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冷やし中華お待たせしました!  作者: 来宮奉
装甲騎兵〈音止〉
31/303

帝国軍強襲上陸作戦

 野営地に戻ったツバキ小隊は、装甲輸送車両を戻すと哨戒ルートの策定を始める。

 辺りの海岸線は深く入り組んでいるので最も岸壁の低い海岸線はもちろん、それ以外にも死角となる海岸線を哨戒する必要があった。

 監視塔を建てては居るがレーダー妨害装置やステルス機構を使って小部隊を投入してくる可能性もある。


 哨戒ルートを決定するとまずは全員で哨戒ルートを確かめながら回り始める。1周まわるのにおおよそ2時間。どんよりとした空模様の中、1周して監視塔前に集合すると時刻は15:00を示していた。辺りには霧が出始めていた。

 監視塔から一番近い防風林に入って休憩をとると、今し方周回したばかりの哨戒ルートについて隊員同士所感を話し合う。

 それから哨戒を担当するチームを決め、交代制で24時間監視をする態勢を整え、最初のチームが哨戒へ向かおうとしたところ、フィーリュシカが手を上げた。

 意外な人物の挙手にタマキは驚きながらも指名する。


「なんでしょう、フィーさん」

「霧の様子がおかしい」

「霧……? そういえば随分と霧が濃くなりましたね」


 防風林は霧で覆われ、すっかり視界も狭くなっていた。

 タマキは隊員達に海岸へ向かうので着いてくるように言うと、岬に設置した監視塔の元へ真っ直ぐ進んだ。

 濃い霧で視界不良となりながらも隊員達は密集して前を進む〈R3〉の尾灯を頼りに1列で進んだ。

 タマキの停止灯がともると全員そこで停止した。既に監視塔の前まで来ていた。


「かなりの霧ね。風もまだ強い……。このあたりで濃霧は珍しいはずだけど」


 気象状況を確認したタマキは過去の気象データを参照して首をかしげる。


「サネルマさん、監視塔の装置が正常に作動しているか確認して」


 サネルマは返事をすると監視塔に設置されたレーダーと警報装置の動作確認を始める。


「この霧じゃ海に何か浮いてても分からないぜ」

「海岸線沿いに設置型偵察機敷き詰めるしかありませんわね」


 イスラとカリラは霧に覆われた海を見て軽口を言い合う。試しに海を見下ろそうとしたナツコだが、目を細めて〈ヘッダーン1・アサルト〉に取り付けられた高倍率カメラを使っても、夜間カメラに切り替えても霧のせいで海を見ることは出来なかった。


