2:ラブレターって、今時あんのかよ……
「よお佐久間!調子はどうだ?昨日もめちゃくちゃ戦っただろ。まだ疲れが残ってるんじゃないか?」
「あの程度で疲れたように見えるか?」
「相変わらずひねくれてんなぁ。」
佐久間が転校してきてから3日が経った。佐久間は放課後はずっと戦闘しているようで、藤本はそれを気にしているようだ。
「せっかく友達になったんだから、何かあったらすぐ相談しろよ?」
「はいはい、そんな軟弱じゃねえっての。それともあれか?龍樹は俺の親かなんかか?」
「生意気なやつだ……。」
佐久間と藤本は、この2日間で冗談を言い合えるくらいの仲までにはなったようだ。どちらも冗談など言ってないような気もするが……。
「まあ、授業も普通に受けてるみたいだし、大丈夫そうだな。」
「…………まあ、そうだな。」
「どうした?返答に困ってたみたいだが……もしかして、勉強はあんまできないタイプか?」
「そんなこと、ないが?」
詰まりながらも応える佐久間。そこに隙を見つけた藤本が攻める。
「よし!俺もそこまでできる方じゃないが、お前に教えてやろう、佐久間!さ、まずはどこからやろうか!」
「いや、そうだな、あー、おっ。」
はぐらかそうとした佐久間だったが、あることに気づいた。
「やべ、戦闘申し込まれてたんだった!これは行かなくちゃいけないな!じゃ、また後でな!」
「あ、おい!くそ、逃げられたか……。」
風のように去っていった佐久間。教室を出て1分と経っていないのに既にグラウンドに到着している。
「あはは、藤本も大変だね。あんな転校生のお目付役なんかしちゃってさ。」
「本当に……。やんちゃな、幼い息子を見てるみたいで楽しいがな。」
クラスメイトと佐久間のことで少し盛り上がる藤本。楽しんでいたが、グラウンドから歓声が聞こえ、教室にいた生徒皆が窓からグラウンドを見に行った。
「すげえ……!あいつ負けなしだよな!」「あの動きもすげえぞ!能力を使わずにあそこまで戦えるのかよ……。」
佐久間、友人を褒める者ばかりで、藤本は少し笑顔を見せた。
「あの、藤本くん……。」
「ん?どうした河井?」
盛り上がっていた藤本を呼んだのはクラスメイトの河井だった。河井はクラス、学年で一番ともいえるほど可愛い。その魅力を力とするほどに、だ。そんな河井が一体何の用で話しかけてきたのか。
「これ……お願いします!」
「あ、おい!」
手紙……ラブレターらしきものを渡すだけ渡して去ってった。藤本は、自分に渡されたのだと思いドキドキが止まらない。が、裏を見た瞬間彼の動悸は止まった。「佐久間くんへ」
「なんだあいつ!転校してきて3日程度で心を掴んだのか!?それに、河井もだ!こういう大事なのは自分で渡せっての!くっそ、これじゃ佐久間の目付役じゃねえか……。」
「ん?俺のこと呼んだか?」
「おわっ!びっくりさせやがって……もう戦いは終わったのか?やっぱつええな。」
愚痴を佐久間に聞かれて驚いた藤本だが、改めて佐久間の強さに感心した。
「ああ、想像以上に早く終わったな。それに、向こうもなぜか降参なんかしやがってさ……つまんねえ戦いだったよ。」
「早く終わったならそれはそれでいいさ。話は変わるが、河井がこいつをお前にって。」
「ん?手紙か?」
藤本から受け取った手紙をその場で読み始める佐久間。顔色一つ変えずに読み切ったようだ。驚きもせず、喜びもせず。
「ふーん。そういうことね。」
静かな怒りのような顔で、冷めたような声で、手紙を読み終わった後彼はそう言った。
「龍樹、行かなきゃいけないとこがある。すまんな。」
「すまんって、そりゃどういうことだ?」
「俺のことは放っておいて構わねえ。せっかくの友なのにな。」
「何言ってんだ!何か問題でもあるんだろ!手紙を読んで喜びもしねえってことは、よくねえことでも書いてあるんだろ!なら俺を頼れよ!」
「悪いが、これは俺の問題だ。お前は関係ない。いや、関わるな。」
「なっ!」
そう言うと、さっきとは違いゆっくりと、焦らずに佐久間は歩いて行った。圧をかけるように、ゆっくりと、ゆっくりと。
そこに残ったのは、藤本だけだった。
つらい