プロローグ
初投稿作です。よろしくお願い致します。
本当は、こんなことしたくなかった。
誰かのために力を使いたかった。
誰かを貶めるためなんて、絶対に嫌だった。
なのに、どうしてこんなことをしてるんだろう。
どうして、こんなことになったのだろう。
どうして。どうして。どうしてーーーー。
目の前に座り込んでいる青年を見下ろした。
両目は固く閉ざされ、息も荒く、背は瓦礫に預けて両足は地面に投げ出されている。
『あとは、頼んだよ』
頭の中に声が響いた。
俯いて両手で顔を覆う。呼吸を何度も繰り返して、心を落ち着かせた。
「嫌だよ」
ポロリと零した言葉は本音で。
「やりたくない」
呟きに、唇を噛みしめて頭を振った。
望んでない。でも、やらなきゃならない。だって。
「決めたのは、私だ」
顔を上げてもう一度青年を見下ろすと、傍らにしゃがみ込んだ。
彼の両目を左手で覆う。
力を流す。
手を離すと、青年の両目尻に黒い楕円の痣ができた。
それを確認して立ち上がると、駆け出した。
全速力で。誰もいない所へ。
はやく、はやく、はやく。
足がもつれて転んで、膝や腕を擦りむいて。
上体を起こして、ふと顔を上げると、満天の星空が瞬いていて。
本当は、こんなことしたくなかった。
誰かのために力を使いたかった。
誰かを貶めるためなんて、絶対に嫌だった。
なのにーーーー。
「どうして?……どうして。どうしてっ……」
俯いた目から涙が溢れて、体力と気力を奪っていった。