帰宅のち、受難
間が開きました。
「…家についたよ犬!」
我にとっては初めて見る家の形だった。
何と言うか……カクカクっとした箱。
木の温もりを全く感じない……箱。
城でもないのに、壁がぐるっと箱を囲んでいる。防御力が紙のように見える代物だが……物凄い魔法でも付与されているのか?
──ここを家だと称する連中が怖すぎて、防御力皆無でも問題はない気がした。
我、関せず。
我が考えることじゃない。
取りあえず小娘様に逆らうのやめておこう。
我、死にたくないしー。
「ルビィ、それ家に入れる前に洗おうか」
「そうだねー」
小娘様、我を湯浴みさせると?
良い良い、苦しゅうないぞ。
我を持てなそうと言うその心意気。
漸く我の尊さが判ったようで何より。
イヤァァァ!
ギャァァァァァ!
たーーーーすーーーーけーーーーてーーーー!
我、死んじゃうーーーーーーーーーーーーー!
死んじゃうからーーーーーーーーーーーーーー!
小娘様の女従者らしきものが見慣れぬものを手に、我を追い詰める。
「ふっふっふ……綺麗にしてあげるわよー」
その瞬間、ドゴゴゴゴという音と共に我の横にあった小石がどこかに弾け飛ぶ。そして石のあった辺りは水びたしになっていた。
……何、今の……?
えっ、何かの召喚道具……?
そんなもん我に向けるの??
なんかぴゅーっと来たぞ!?
!?
待て待て待て!
我にそんなもの向けない!
我、良く見えなかったけどそれ危ないやつだよね?
再び、ドゴゴゴゴという音と共に白い何かが我に向かってくる。
冷たぁっ!
えっ、水?
我、水責めされる……!?
湯浴みじゃないの!?
強力な高圧洗浄機から放たれた水は、白い毛玉のような生き物の足元目掛けて突き刺さるように飛んでいく。
ドゴゴゴゴ!!
小石を弾け飛ばし、──中には水圧でそれを割り──それは白いもの目掛けてパチパチ飛んだ──が体には当たらず逸れて落ちる。
痛っ!痛っ!痛い気がする!?
何か当たって……あれ、ない。
そうだ我、結界張れたんだった。
我、無敵である!
「……怯えてねぇ?と思ったけどそうでもねぇな」
その声と共に矢のように降り注ぐ痛い水は勢いを弱める。
ギャァァァァァ!
何か怖いのがやって来たぁぁぁぁ!
怖い怖い怖い怖い!
水責めもヤダけど、こっちも嫌だーーーー!
ねぇ二択しかないの!?
我に選ぶ権利無いの!?
我、何かしたーーー!?
「遊んでねぇで、シャワーで洗え。時間だけ掛かってしゃーないぞ」
「……犬、なんかおかしい」
「何がだ?」
「……水、弾いてる」
何やら奴らが、我をチラ見しながら話をしている……。
結界の中だと良く聴こえないのが難点である。
「小娘、我を放置するな!」
えっ!?という表情をした奴らが我を見る。
「何か……引き寄せちゃった系?」
「あーやっぱそういう類いだったか……面倒な」
「お話しできるんだぁ、賢い?」
否、奴ら……反応おかしくないか?
普通、犬は喋らん!
ケ◯ヒャー!
Kのつく洗浄機でも砂利は割れませんよね……。
一般の家に置いとくとやヴぁいレベルの代物だと思います。