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82.悪性変異

残暑。1字ずつ分けると、残った暑さ。

しかし、この暑さは残り物のレベルじゃねぇ。

下手を打ったら真夏より暑いかもわからん。


「藤やーん。こんだけ暑いの続くんなら、ここで透けブラを……」

「滝に打たれて煩悩を消せ。涼しいぞ」

「めんご……」


いつものボケをかます翔も、全体的にしなびている。

だが、ずっとそのままでいる訳にもいかない。

何せ、2学期はイベントが目白押しだ。その合間には中間テストもある。

どうせならイベントは楽しみたいし、テストも乗り切りたい。

そういう意味では、体力勝負だ。


「怜二、ちょいとこっちに」

「何だ?」


突然、サルに声をかけられた。

あ、情報色々サンキューな。役立たせてもらったぜ。


「少々お伺いがごぜぇます。まず夏祭りの件。……お前、いつの間にあそこまで行った?」

「何が?」

「水橋だよ。浴衣コンテストでイチャつきやがって。

 というか、水橋がああいうキャラだって知らんかったぞ」


それか。こいつも夏祭り来てたらしい。しかも浴衣コンテスト見られてる。

これは面倒……いや、むしろ逆だ。ここはこいつを使おう。


「あれは演技。浴衣コンテスト出てみたいってことで、相手役任されただけ。

 ちょっと演技が過剰に入ってた感じはしたけど、合わせることにしたんだよ」

「やっぱり? だよな! いくらなんでもトントン拍子すぎるもんな!

 けど、よく照明から守ったな。水橋もトキめいただろ。釣り橋効果あるだろうし、

 今がチャンスじゃね?」

「そんな形で彼女に出来ても嬉しくないし、すぐ別れるだろ。

 あれは不幸な事故だし、今後引き合いに出すつもりは一切無い」

「もったいねーなー。こじらせやがって」

「言ってろ。そういう訳だから、何も変わって無い。

 それでなんだけど、もしかしたら勘違いしてる奴他にもいるかもしれないから、

 それの打ち消し、頼めないか?」


サルは情報を集める、情報を売る他、情報を流すことも得意。

『情報』と名がつく事柄に関して、こいつの右に出る奴はいない。


「いるにはいるし、できねぇこともねぇけど、何で?

 そのままにしておいた方がよくね? 流れでカップルもあるぞ?」

「だから言ったろ。俺はそんな形で彼女になっても嬉しくない。

 水橋が変な勘違いされるのも嫌だし、その辺任せた」

「そうかい。ま、そこまで言うなら適当にそれっぽく上書きしとくわ。

 300円で」

「……ほら」

「まいど!」


これでよし。サルは基本的に損得勘定でしか動かないから、

金さえ払えばきちんと動いてくれる。ということで、この件は一任しよう。




「怜二、すまん。堪えられなかった」


休み時間に、秀雅が来た。謝った理由はプールの件を話したことだろ。

別に謝る必要はない。むしろ、俺が謝らねば。


「プールの件だろ? 陽司から聞いた。謝る必要はねぇよ。

 俺こそ、気ぃ使わせちまって悪かった」

「何言ってんだ。余計な真似だったら言ってくれ。

 もうやっちまったことだけど、これからは黙るから」

「余計な訳あるか。一応聞くけど、どこまで広めた?」

「陽司と翔とサル。陽司は勿論、翔もこの手のことで大きく動くことはないし、

 サルには透に流さないように頼んどいた。

 あいつもあいつで、透には思うところがあるらしい」


意外だな、あいつが損得以外で動くとは。おこぼれ狙いは諦めたのか?

それとも、そこまでして透に従う理はないと見たのか。

いずれにしても、サルは口軽いから心配だが。


「やっぱりさ、透は一回痛い目みるべきだと思う訳よ。

 怜二の優しさは長所だけど、言い換えれば甘ちゃんだ。

 あのままじゃ、プールの時みたいなことがまた起きてもおかしくねぇ」

「そうだな、もっと深刻に考えるべきだった」

「分かってくれるか。……じゃ、そういうことで宜しく」


透は、男友達も多かった。それが今じゃ、嫌われつつある。

今までは、こういうことになったらそれを教えたし、フォローもした。

でも、今となってはそんなことをする義理もねぇ。


あいつは、どこまで堕ちたら気付くのだろうか。

脇役を蔑ろにし続けた代償は、高くつくぜ。


(といっても、つけあがらせたのは俺だ)


そのせいで、透ハーレムの女子や水橋に加え、秀雅も苦しむことになった。

これからの俺は、その罪滅ぼしも意識しなきゃならねぇ。

全ての決着がつくまで、俺は自分の愚かさと向き合い続ける。




いつも通りの授業を受け、いつも通りに終える。

ガリ勉になるつもりはないが、成績を落とすつもりも無い。

休みボケが抜けない奴とか、宿題提出の猶予を交渉するような奴にはならない。

これもまた、水橋に似合う男になる為の自分磨きの一環だ。

……何よりもどうにかするべきは、容姿ということは分かってるけど。


「藤田君。あなたは学校ってどうあるべきだと思うかしら?」


秀雅の次は門倉か。透の課題の代筆ご苦労さん。

そういえば、もうしばらくすれば生徒会役員選挙か。

こいつ以外に立候補しそうなのはいないし、信任投票ということになりそうだが。


「どうって言われても。まぁ、教科書っぽい答えをするとしたら、

 社会組織の一つの単位であり、人や社会との関わり方を身につける場所。

 そうあるべきだと思うが」

「その為には、何が必要だと思う?」

「人間関係を円滑にする為の社交性?」

「0点ね。あなたに聞いた私が馬鹿だったわ」

「喧嘩売ってんのか?」


こいつもこいつで、透並にイカれてる。

このままだと俺が引いても、透をつけあがらせることになるから、

こいつもどうにかする必要がありそうだな。


「喧嘩なんて野蛮なこと、私がすると思う? 

 そもそも、争いは同じレベルのもの同士でしか発生しない。

 凡人のあなたと、日々勉学に励む私じゃ、争いなんて起きようがないわ」

「……で、何だ? それとも嫌味言いに来ただけか?」


全てを自分に都合よく捉える透も面倒だが、相手を貶すことしかしないこいつも面倒。

まともな頭持ってるんだったら、それぐらい……




「この学校に必要なものは、規律と秩序。

 私は生徒会役員選挙の公約として、不純異性交遊の禁止を始めとする、

 校則の厳格化を掲げるわ」




………………は?

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