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ウェイク  作者: タロト
1章 崩壊と後悔
2/8

第1話 崩壊

主人公 佐藤冷治 高校2年生

      杏奈 中学3年生。冷治の妹。

    寺西 真 高校2年生。転校生?

    虎山 咲 高校2年生 冷治の幼馴染

階段を一段一段降りていく。

目を瞑り、足の感覚と、手すりだけを頼りにして。

まるで世界がそこまでしか無いような感覚。

1歩踏み出す度に後ろの世界が消滅し、また新しい世界が想像される。足の裏は冷たく、肌に触れる空気もまだ冷たい。

と、急に段差に起きた異変に前に転びそうになる。そう、一番下に着いたのである。


「何やってんの」

突然に横から怪訝そうな少女の声が聞こえる。


目を開けた時に入ってくる、久方ぶりの光に耐えながら声の方向を見ると、ソファに座った黒髪の少女が静かにこちらを軽蔑の眼差しと共に一瞥している。


この生意気な少女は、妹の杏奈。

眠そうな目を擦りながら、キャラメルキャンディを咥え前に項垂れ、寝癖で頭を荒いリーゼントのように前に伸ばした姿は、さながら明日の〇ョーの最期のような姿である。


「うるさい」

軽く睨みつけながらキッチンへと向かう。冷蔵庫を開けた俺は朝食の調理に向かった。


目玉焼きとベーコンという、「the 朝ごはん」というような代物は、現実逃避を目論む俺を、このげんなりする現実に重力を与えて逃さないようにしていた。


今日の目玉焼き占い(目玉焼きを黄身が硬くなったと思ったその瞬間にひっくり返し、黄身が漏れなかったほど運が良いという俺のオリジナルの朝の占い)を終えた俺はそのままダイニングのテーブルへ向かう。


「ねぇ、今日だけ私のシェフになってくれない?」

「朝ごはん作れってか?嫌だ。」

「流石~分かっていらっしゃる…ってえぇー!」


きちんと、文の意味を理解してから答えろ、と始めの反応がおかしかった妹を心の中で毒づく。

彼女は、ぶつぶつ呟きながら渋々キッチンへ向かった。それを見ながら、今日の朝ご飯を頂く。


真っ黄色になったそれは、ベーコンの横で就職難に震えるホームレスのようにプルプルと震えながらこちらに何かメッセージを訴えかけていたが、塩胡椒により口をつむがれていた。

本来は貴様は出てきてはならぬのだ。

大人しく真ん中で待機していればそんな砂嵐から奇跡の生還を果たした奴みたいにならなくて済んだのだ。

表面を見れば明らかに塩辛いことがわかる(俺にとってはそれくらいが美味しいのだが)ので、あえてひっくり返す。

盗人対策のトラップである。


朝の支度を終えた俺は玄関へと向かう。靴を履き終え

「行ってきます」

と、返事のない言葉を呟きながら、上から降りてくる母親の足音と、を聞きながら家を出る。

最後に、奥の方から「かっっっら!!!!!」という声がドアを閉める前聞こえた気がした。


「鬼ごっこしていこー!」

「うん!!」

行き道の小学生を見て口元が緩む。

そういえば俺も小学生の頃の行き道は、鬼ごっこしてたっけ?並より上程度の身体能力を保有している俺は、走りが苦手な奴らを他所に、鬼ごっこをエンジョイする事が出来た。


「そうそう。あのバラバラ殺人事件。また、起こったんですって!」

信号待ちで右横の中年の夫婦が話している。

妻はしきりに話しており、夫はスマホで恐らく株価であろうグラフを気にしている。

「今月に入って三回目よ!怖いわねぇ。」

「あぁ、うん。」


そのニュースなら俺も知っている。

確か、名前の通り、被害者がバラバラにされて発見されることからその名がついている。

始めは、栃木県の公園。発見者は地元の主婦で、犬の散歩中に公園の林で、犬が吠えた場所を見てみると、20代くらいの男性が四肢を切断されて、まるで子供が遊んで壊した玩具のようにバラバラな状態で発見されたらしい。

