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「くわぁー……」

ぐーっと伸びをすると、あくびがでた。

 今日は久しぶりの晴天に恵まれてとても気分が良い。


 こんなに天気が良いのはいつ以来だったか。

 思い出すのは、やはりあの事件の日だ。


 気付けばもう三ヶ月が経ち、世間ではたくさんの変化があった。

 謎の電波障害によって、テレビの地上波放送が無くなり、代わりにネット回線での放送がメインに変わった事。

 犯罪件数が増加した事。

 新興宗教が設立され、怪しげな人達が街をうろつくようになった事。


 目まぐるしい変化が起こっているが、その原因は確実にWERDOによる爆発事故が起因しているに違いない。

 誰もが頭の片隅で分かってはいるのだ。

 それでも、直接的な原因とは理解が出来ない。

 魔法のせいです、なんて思っても恥ずかしくて口に出来るはずが無いのだろう。

 

 ……結局のところ、魔法を使えることは自分の秘密として、家族にも黙っているしか無かった。

 そもそも信じてもらえるか、怪しい所だけど。


 気配を察知し、身構えると案の定バタンッとドアが勢いよく開く。

「おっはよ〜!」


「ん、おはよう」


「えー、最近お兄ちゃん早起き過ぎでしょ!今日こそ起こしてあげようと思ったのに……」

 結衣が不満げに抗議してくる。


 最近はすっかり落ち着いたものの、事件の真相がバレてからしばらくは、どこに行くにも着いてくる勢いだった。

 酷い時はドアの隙間からこちらをじーっと監視されていたほどで、思わず声が出てしまうくらいには肝を冷やした。


「ま、まあ、そろそろ大学も始まるしさ。生活リズム整えないといけないからね」

 本来は既に始まっているはずだったが、研究室の爆発事故により休みが伸びていた。

 リモートでは講義が行われていたが、実質的に休みのようなものである。


「そっかー。にしても大学生って休み多くて羨ましい!私も学校休んでどっか行きたい!」


「はっはっは!良いだろう!ま、その前に受験が待ってるけどね」


「いやーやめてー!聞きたく無い〜!」

 耳に手を被せながらそう言うと、パタパタと退散していく。


 高校生は一番遊びたい盛りだけど、将来も考えないといけない。辛い時期だ。


 さて、妹とのスキンシップも終わったことだし、毎朝のルーティンを始めることにしようーー。


 まずは体の中にある魔素を巡らす。

 足先から頭まで場所場所で集めたり散らしたりしていく。

 これは魔素の流れの感覚を掴むために、なんとなく始めた練習だったけど、素早いコントロールが身につく。

 結果として魔法の発動までに掛かる時間が随分と短くなった。

 朝の練習時間は短く5分程度だ。


 サクッと終わらすと、次は光量調節の練習に移る。


 集めた魔素を何とも言えない感覚で念じると右手が光った。

 これを先程の流れを意識しながら、絶えず魔素を巡らせ、変換しながら増やしたり減らしたりする。

 すると、手が強弱をつけて光る。

 ……もっとも朝なのであまり光らないけど。


 夜にやる時は家族に見つかる可能性があるため、布団に潜って行うのだが、地味にしんどいのだ。


 10分も続けると集中力が切れてきた。

 よし、こんなもんかな。


 最後に次なる進歩を目指して、別の光色を出すべく感覚を探る。

 今は白く輝く感じの光だから、色んな色が混ざっているはずで、選択的に使えば出来る気がするのだ。

 目指すは光学迷彩だ!


 しかして、そう上手くはいかず、今日も色の変化は無かった。

 

 この練習は何の意味も無いかもしれない。

 だけども、発動までの時間も光の強弱も繰り返し練習することで大きく上達した。

 トライアンドエラーの精神だ。

 誰も先駆者がいないのなら、自分で道を切り拓くしかない。


「言うても、道のりはまだまだ長いなー」


 朝は切り上げよう。

 また夜に挑戦だ。




ーーーーーーー




「それにしても、犯罪者ってのは意外と普通な見た目してる事が多いっすよね」


「被疑者、な。お前も一端の警官なんだから、言葉使い気をつけないと」


 病院の喫煙所で三船刑事と部下の山口が雑談をしていた。


 犯罪件数の増加もあり、不測の事態に対応出来るようペアでの活動が義務付けられており、今日は以前より捜査していた容疑者の容態を確認しに来たのだ。


「でも、あれは確実に黒っすよ。私怨ありありの感じっていうか。聞き込みの時に普段からいびってくる客でクレーマーだったって聞いてますし」


「お前なぁ……根拠が薄いっていうか……。実際どうやってあんな事件起こせたのか不明だから俺たちが出張ってきてるんだろ?」


「それは刑事の感ってやつっす!こう、ビビビッと気づいちゃう感じ?三船さんも言ってたじゃないですかー」


「あのなぁ……。はぁ、そろそろ行くーー」

 呆れながらも仕事に戻ろうと声をかけた瞬間、ガシャンッというガラスの割れる音とワンテンポ遅れて悲鳴が病室から聞こえてきた。


「え、うわ。あの部屋って……」

「急ぐぞ!」


 呆けている山口を尻目に三船刑事は既に走り出していた。


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