神狼、空腹中
──ううっ…我、酷い目にあった……。
何あれ。
あの痛いの何…。
小娘には何か首に変な輪っか付けられるわ、それにめっちゃ頑丈な紐付けるわ…我の矜持ズタぼろ……。
我。
我…。
我………、腹へった…。
動けないー。
うーごーきーたーくーなーいーーーーー。
「犬、動いてないよ…ルビィ」
ルビィと呼ばれた柔らかい白金色の髪の少女にリードを持たれた子犬は道路の真ん中で足を突っ張って止まり、動こうとしなくなってしまった。
「その犬きちんと飼うなら、上下関係覚えさせないとダメよ?」
「…うーん、そっかー」
ルビィは動かない子犬の前にしゃがんで頭をがしがし撫でる。
目をすぅっと細めて、無表情になる。
「…道路の真ん中で邪魔だから、歩こうか?」
外見からは想像もできない冷たく低い声に子犬は一度ビクッと体を動かし、その後非常におとなしく従った。
ガタガタガタガタガタ…。
ガタガタガタガタガタガタ…………。
歯の奥どころか、体の芯から震えがくるんだが…。
「…道路の真ん中で邪魔だから、歩こうか?」
こっ、小娘…いや、小娘様っ!
そのっ、殺気、めっちゃ怖い!
やめてやめやめてやめて!
我死んじゃう!
われ、しんじゃうからーーーーーーー!
じんじゃうがらぁーやーめーてぇーー!
何なの、何なのだー!
何で小娘が…いや小娘様が、元いた世界の勇者より強い殺気放つんですかー!
我、もしかして拾われた先間違えた!?
えっ、それとも何?
それが、この世界の普通なの!?
われ、きた世界…自体……まぢがえたのーぉー!?
我、信心なんて無いけど神さま…た、たすけ…て………。
この世界で、我、生きていけるんだろうか………。
元いた森に還りたい……。
……………我、腹へった…。
怖くて、ご飯要求できる気がしないんだが…………。
つか、一緒にいる女もそーなのか!?
うわーーーーーん…。
これなら、クズ勇者の方がマシだったのか…………?
うううっ、クズ勇者…手に負えないクズだし、国王もクズだし…殺気だけの小娘様のがいいかもしんない。
よし。
決めた。
平身低頭して小娘様達に逆らうの辞めておこう!
我、死にたくない…。
…腹へった……我。
どうみても拾われた先があれです。
早めに服従して正解だと思います(*・∀・)
もっと怖いのが後ろにいるし…。