続いて山梨の山道。同様の手口にあっている。

警察は、その頃はたまたま2件同じような事件が起こっただけと、言っていたが、次に茨城で同じ事件が起こると、主張が変わる。

模倣犯がおり、同じような手口で殺したという結論に達した警察は、その後全国で一週間に一度のペースで同じバラバラ死体が発見されるようになった為、また主張を変えるハメとなる。カルト宗教的な集団による集団的殺人であると発表した。

ところが、である。なんと、そこから逃げ終えた1人の少年が見つかったのである。

その少年に聴取をすると、目撃した犯人は集団ではなかったというのだ。


少年は学校では不良らしく、その日も学校をサボり、立ち入り禁止の廃マンションに行っていた。

すると、上から音が聞こえ、気になった彼は、音を立てずに一階上に向かい、ゆっくりと上を伺うと、

二人の人間が見えたという。


と、その時突然に片方がもう片方に襲いかかった。自分が危険な現場に居合わせていると一瞬で理解した少年は逃げ出そうとするが足に力が入らない。目が釘付けとなったまま見ていると、襲いかかったと思われる方が倒れ、襲いかかられた方が倒れた方に近づき、そのままノコギリのような道具で身体を分解していったという。


「怖くなって、やっと「うわぁ!!!!」って悲鳴をあげるとその人がこっちに気づいて一言言ったんです。

「だぁれ?」って。脅すような言い方ではありませんでした。むしろ優しいような。でもそれを聞いた瞬間に身体中に悪寒が走りました。そしてそのまま逃げたんです。」


左横の女子高生が持っているスマホでは、金髪でチェーンをつけた少年が、その風貌に合わない顔で怯えて報道陣の質問に答えている。

今どきちゃんとニュースをチェックする学生なんて珍しいなと同世代のJKに心の中で賛美を送りつつ、

イヤホンつけろや!と、心の中では苦情を言うが、横断歩道を渡り終えた頃にはもうそんな事はどうでもよくなっていた。

その時に、すれ違った少年が自分の目を見てニヤついたことなんて、気づく由もなかった。


高校が視界に入る。


校門前で生徒会が挨拶を呼びかけていたが、皆それは空気のように扱っていた。


「すみません!」

突然何者かが後ろから声を掛ける。


誰だ?


振り返ると、白髪のルックスの良い少年が困った顔でこちらを見ている。

制服はうちの高校のものではなく、見ない顔だった。


「あの、藩田西高校ってここで合ってますよね?」


「...はい、ここですけど?」


「そうですよね!僕転校初日で!助かりました。」


なんだ。転校生か。

どうやら、この高校の制服を着ている俺に確認を取りたかったらしい。


「いいよ、これくらい。じゃあね。」


立ち去ろうとする。


「あ、待ってください!」


途端に引き止められる。


「な、なんですか?」


「僕今日最初に校長室に行かなくてはならないんですけど、そこまで連れていってくれませんか?」


まあ、忙しい時ならこのイケメンはどうせ女の子とかすぐ捕まえて案内してもらえるだろうし、放っておくが、今は特段急いでもいない。


「いいですよ。」


「本当ですか!恩に着ます!」


くそ。笑顔が美しすぎる。

顔を直視しないようにしないと俺の眼球は少なくとも今日の夜までこの美少年の顔を記憶していそうだったので思わず目を逸らす。


「じゃあ、行こうか。」


「はい!」


この時は気がつかなったが、そもそもおかしかったのだ。視界に入るほどで、近くに行けば高校の名前ぐらい見られたのに、このような質問をしてきたり、やけに俺に近づいてきたり。