「こちらツバキ、アントン基地へ。哨戒地域に濃霧が発生している。気象情報を確認して欲しい」


 タマキは無線機で大隊本部へと連絡を入れる。大隊からは直ぐ返事があり、確認のためしばらく待てと指示がされる。

 その間に、タマキは〈C19〉に搭載された戦術レーダーを起動。反応はなし。

 サネルマの確認した監視塔のレーダーも異常なく稼働していた。


『アントンからツバキへ。気象情報を確認。海岸線沿い広範囲にわたって濃霧が発生している模様。異常気象と思われる。ハイゼ・ブルーネへ確認中』


 連絡を受けたタマキは了解だけ返して、濃霧に包まれた海を睨む。


「何かおかしいわね」

「無線傍受装置を試してみては?」

「良い意見です」


 フィーリュシカの意見にタマキは頷いて、無線傍受装置を起動する。

 周波数帯を走査していくが、入ってきたのは細かいノイズだけだ。

 レーダーも無線傍受装置も辺りに敵の反応がないと告げている。しかしタマキは突如現れた不自然な霧に対する疑念をぬぐえなかった。


「上から見てくる?」

「いえ、危険です。滞空偵察機を飛ばしましょう」


 リルの提案を断ると、タマキはナツコへ滞空偵察機を海に向けて射出するよう命じる。


「向こうで良いですか?」

「はい、方向はそちらで。高度は自動設定で構いません」

「分かりました。射出します」


 汎用投射機に滞空偵察機をセット。滞空偵察機の設定を自動にして、火器管制から汎用投射機を呼び出す。投射距離を最大にすると指定された方向へ向けて仮想トリガーを引く。

 射出機から勢いよく放たれた滞空偵察機は霧の向こうに飛んでいき見えなくなった。

 ナツコは滞空偵察機からの反応を待つが、一向に応答が無い。


「す、すいません。失敗したかも知れないです」

「不良品か? それともナツコちゃんのミスか――」

「イスラさんからかわない。サネルマさん、お願いします」


 次いでサネルマが汎用投射機に滞空偵察機をセットして、ナツコと同じように霧の中へと向けて射出する。

 しかしいつまで経っても滞空偵察機からの信号が返ってこなかった。


「あれ? おかしいですね」


 2機連続で応答無し。1機が整備不良で応答無しなら偶然かも知れないが、偶然が2度続くとしたら――


「ナツコさん、滞空偵察機を。こちらに向かって最短距離で」

「は、はい!」


 ナツコは滞空偵察機を汎用投射機にセットすると、言われた通り投射距離を最低に設定して、タマキの方へと向けて射出した。

 滞空偵察機はタマキの手前で止まり、空中に浮かぶと信号の送信を始める。


「反応有り。これは不良品じゃ無いみたいですね」


 滞空偵察機から偵察情報が返ってきてナツコはほっと一息つくが、タマキは滞空偵察機を機動状態のまま掴んで、ナツコへと手渡す。


「このまま通信切らないように霧へ向けて射出して下さい。反応が返ってこなくなったら合図して」

「はい。やってみます」


 滞空偵察機を起動した状態のまま汎用投射機にセット。滞空偵察機の電源が入りっぱなしだと注意が表示されたがナツコは無視して、投射距離を最大に設定。霧へと向けて射出した。

 射出された滞空偵察機は霧に隠れて徐々にその姿が見えなくなっていく。100メートル進んだところで反応が途切れ、ナツコはタマキに合図したが直ぐ再接続される。

 しかし滞空偵察機が霧の向こうに完全に消え去ると、信号も全く返ってこなくなった。


「反応無し。消えちゃいました」


 ナツコの報告にタマキは今この海岸で何が起こっているのか推定する。

 突然発生した異常気象と思われる濃霧。レーダー、無線傍受機に反応無し。霧の中に撃ち込まれた滞空偵察機は通信が途絶。ここから導かれる答えは――


「霧状の広範囲ジャミング装置?」

「嘘だろ? そんなの聞いたことないぜ」


 イスラは否定したが、タマキは可能性がある以上報告の必要があると、大隊本部へと無線連絡を入れる。


「ツバキからアントンへ。周囲に発生している濃霧が電波を遮断している。帝国軍の新型ジャミング装置の疑いあり。オレンジの使用を進言します」


 無線内容をきいて、イスラとカリラは互いの顔を見合う。


「オレンジって聞いたことあるか?」

「分かりませんわ。統合軍でのみ通じる暗号かしら?」


 2人の会話はタマキにも聞こえていたが、タマキは答えず無線の返信を待つ。

 やがてアントン基地からではなく、ハイゼ・ブルーネ基地を発信元とした通信が入る。


『ハイゼ・ブルーネより展開中の全統合軍部隊へ。海岸線沿いに不可解な霧が発生している。これよりオレンジを実行。海岸線付近の部隊は暴風に備えよ』


 連絡を受け、タマキは素早く次の指示を出す。


「ツバキ全機防風林へ待避。急いで」


 タマキは指示を出すと同時に防風林へと移動する。隊員達もその後に続き防風林の深くまで入った。タマキは隊員にその場を掘るように命じて、出来た縦穴に隊員達を伏せさせる。


