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「……何でお兄ちゃんは買い物に行くと、問題を起こしてくるの?」


「いや、今回のは問題って言うほどのことじゃあ……」


「言い訳しないで」


 家に帰るなり出迎えたのは、般若の如き怒りに身を包んだ妹、結衣だった。

 反論する間もなく正座をさせられ、事情を説明するが、怒りは鎮まってくれないようだ。


「でもほら、相手にもこっちにも怪我は無いし、人助けでもあるわけだから……!」


 対処としては満点だったはずだ!とチラリと顔色をうかがう。

 すると結衣はすっと目が細くなり、冷ややかに射殺すような目になる。


「別にそこはいいの。人助けは良い事だし。……問題は、女子高生と楽しーくお茶をして、あげくには買い物を忘れた事!」


「そ、それは……! 先方からお礼をしたいと言われたものでして……!決して下心などは無く、少しお話をしただけでございますゆえに……」


「その言葉、嘘偽りは無いであろうな?」

 鋭い視線が両の眼に真っ直ぐ刺さる。

 閻魔さながらの尋問だ。


「はい、真実にございます。齢は十七、妹君と同い年ということもあり、話に花が咲きまして……」


「ほう……名は何と申すのだ」


 芝居がかった口調で話すと、結衣も乗ってくる。

 おふざけが許されるならもう大丈夫だろう。


「霧島という名でございます」


「え、霧島? ……もしかして、背が低くて、肌凄く白くて、可愛くて、上品な感じの子じゃなかった?」

 急に口調が普通に戻り、霧島さんの容姿をドンピシャで当ててくる。


「そうそう!凄い可愛い子でさ!……もしかして、知り合い?」


 可愛いという言葉を使った時に下瞼がぴくぴくっとした気がするが、頷き肯定をした。


「知り合いっていうか、ちょっとした有名人なんだよね。霧島 舞花といえば、うちの学校の不思議マドンナ的存在なの」


「不思議マドンナ? なにそれ?」


 疑問を問いかけると結衣は少し複雑な表情になった。

 どうやら、あまり良い意味では無いようだ。


「元々美人だから、影では人気があったんだけどね。ここ最近不思議ちゃん発言が多いらしくて、目立ってるんだ」


「不思議ちゃん、ね。話した感じは礼儀正しくて、しっかりした子だったけどなぁ。……霧島さん何したの?」


 別に知ったところで彼女に対する評価は変わらない。


「私も聞いただけだからね? 詳しくは知らないけど……なんかオーラみたいなのが見えるとかいう話だよ」


 ……なるほど。


 思わず黙り込んでしまうと、結衣はそのまま話を続ける。

「最初はみんな冗談だと思ってたらしいんだけど、ある時学校帰りに、『あの人、見える。何かする気だ』って言い始めたんだって。それで周りが茶化して、そのまま帰って……」


 一呼吸置いて、話は続く。


「その日の夕方のニュースで、彼女が言ってた人物が宝石店で強盗を起こして指名手配されてたってオチ。当然、次の日から学校で霧島は本物だ! って盛り上がっちゃって、一気に不思議ちゃんマドンナの誕生、というわけ」


「なるほどなぁ。男だったら盛り上がりそうな話だわ」


 話の内容からして強盗犯は魔法を使い、霧島さんはそれを先読みしたに違いない。

 なまじ事実が含まれている分、有名にもなるか。


「そうそう。本当男子ってバカだよね。でもそんな事もあって、ちょっと近寄りがたい雰囲気はあるかなぁ」


「そっか、まぁウワサはウワサだよ。今度うちに来た時に話せばどんな子か分かるさ」


「そうね、ウワサなんて所詮ーー、え? うちに来る?」

 突然、何言ってんだコイツと言わんばかりに表情が変わる。


「あれ? 言わなかったっけ? 今度家に遊びに来ることになったんだよ」


 ーーポカンとした結衣に、言わない方が良かったかもしれないと思い、再び般若が見えた時には後悔を確信した。





ーーーーーーーーー





「あの家で間違い無いですか?」


「そうそう、あそこのお宅ですよ。本当に近所のスーパーであんな事が起きるなんてねぇ……」


「ご協力ありがとうございます。最近は犯罪も増えていますから、お気をつけて下さいね」


「ほんと、嫌な時代になったもので……。お仕事ご苦労様です」


 一見すると警察のような制服を纏った男は、軽く会釈をしその場を立ち去った。


 会話をしていた主婦と思しき女は親切に良いことをしたと思いつつも、さっきの男は一体何者だったのだろうと不思議に考える。


「まぁ、警察の関係にちがいないわね」

 何故だか信用しても大丈夫に感じていた。


 先程の人物と話していると、昔からの知り合いのような、安心感を得られたからだろう。


「それにしても、3ヶ月も前の事件だっていうのに……まだ何かあるのかしらね」


 犯人はその場で捕まったと聞いていたため、これ以上何があるのだろうかと空を眺める。

 当然、答えは検討も付かず、すぐに洗濯物を取り込みにかかる。

 どうやら、一雨降りそうな気配がしたためだ。


「さっきまであんなに晴れていたのに!もう!」


 まるで先程とは表情を変えた世界で、太陽は姿を隠し、分厚い入道雲が辺りを薄暗く陰気な雰囲気に塗りかえていくーー。



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