俺の運命はこの日を境に大きく変わることとなる。



高校を見上げると、高くそびえ立つその校舎は歴史を感じさせた。

俺の高校、藩田西高校は、割と有名な進学校であり、数々の著名人を輩出しているからか、年々志願率2.2倍をキープしている。



「へえー、君も2年なんだ。」


「はい、そうなんですよ。親の仕事の都合でこっちに引っ越しちゃいましたけど、ちょっと前まで富山にいて...。」


「じゃあ、同学年だね。おれは2の3の佐藤冷治。」


「お、ぼ...すいません噛んじゃって。僕は寺西真。よろしくね。」


なるほど、敬語ってのは自己紹介で外すとナチュラルなのか。

学ばせてもらったよ、イケメンくん。


「じゃあ、ここが職員室だから。」


「うん。ありがとね。今日から友達ね!」


「おう。」


嬉しそうな顔を見届けてから、おれは自分の教室に戻ろうとする。


「あ、最後に!」


呼び止められる。

まだ何かあるのだろうか。


「俺見て何か気づくことある?」



いや、特にない。

なにか手品でもするのだろうか。


「わからないって感じの顔だな。Ok。なんにもない。」


「...?じゃあな...」


なんだ、こいつ。

この変な転校生についてはあまり考えてもわからなそうだ。

俺は、思考を切り替え、教室へと戻った。




教室のドアを開けると、一瞬近くの女の子と目が合うが、すぐに自分たちのグループの会話に戻った。

友達に軽く挨拶をし席につくと、


「おはよう」


と爽やかな声が聞こえる。


「おはよう」

と、俺が返したのは隣に座っている、短髪の少女。

軽い日焼けは、彼女の陸上部での努力を彷彿とさせた。


彼女は、幼馴染の 虎山こやま 咲。


幼馴染であり、同じクラスのこいつは、色々な因縁と、思い出の共有者である。異性であり、気にした事もあったが、今はそんな感情もない。


スポーツ万能だが、軽く抜けているような彼女は男子では賛否両論であった。

顔は比較的整っている方であるが、恐ろしく周りを気にしないところがあり、男子の前でも女子として崩壊するレベルの変顔を出せたりするので、性格はさっぱりしていて良いのであろうが、あまり恋愛対象に出来ないというのが、男子の相場である。


「あー、今日宿題なんだっけ?」

「してねぇの?」

「いや、してるけどさ、確認。」


日常。そう、平和な日常である。

平和というのはある人が一生をかけて求め、ある人が自ら捨て去る、不思議なものだ。


俺にとっては、このくだらない日常の気だるさを生む元凶そのものだった。


平和というのは、非生産性であると言えるのかもしれない。ぬるま湯からは抜け出そうとは思わない。そこが到達地点だと思えるからだ。

逆に熱湯からは、氷水からは何としてでも抜け出そうとする。そんな、そんな真剣になれる何かが欲しかったのかもしれない。


それは、現実に絶望を感じた者がゲームやアニメ等のフィクションの世界に逃避しようとするのと同じ想いだった。ただ、何か。自分が主体として生きている実感を追い求めていた。


「あ、先生来たんじゃない?」

「あぁ、おう。」


あぁ、いつもの日常が始まる。

静かに、ゆっくりと我々を運ぶ舟。

我々は、何もせずただそれの範疇で一喜一憂するのだ...。


全員が自分の席に戻る。

俺と咲は元々の席なので、移動は必要としない。


顔を机の上の腕枕に押し付ける。

どうせ教師が教室に入ると共に、我々は起立を要求されるので結局俺の眠りは長続きしなさそうだが。


生暖かい吐息が、机を反射し自分にかかる。

腕枕と俺の頭の間にできた秘密基地は、湿気が100%となり、机の上に水滴ができるのを感じていた...。


...遅くね?


顔を上げると、横向きであったため咲の顔が目に入る。

何かを凝視して固まっているようだ。


軽く見渡しても他の連中もそうだ。

一体何を見て...?


咲の視線を追う。


すると、教室の入り口に立っている少年の姿が目に入る。

少年は白髪を軽く揺らしながら辺りを見渡していて、こちらを見つけると途端に笑顔になる。


次の瞬間思考が止まり、ただ彼の姿を見る他なかったのは、彼の手に握られていた物のせいである。


ふしゅうううううぅぅぅうううう


炭酸飲料の缶を開けた時のような音が辺りに響き渡ると、その少年の周辺は赤黒い液体の色に染まった。


それは勿論彼の白髪も例外ではない。

赤く染まった髪を後ろにかきわけながら彼が呟いた、「じゃじゃあーん!!」という声が引き金となったように、女子の悲鳴のサイレンがなった。



それは、俺の嫌いだった日常の終了のホイッスルであり、俺の過酷な未来を告げる鐘の音であった。

実はこれ、90%完成した後にページを再読み込みしたら、消えちゃってて、も一回書き直したやつなんですよねww。みなさんも書く人は気をつけてくださいねー。泣泣



(((ボソちなみに今日誕生日でした

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