5
トントン
「お嬢様、おはようございます。
入ってもよろしいですか。」
「どうぞ。エマ。おはよう。」
エマはにっこり笑顔を私に向けてくれる。
「今日は第二皇子と初めてのご挨拶ですね。
もともとお嬢様は美しいですが、今日はいつも以上に
美しくしましょうね。」
張り切るエマに対して私は、
「いや、ほんとほどほどでいいからね。
ほどほどで。」
と呆れた笑みを浮かべるのであった。
「お嬢様。ドレスはこの間、購入した青いドレスにしようと思うのですが、アクセサリーはいかが致しましょう?」
「んー、ネックレスはアクアマリンにして、イヤリングもお揃いにしようかな。ブレスレットは、、あ、そうだ。このブレスレットにしてくれるかしら。」
そう言って、机の中にしまっておいたアルから貰った
魔法石のブレスレットを取り出す。
「とっても綺麗な色のブレスレットですね。かしこまりました。」
着々と準備を進めていると、
トントン
「ちょっといいかい?レティ。」
(お父様の声だわ。昨晩はお城に行ってたのよね。)
「はい、どうぞ。」
少し疲れた様子で部屋に入ってくるお父様。
「おおー!とっても綺麗だなあ。
ますますアイリスに似てきた!」
アイリスとは、私を産んで亡くなった母のことだ。
「とっても綺麗だよ。レティ。
あ、話というのはだな。レティ、君がレオンハルト第二皇子の婚約者候補というのは、この前伝えたよね?」
「はい。以前、朝食のとこに仰ってました。」
「んー、それが、最有力候補になってるみたいなんだ。
レティは荷が重いと言ってたから、昨日、国王に候補から外してくれと言ったんだが、なかなか他の貴族がうるさくて、無理みたいなんだよ。すまない。
まだ決まった訳ではないんだが、一応伝えておこうと思ってな。」
少し肩を落としながら話すお父様に対し、
「お父様、私のためにありがとうございます。
王命なので、仕方ないです。」
(お父様も、板挟みで難しい立場...これ以上は迷惑は掛けられないわ。私が頑張らないと。)
お父様に心配な目で見送られながら、
城へと向かう馬車へ乗り込んだ。
馬車の中では
「お嬢様、大丈夫ですか?
顔色が少し悪いようですけど、、、。」
「大丈夫よ。ありがとう、エマ。」
(殺された相手に会いに行くのだから、
そりゃ顔色も悪くなるわよね。
前回と同じだと、馬車から降りると
レオンハルトがエスコートに待っていて、
庭園にいくのよね。
そこで、お茶会がはじまる。
始まってそうそう、マリンローズが来て、
紹介されるのよね。
あの時は仲良くなろうと必死だったから、
流してたけど、普通、婚約者候補が来たら
他の女を呼ぶのは非常識だわ。
ああ、、本当に行くのが嫌だわ。
このまま着かなければいいのに....)
私の思いも虚しく、馬車は城に着いてしまった。
ガチャ
「レティシア・フォード公爵令嬢!
お待ちしていました。
私はレオンハルトと申します。どうぞお見知り置きを。」
金色の髪を靡かせ、手をすっと差し出してくる様は
まさに絵本の中の王子様のようだ。
(....私はこの見た目に騙されたのよね。)