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神狼、困惑する

 ここはどこであるか……?


 我は、人使いの物凄く荒い上に女と賭博が好きで手抜きすることしか考えてない勇者と、性格が良いとはお世辞にも言えぬ聖女と、聖女といがみ合ってた陰険魔導師と他数名で…邪神討伐中だった筈なのだが?



──我、我であるか?


 我は誇り高い神狼(フェンリル)である。

 成獣の我は、その気になればトウヒの樹よりも体躯を大きくすることは出来るが……邪魔なので、普段は馬くらいのサイズである。



 いや、そうじゃない。

 ここはどこであるか……?

 見たこともない衣装をつけた大勢の男女が入り組んで歩き、四角い箱のような物が馬よりも早く走っていく。

 色とりどりの装飾をされた高い塔があちらこちらに建っている。

 あちこちに音が溢れ、耳がキーンとなるのだが。解るか?キーンだぞ。不愉快な事、この上ない。



 我はふと自分の前足を見てみる。俯いてるとか言うでないぞ?


──あれ?我の足小さい…。灰色の地面が非常に近い…この地面非常に固くて歩きにくい。


 歩いても歩いても景色が変わらないのは短かくて小さい足の所為か?

 何故我は小さいのだ?



 この街はなんかおかしい…自然を感じない。無機的な何かがぞわぞわと蠢いている感じがするのだが…何と言って良いのか良く解らぬ。



──我、何処に行けば良いのだ…?


 阿呆勇者の所戻るのも嫌なのだが、解らぬ場所だと何処行って良いのか解らぬし…決して心細い訳ではないぞ?我は誇り高い神狼(フェンリル)であるぞ?






 視線を感じる。

 何だ?我の神々しさに目が離せぬか。


 我は視線の方へ振り返る──白金色の髪をした小さい少女と目があったのだ。

 すれ違う他の人間達は我の神々しさに気が付かなかった様だが、小さい割には洞察力が優れているようだ。中々に見込みがあるな!



「ユカー。これ連れて帰るー」

「えっ、怒られると思うけど?」


 我をもてなそうと言う心意気、良いぞ小娘。


「だいぶ薄汚れてるわよ…」

「連れて帰る!」


 頑張れ小娘!

 付き添いらしい女に負けるでない!


「往来の真ん中で何やってんだ…お前等」

──我の背筋に悪寒と言うか、逃げ出したくなる恐怖が走る…。



 金髪の背の高い男である。阿呆勇者と同じくらいの年齢であろう…がっ、風格といい威圧感とい天と地程の差が在るが……。


『…我、死ぬほど怖いつーか…あの男、邪神より怖い気配してるんだがーー!』


 何なのだ!アレ!

 めっちゃ怖いんだがーー!

 怖さで全身がプルプル震えて、歯の奥がガチガチと音を立てている。


「連れて帰るー」

「…却下(ダメだ)

「その()めっちゃ震えてるわよー」


 小娘頑張れと言いたいが、我…その男怖い。

 死ぬほど怖い。

 我をめっちゃ睨んでる…。プルプル…。


 そっ、そうだ!

 背に腹は変えられぬ。我も命は惜しい。


「…どんだけ怖がれてんの?エドワード…」

「お腹見せてるー」

「………。」


 我は全力で命乞い──もとい、可愛らしく腹を見せてアピールしてやった!


「と言う訳で連れて帰るの決定!」

「…………予防注射は受けさせろ」

「ポメラニアンと豆柴のミックスなのかしらねこの()

「只の雑種だろ!」


 ふふふ。我の作戦勝ちである。

 素晴らしい、隙のない作戦だな!

 我、自分の才能に自分が怖い……。


「名前はね、ちょこみんとにしようと思うー」

「どっから出てきたその名前…」

「ルビィ、あんた言うほど“チョコミン党”だっけ?」

「……チョコミン党って何だそれは………?」



 我の名前は良く解らないが、“ちょこみんと”と言うものになったようだ。

 つか、小娘も女も強いな……。男がスルーされてるぞ…。

 もしかして、男よりも小娘達の方が怖いのか……?

 まぁ小娘が何とかするであろう。

 これでこの世界で生きる目処はついたな!

 あいつら(勇者一行)の元にだけは二度と帰りたくないのは確かだな!

 勝手にくたばれ!阿呆どもめ!

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