーらなーい!
「…………。厄介なもの拾いやがって」
名状しがたいお方が何か気がついてるぞー!
ねぇ、何で!?
てか、我、不可抗力ーー!
ギャァァァァ!
凄まじい殺気が赤いトカゲに叩き付けられた!
「……ピィ」
赤いそれは目に涙を溜めて、弱々しく鳴いた。
「猫被ってんじゃねぇ!」
赤いトカゲですってー……。トカゲを被ってるだけですそれ。
名状しがたいお方の勘が非常に鋭い気がするんですけどー!
我の時より当たりキツくないっすかね?気持ちは解りますがねー。我もそれと関わり合いたくないのー。
「てめえが拾ったんだろうが!どうにかしろ!」
あっ……駄々漏れ。そして丸投げ……。
頭、グリグリされたーいやん。
仕方ない。我、命惜しい。
「我は洗いざらい喋ってゴメナサイするのを勧めとく」
「……神狼如きがボクに指図すんなー!」
赤いトカゲは喚き散らした。
あーあ。
我、知ーらなーい!
「トカゲしゃべったー」
「類が友呼んだー」
小娘様達が何か棒読みである……。
ねぇ、何で驚かんのですか。
トカゲ喋ったら、おかしいでしょ!?
「ボクは火竜王だぞ!」
「おい、そっち五月蝿い!……お前は踏み潰されたくなきゃ大人しくしろ」
「喉乾いたー何かちょーだいエドワード(×2)」
ピィ。と目から涙を溢した赤いトカゲ。
あのお方達、強すぎませんか?
名状しがたいお方は強いのか弱いのか……我は口を噤んでおこう。我、死にたくないので。
毛玉、転がる回。
ヒエラルキー
ルビィちゃん>エドワードさん>毛玉
刃物ちゃんは1番目と2番目を行ったり来たり。
☆☆☆☆☆をポチポチポチっと押していただけると押せば押すほどやる気ゲージが上がります(*´∀`)♪
今後の更新の栄養源にお願いします♫