表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エリート×オタクの恋はいろいろ大変です!  作者: 香住なな
第一部 同志編
1/93

プロローグ

ふわっと気楽に楽しんでいただける作品をめざしてます。

気に入っていただけたら、ブックマーク・☆評価・いいね・感想などいただけると嬉しいです。

 就職先を決める理由って、人それぞれだと思うけど、私が警視庁を選んだのは『憧れの人に会いたいから』だった。

 私の憧れの人は、もちろんケイコ先生だ。



 私がケイコ先生主催のオリジナル小説サークル【桜田門】に出会ったのは、高校一年生の時。

 私と趣味が似てるいとこのお姉ちゃんが教えてくれた。

 バディものを読んだのは初めてだったけど、Webサイトで無料公開されてるサンプル三話分を読んで、一気にハマった。

 それまでは恋愛ものが好きだったのに、バディものの恋愛より深い信頼関係がすごく尊く感じられた。

 当時はバイトしてなくて、お金あんまりなかったけど、すぐに有料会員登録して、お小遣いをつぎこんで続きを読んだ。

 特にハマったのが、警察もの。

 捜査一課の刑事と管理官の、視線だけでお互いの意図を組みとって動ける関係がステキすぎて、何周も読みふけった。

 あまりにも好きすぎて、もっとハマりたくなって、警察組織について調べたり、管理官が出てくる刑事ドラマを見て、イメージをふくらませたりした。

 それでも物足りなくなって、ついに警視庁見学ツアーに申しこんで、いとこのお姉ちゃんと一緒に参加した。

 見れた範囲は一般的な見学コースだけだったけど、それでも『あのシーンはここを通りながらだったのかな』とか妄想がふくらんだ。

 ケイコ先生主催のオンリーイベントにも行ったし、たまに行われるオンラインイベントにもできる限り参加した。



 私は中学から大学までエスカレーター制の女子校に通ってて、内部進学するつもりだったけど、もっと理解を深めたくて、外部受験することにした。

 さすがに東大法学部は無理だけど、家から通える距離で法学を学べる女子大を選んだ。

 突然の進路変更は、担任の先生にもお母さんにも驚かれたけど、理由は『外の学校も知りたいから』って適当にごまかした。

 普段の学校の勉強は退屈なのに、推しに近づくための受験勉強は楽しかった。

 無事志望校に合格して、大学生活を楽しみながらも、ずっとケイコ先生の作品を追っかけてた。

 妄想補完のためについに自分で小説書きだすと、ケイコ先生の偉大さがさらに理解できた。

 くどくどした描写がなくてもそのシーンを想像できるような、空気感が伝わってくるような、淡々としてるのに深い文章に、さらにのめりこんだ。

 作品も好きだけど、ケイコ先生自身も大好きで、神として(あが)めてた。



 大学二年生になって、就職先を考えなくちゃいけなくなった頃、オンラインイベントでケイコ先生の職場、つまり警視庁の話が出た。

【最近若いコが少なくて困ってるの。

 うちは、仕事内容は結構ハードだけど、私を筆頭としてオタク趣味のコが多いから、趣味の活動を続けながらでも働きやすいほうよ。

 もし今就職活動中のコがいたら、うちを検討先に加えてくれると嬉しいわ】

 ケイコ先生からしたらなにげない話題の一つだったんだろうけど、私には、神託に思えた。

 どうせ働くなら、ケイコ先生の近くがいい。

 直属の部下は無理だとしても、せめて同じ建物で働きたい。

 自宅から通える距離だし、私にとっては聖地だから、いいこと尽くめだ。

 といっても、運動は苦手だし体力も人並み程度しかないから、警察官じゃなく行政職員で、事務職をめざすことにした。

 必死に勉強して、役立ちそうな資格も取って、試験を受けた。

 最終面接の時に、ケイコ先生がいてびっくりした。

 採用通知が来た時は、泣いちゃったぐらい嬉しかった。



 入庁してから知ったけど、ケイコ先生は人事の実質トップだった。

 その立場を有効活用して、【同盟】ネットワークっていうものがこっそり作ってあった。

 最初はケイコ先生とそのファン達の自主的な助け合い団体だったのが、IT環境の進化とともに、だんだん規模が広がっていったんだって。

 今では警視庁だけじゃなく、警察庁、裁判所、都庁、各地の役所や警察署にも【同志】(なかま)がいて、執行部と呼ばれる人達が統括する全国規模のネットワークになった。

 会員専用のデータベースがあって、そこに自分が知った情報を登録しておける。

 他の会員がその情報を利用して事件解決したり案件が進展したりすると、報奨ポイントがもらえる。

 報奨ポイントが溜まると、休暇の優先取得ができる。

 イベントの日に休暇申請が集中した場合、報奨ポイントが高い人が優先される仕組み。

 仕事にもシュミにも役立つし、遠方の同担の人と知りあえたり交流したりできて、すごくありがたいシステムだよ。

 


 捜査一課は、仕事の内容上グロ耐性は必要だけど、この部署でしか味わえない尊さがある。

 ちなみに、ケイコ先生の作品で、私が最初にハマって、いまだに一番好きな作品は、【徹&祐一シリーズ】。

 刑事と管理官っていう設定の二人だから、警視庁で働いてると、『あの話では、ここで休憩したのかも』とか、『あの話の時に食堂で食べてたの、このメニューかな』とか、妄想が捗るんだよね。

 その妄想をふくらませた小説を、ケイコ先生ファンが書いた二次創作作品を投稿できる下部サイト【桜下(おうか)(うたげ)】に、いくつか投稿したりもしてる。

 オタ活の資金稼ぎ(仕事)と、聖地巡礼と、神へのご奉仕と、ネタ探しが、いっぺんにできちゃう、すごくありがたい職場。

 ここを選んでよかったって、毎日ケイコ先生に感謝してる。

 だから、今就職先を検討中のケイコ先生ファンの皆さん。

 警視庁はお勧めですよ!

 あの作品の雰囲気を、直に味わえます!

 運が良ければ、ケイコ先生に会えるかも!

 ぜひ来てね!


 ~警視庁刑事部捜査第一課所属(事務担当) ミケより~



【就活生の皆さんへ】PDFより抜粋

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