表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呪い姫は罪を償いたい  作者: 葉月 螢
3/3

王都へ

 とりあえず王都へ、と言われたものの、フィリアを乗せる馬車はなく、ディークの愛馬に相乗りすることになってしまった。

 「配慮が足りなかった、すまない。落とさないようにしっかり抱えるから」

 『そんな、私の方こそご迷惑を……逆に走りづらくないですか?大丈夫ですか?』

 ディークには、読唇ができるから、とフィリアは声は出さずに口を動かして会話をしている。

 「もっと過酷な行軍もあるから、大丈夫だ」

 彼は気にする様子もなく軽快に馬を駆っているようだが、フィリアは気が気ではなかった。

 (だって、絶対汚いだろうし、匂いだって……)

 目隠しをされて日付の感覚もわからない中過ごしていたフィリアには、水浴びをしたのが遠い昔のような気がして、自身の体の汚れが相当な気がして申し訳なく思った。

 しかも、フィリアを落とさないようにディークがしっかりと抱き込んでいるのも拍車をかけていた。

 異性とこんなに密着したのは人生で初めてかもしれない。

 フィリアが内心おろおろしているとも知らず、ディークはのほほんとしていた。

 「せっかくの景色なのに目隠しが邪魔だな」

 どんな景色か気にはなったが、生憎目隠しのせいでフィリアの視界は闇だった。

 それでも、穏やかな風の心地、陽の明るさ、小鳥の囀り、風で揺れる草花の音、息を吸い込めば緑の匂いがして、“せっかくの景色”がどれほどのものか気になったのと同時に、見られないのが残念に思えた。

 「王都に入れば、その呪符だらけの目隠しも喉の刺青も取れると思う」

 王都にはあらゆるものを退ける結界が張ってあるという。王都に入れば、目隠しと喉の刺青の効力もなくなるだろうという話だった。

 出発してからどれくらい経っただろう。慣れない馬上で異性に抱き込まれているフィリアは緊張で無意識に力が入っていたようで、体のあちこちが軋みだしていた。

 「少し休憩にしよう」

 もぞもぞ動き出したフィリアに気づいたディークの声かけで、少しの休憩を挟むことになった。

 近くに泉があるようで、水の流れる音がする。手を伸ばすように促されたフィリアはそのままディークの肩に捕まる状態となり、横抱きに抱き上げられた。そして、切り株に優しく下される。

 「水だ。疲れただろう。王都まであと半分ほどだ。もう少し辛抱してくれ」

 差し出された水筒と思われるものを受け取って喉に流し込む。知らずに喉が渇いていたようで、体に染み渡るのがわかった。

 少しの休憩後、再び王都に向けて出発した。フィリアは変わらず馬上でディークに抱き込まれていて身を縮こませていたが、ふと違和感を感じて目隠しに手を伸ばした。

 「少し緩んできたか。王都が近い証拠だ——疲れているだろう。王都に着くまで眠っていていいぞ」

 『そ、そんなこと!できません!』

 フィリアが大慌てで手と首を振って断っていると、ディークがフィリアの体を自分の方にもたれかからせた。驚くフィリアに構わず、そのまま抱き込む。

 意識しないようにしていたディークの体温とさらに心音を感じてフィリア体を強ばらせたが、温かさと規則正しい心音に心地よさと安心感が勝り、今までの緊張感や諸々の疲れも相まって、いつの間にか眠りに落ちていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