「で、結局オレンジって何なんだ?」


 伏せた姿勢のままイスラが問うと、タマキはようやく答えた。


「TB爆弾です。広範囲を爆風衝撃波で攻撃する戦略兵器」

「爆風って、そんなに凄いのか?」

「軽装甲〈R3〉なら風圧だけで圧死する程度には。来ましたね」


 タマキの指揮官端末にTB爆弾を搭載した戦略ミサイルの飛行経路が表示される。直ぐに隊員達ともデータリンクされると、各機のメインモニタ内に殺傷範囲が赤く表示される。

 殺傷範囲はおおよそ半径800メートル。海上で爆発するためツバキ小隊のいる防風林内は即死するようなことは無かったが、それでも風速50メートル以上の暴風が予想され警告が表示されていた。


「戦略ミサイルなんて今時撃っても落とされるから撃たないって聞いてたけど」


 イスラが問いかけるとタマキは面倒くさそうにしながらも答える。


「その通り今時撃ちません。撃ったところで迎撃されるのが目に見えてますから。

 ですがこの状況では別です。帝国軍は姿を隠すため広範囲に電波を遮断する霧を撒いています。こちらから見ることは出来ませんが、向こうからも同じ。つまり、飛んでくるミサイルを迎撃はおろか、見ることすら出来ません」

「なるほど。広範囲ジャミングは諸刃の剣ってわけね」

「そういうこと。どれほどの規模で攻めてきているのか分かりませんが、1発貰ったら引き返すでしょう。そろそろ爆発します。ツバキ各機、酸素マスク着用。深く伏せて」


 ツバキ小隊は全員酸素マスクを着用し、地面にぴったりと機体を押しつける。

 タマキは指揮官用端末を確認しいよいよ爆発が迫ると同じように深く伏せた。

 メインモニタに表示される着弾時刻を見て、カウントダウンを始める。


「爆発から20秒は動かないように。なるべく息も止めて。着弾まで20秒……15秒……10、9、8、7、6,5,4,3……」


 カウントを3で止めたタマキは息を大きく吸って止めた。

 爆発が分かっていたので〈R3〉のヘルメットが音響遮断を既に作動させていて爆発音は聞き取れない。

 しかし爆発から数秒後にはツバキ小隊が伏せた防風林にも暴風が吹き荒れ、荒れ狂った風が針葉樹を根こそぎ吹き飛ばす。

 枝や小石が銃弾のごとく隊員達の上に降りかかったが誰1人決して動かず風が通り過ぎるのを待つ。


 やがて風が収まると、タマキはゆっくりと体を起こした。

 機体の損傷は無し。爆発による熱風のおかげで周囲の気温が38度まで上昇していたが〈R3〉の活動は問題なし。


「爆風は通り過ぎました。皆さん、ゆっくり体を起こして。酸素マスクはつけたままです」


 起き上がると同時に酸素マスクを外そうとしたナツコはタマキの言葉で慌ててマスクを付け直す。


「各機、機体状況を報告」


 タマキが指示をすると、サネルマから出撃コード順に機体状況を報告する。機体は全機損害無し。


「少し待って。酸素マスクは外してもいいです」


 タマキは隊員達に待つよう指示すると信号の受信を告げ不規則に点滅する無線を繋いだ。


『……ち…………トン。…………キ……』


 TB爆弾による副次的な効果で電波が乱されている。タマキは周波数を変えながら、着信している通信内容の確認に努める。


『こち……ントン。ツバ……応……せよ』


 断片的に聞こえる情報から内容を推定しタマキは応答した。


「ツバキからアントンへ。通信は断片的。繰り返します――」


 こんなことなら最初に有線通信網を確立しておくのだったとタマキは後悔したが今更そんなことを言っても仕方が無い。繰り返し通信を試みて、ようやくTB爆弾による電波錯乱が収まりを見せると不明瞭ではあるが会話が可能なレベルの通信が入った。


