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78.×攻 ○交

互いに好きな曲を歌い合い、規定時間が訪れる。

水橋、何歌っても上手かったけど、ダンスを入れるのはともかく、

「藤田君だけなら」ということで、堂々電波曲ブチ込んだりと、

相当に濃く、そして楽しく、何よりもしんどい時間だった。

終盤は俺、タンバリン持ってきてガヤに徹したしね。

理性を飛ばして、ノれるだけノった。


「楽しかったー♪ 久々に思いっきり声出した感じ」

「俺も」


二人きりのドキドキ? そんなもんなかった。

サシでカラオケするのは、もう当分いいや。


「そういやさ、CRYSTAL(クリスタル)って店知ってるか?」

「この前テナントでオープンした雑貨屋さんだよね」

「あぁ。まだ時間あるし、ちょっとウィンドウショッピングでもしないか?」


これはサルから貰った情報。

ファンシーグッズが充実しているらしく、プレゼント選びには最適とのこと。

今回は俺の目的もそれなりに意識してる。水橋、こういうとこはどうだろう。


「実は、ボクからお願いしようって思ってたんだ。結構気になってて」

「そっか。それじゃ、行くとするか」


思いがけないラッキーが続くな。

ここまで調子いいと反動が怖いけど、素直に楽しもう。




「ふわぁ……!」


着いたなり光が舞った。光源は勿論、水橋の笑顔。

棚に並んだ大小さまざまなぬいぐるみを見て喜色満面のようだ。


「藤田君……これが天国(ヘヴン)なのかなぁ~」

「現世だ。落ち着け」


笑顔っていうか……蕩け顔? 何とも形容しがたい表情になってる。

水橋の知らない顔は今までにも色々見てきたけど、これは……何だ?

下手をすれば人間というくくりからも逸脱しそうなんだが……


「ボク、水とスイーツと漫画あればここで暮らせる~」

「何言ってんだ。そしてちゃっかり漫画を混ぜるな。

「だって、ねこまるの大きい版とか、このテディベアとかもう……

 幸せすぎておかしくなりそう~」

(もうおかしくなってるっての)


極限までふにゃふにゃしてる。ここ、学校の連中いないよな……?

こんな姿見られたら、夏休み明けに何が起こるか分からんぞ……

喜んでくれるかなとは思ったけど、ここまでとは予想外だった。

こうなると別の意味での不安があるけど、予定通りに進めるか。


「なぁ、水橋」

「なぁに~?」

「一個だけなら、好きなの買ってやるぞ」

「……え!?」


今回は、水橋により明確なプレゼント感のあるものを買おうと思っていた。

好みの詳細調査も兼ねて、本人に選んでもらうことにする。

日焼け止めは喜んでくれたみたいだけど、もっと嬉しいのはこういうのと見た。

変に奇をてらわず、スタンダードに攻めてみる。


「いいの!? 本当にいいの!?」

「あぁ。好きなの選べ」

「……それじゃ」


正直、そこのベッドの上に鎮座している巨大テディベアとか、

大型の電子レンジか小さい冷蔵庫ぐらいのサイズのあるぬいぐるみとかになると、

普通に2、3万クラスのもあるから、ちょっと厳しいものがある。

だが、それは既に覚悟してる。下手に制限つけるつもりは一切無い。

ほんの数千円程度で水橋の心を掴もうなどとは……


「ここからここまで全部!」

「一個と言ったよな!?」


相当な大金持ちでも中々言わねぇぞ!?

数万どころか数十万、下手したら数百万飛ぶわ!


「あはっ、冗談だよ♪ そうだなー……これ、いいかな?」


そう言って選んだのは、海の家でのバイトの時に持ってきたぬいぐるみの

ブサカワ猫(水橋によれば『ねこまる』)の絵柄が描かれたマグカップ。

値段はきっかり千円。あれ、そんなのでいいのか?

てっきりさっきの大型テディベアとか選ぶかと……


「あの大きなぬいぐるみとかじゃなくていいのか?」

「丁度、こういうマグカップ欲しいなって思ってたんだ。

 それに、いくらなんでも5桁払わせる気はないよ」

「……気、使わせちまってすまねぇ」

「何言ってるの。……あ、そうだ!

 藤田君も欲しいものあったら、ボクが買ってあげる。

 二人でプレゼント交換しようよ!」

(……マジで?)


こんなことになるなんて、全く考えてなかった。

水橋、お前……


「値段は気にしないでね。それこそ藤田君があのテディベア買ってもいいし」

「買わねぇよ。値段もそうだけど、置き場に困るわ」


今までの俺だったら、断ってたと思う。

けど、折角の好意だし、何より水橋からのプレゼントというのが嬉しい。

こんな幸せが訪れるなんて……明日、雷に打たれて死ぬんじゃねぇか?


「それじゃ……これにするか」


温度計と湿度計を兼ねた、卓上サイズのデジタル時計。

メタリックなデザインで、インテリアとしても映えそう。

オープニングセールのおかげで、価格もトントンだし。


「これカッコいいね。デキる男の時計って感じで」

「何言ってんだ」


水橋と同じタイプのアイテムということも考えたが、それは危ないよな。

ここは素直に、普通に使いそうなものを選んでおこう。

それに、時計を見る度に今日のことが思い出せそうだし……

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