『こちら……ントン。ツバキ応答せ……』

「ツバキからアントンへ。聞こえていますが未だ通信は不明瞭」

『アントンからツバキ。……囲を哨戒、敵を確認……よ』

「ツバキ了解しました。哨戒に向かいます」


 タマキは通信を終えると待機していた隊員へ指示を出した。


「これから敵の確認へ向かいます。目視確認となるのでくれぐれも気をつけて。2列縦隊、低速で進みます」


 隊員は返事をして、倒れた木々をまたいで進むタマキに続いた。

 タマキは戦術レーダーを起動したが未だに電波状態は悪くノイズだらけだった。苦労して建てた監視塔も、主柱だけ残して後は吹き飛ばされている。


「さてさて、敵さんの陣容はどんなもんかな?」

「ま、こんなへんぴな基地。おそらく先行偵察の小部隊でしょうけど」

「作戦中におしゃべりは止めて」


 おしゃべりを指摘されたイスラとカリラは肩をすくめて見せたが、素直に返事をして口をつぐんだ。


「各機姿勢を低く。これからステルス機構を使います。全機密集して、わたしから決して離れないで」


 指揮官機に搭載されるステルス機構は周囲の機体をレーダーから隠匿する装置だ。隠密行動には重宝するが、機構自体が非常に高価であり、作動には大量のエネルギーを消費し、また戦術レーダーや無線機とは同時に使用することが出来ない。

 タマキは戦術レーダーを一時的に停止させた。それからステルス機構にエネルギーパックを2つセットすると即座に作動させる。ステルス機構を冷却するチリングタワーが展開され、高周波の耳障りな音が響く。

 ステルス機構範囲内の味方機には、ステルス機構作動中の情報が表示された。


「もうすぐ海が見えます。霧は晴れているので目視可能なはずですが、見えると言うことは射線が通ると言うことです。くれぐれも細心の注意を」


 監視塔を設置した岬へと近づき、いよいよ遠くに水平線が見えた。

 そして直ぐにズナン帝国軍の艦船も発見された。


「敵船発見。頭だけ。数は不明」


 最初に報告したのはフィーリュシカだった。タマキは停止を命じようかとも思ったが、それより先に自身の目が敵船を確認した。

 海の上に伸びる帝国軍艦船の艦橋。

 こんな北の海まで巡視船を連れてきたのかと、好奇心から更に前へ進む。すると霧の晴れた海が目の前に広がった。


 ツバキ小隊の全員が、どこまでも広がる海を見た。

 そこでは海を埋め尽くす程無数の船が、まるで1つの生物のように同じ方向を向き、ひとまとまりになって進んでいた。生物はどんよりとした鉛色の雲と同じ色をして、切り立つ岸壁に食らい付こうと黒煙を上げながら動き続ける。


「ツバキ全速後退!」


 予想を遙かに超える敵船団を目の当たりにしたタマキは驚愕から一瞬体が固まったが、我に返ると即座に後退命令を出す。

 隊員達もタマキの命令を受けて緊急後退した。ナツコだけ遅れたが、フィーリュシカがナツコの機体を後ろに引いて後退を促すとその後に続いた。


「ツバキ全機、戦闘態勢。武装の安全装置解除。ツバキ4、先行して装甲輸送車両まで戻って、車両の準備を」

「ツバキ4、了解した。先に戻るよ」


 タマキの命令を受け、イスラは隊列を離脱し野営地へ向かった。

 タマキは海岸線から木々の倒れた防風林に入るとステルス機構を解除。アントン基地へと通信を入れた。


「ツバキよりアントン。応答願います」


 返ってきた応答にタマキは先ほど見た光景を報告した。


「海岸線よりおよそ1キロ地点。帝国軍大船団が接近中。戦力は8000以上と予想。撮影データを送信します」


 タマキは〈R3〉の録画していた先ほどの映像データをアントン基地へと送信。映像はアントン基地から直ぐにハイゼ・ブルーネ基地に送られ、敵戦力の分析がなされるだろう。

 ハイゼ・ブルーネ基地の反応は早く、すぐさま全体向けの通信がされる。


『ハイゼ・ブルーネより所属する全ての統合軍へ。現在、地点〈AD-02〉へ向けて帝国軍侵略旅団と予想される船団が接近中。各員迎撃態勢に移行せよ』


 タマキの概算は敵戦力8000だったが、ハイゼ・ブルーネ基地の戦力分析の結果は敵戦力12000と出た。対するハイゼ・ブルーネ基地戦力は全て合わせて4500程度。

 水際防衛作戦の上、海と陸地は険しい崖で隔てられている。勝機があるとすれば、帝国軍が海上に居るうちに可能な限り戦力を削り取らなければならない。

 ハイゼ・ブルーネ基地の連隊砲、各前線基地の大隊砲が海上の敵船団位置へと向けて砲撃を開始。砲弾を雨霰の如く降り注がせる。

 戦闘開始と同時に、ツバキ小隊へとアントン基地から命令が下った。


『アントンよりツバキ。歩兵部隊が向かうまで帝国軍上陸を阻止せよ』

「ツバキ了解しました」


 近くの野営地から歩兵中隊が援護に到着するまでおよそ10分。既に帝国軍の船団は海岸線直下、崖下に到達しつつある。極めて困難な命令だが、軍人である以上従わなければならない。

 不安が伝わらないようタマキは声を落ち着けて隊員へと命令を発した。


「ツバキ、これより海岸線の防衛を開始。帝国軍の上陸を阻止します」


 隊員達はいよいよ迫った戦闘に表情を強ばらせながらも頷き返事をする。1人装甲輸送車両に向かっていたイスラだけが場の空気を察せず問いかけた。


『こちらツバキ4。戻った方がいいかい?』

「こちらツバキ1。ツバキ4戻らなくて結構。そのまま車両の準備を。野営地に到着次第、無線中継機の回収願います」


 イスラからの返事を受けたタマキは隊員を移動させ、防風林に掘った穴の前に倒れた木々を並べて仮設の防衛陣地を築かせる。

 仮設防衛陣地は直ぐに完成した。タマキは隊員を陣地内に配備し、サネルマに対空レーダーを使うように指示すると自身も戦術レーダーを起動する。

 それから海岸線を注視しつつ、隊員達に語りかけた。


「これから戦闘が始まります。正直訓練は十分とは言えませんが敵はこちらが準備を整えるのを待ってくれたりはしません。今出来ることをしなければ敵の思うがままトトミ星は蹂躙され、そうなってしまってはハツキ島を奪還することもかないません。

 中途半端な装備、不十分な陣地、頼りない上官。不安ばかりでしょうが、これより先はわたしにあなたたちの命を預けて頂けますか?」


 問いかけに対して緊張していた隊員達は表情を和らげて応じる。


「当然ですわ」

「上官の指示に従うのが軍人の義務」

「隊長さんを信じています」

「今だけは頼りにしてるわ」

「タマキ隊長が着いていてくれたら安心です」


 1人遅れて、無線機から返答する。


『あたしはいつだって、少尉殿に命を預けていたさ』


 イスラのふざけた答えに、タマキは口元に笑みを浮かべた。それから隊員へ真剣な眼差しを向ける。


「ありがとうございます。皆さんの命、預からせて頂きます」


 隊員が頷いてみせると、タマキは火器管制装置を主武装に繋ぎ海岸へと12.7ミリ機銃を向けた。


「ツバキ、射撃用意――」


 防衛陣地に籠もったツバキ小隊の隊員は、その指示で一斉に主武装を海岸方向へ向け、仮想トリガーに指をかける。

 張り詰めた、息の詰まるような時はほんの一瞬だった。

 サネルマの対空レーダーが敵機を捉え、各機メインモニタに敵機発見のアラートが表示された。


「――攻撃開始!!」


 タマキの一声で、ハイゼ・ブルーネ基地を戦場とした統合軍4500と帝国軍12000による地上戦の火蓋が切られた。


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