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72.最悪の災厄

「ほうほう、同じ学校なんですか!」

「そういうことなんで、流れで」

「なるほど! ありがとうございました!」


参加者全員のインタビューが終わり、司会者がステージの端に移動する。

そういや、この後の段取り聞かされてないんだけど、何があるんだ?

パンフレットにも書いてなかったし、今回が初回だから、

何があるのか全く知らないんだけど……


「それでは、インタビューも終わったところで、続いてはアピールタイムです!

 アピールの内容は自由! 1組3分の持ち時間で、好きなことをして下さい!

 各参加者のカッコよさ、可愛らしさ、そしてラブラブ度!

 それらを存分に発揮して頂きましょう!」


アピールタイムか。自由演目ってことは、内容を自力で考える必要があるな。

3分となると、そう大したことはできないが、何もしない訳にもいかない。

丁度いいのは何だろうな……


「アピールに使えそうな道具などもありますので、ご自由にどうぞ!

 それでは、カップルの皆さんにはアピール内容を考えて頂く為、

 一旦ステージから下りて頂きます!」


事前準備なしで3分のアピール。……結構な無茶振りだよな、これ。

適当な作戦練るか……




色々と相談した結果、俺が主体のパフォーマンスに軽く寸劇を絡める形となった。

使いどころがないと思っていた筋力が、まさかこんな形で活きるとは。

鍛えといてよかったわ。……ただ。


「これでいいのか?」

「うん。……それに、ちょっと憧れてた」

「ならいいけどよ……」


提案元は水橋。内容聞いた時は驚いた。まさかこんなことができるとは。

人前でやるにはそこそこ恥ずかしいけど、別の案がある訳じゃないし……腹くくるか。


「このライブ終わった後だから、もうすぐだな。

 ……いや、もうすぐって言うには時間がかかり過ぎるか。

「あはは……」


アピール順は抽選で決まった。

箱の中に数字の書かれたボールがあり、それを順に引くという方式。

これを水橋に任せた結果、現れたのは唯一の二桁、10番目。

つまり、大トリを務めることとなった。

とはいえ、全国的な祭りでもないんだし、気負う必要はない。

普通にやって、普通に終えよう。


「ところで、メンタルの具合は?

 憑依してる時はむしろ楽って聞いたけど、今回は場が場だし」

「それは問題なし。というより、藤田君こそ大丈夫?

 ボクが言うのもおかしいけど、その……扱いづらいと思うんだけど」

「気にすんな。キャリア10年の脇役サポートスキルは伊達じゃねぇ」


扱いづらいのは事実ではあるけど、何てことはない。

どんなキャラで何をやるとしても、上手くまとめる自信はある。


「それじゃお願いするね、王子様」

「かしこまりましたよ、お姫様」


俺もこの場に限ってはなりきろう。

恥など捨てちまえ。




「これが俺と!」

「私の!」

「「日々でーす!」」


9番目のカップルのアピールが終わり、いよいよ俺達の番が来る。


「ありがとうございました! それでは、次が最後のカップルです!

 エントリーナンバー8番、藤田怜二・水橋雫ペアー!」


司会の声と共に、ステージ中央に出る。

水橋は完全に憑依状態。後は手筈通りにやるだけ。


「れーくん、女の子は白馬に乗った王子様に憧れるもの」

「また唐突な……今時んな事言うのお前くらいだろ」

「女の子はみんな、お姫様」

「はいはい。で、何が言いたい?」

「馬になって」

「そっち!?」

「冗談。お姫様抱っこ、お願い」


着地時に足を挫かないように、ここで下駄は脱いでもらう。

俺は頭を抱える演技をして……歓声結構あるな。だが落ち着け。


「……マジで?」

「私の王子様は、れーくん。王子様はお姫様と結ばれる。

 だかられーくんは私をお姫様抱っこする。証明完了」

「ボロボロの証明どうも。……仕方ねぇな」


水橋が読んでる漫画にこういうシーンがあったらしいけど、

こうしてまた、水橋の身体に接触する機会が訪れるとは思ってなかった。

それも、仮初(かりそ)めとはいえカップルの(てい)で。


「せーので行くぞ。せー、のっ!」


片膝立ちになった俺の太腿の上に座った水橋が、首に手を回したタイミングで。

右腕を背中に、左腕を膝裏に回して、バランスを崩さないように注意して……と。

無事、お姫様抱っこの体勢になった。


「いえい」


観客に向けて、水橋がピース。大きく歓声が上がった。

発した言葉に反して抑揚のない平坦な声、無表情。確かにいるけどさ、こういうキャラ。


「下ろしていいな」

「まだ」

「……ったく」


そのまま、その場でくるくる回ったり、ステージを歩いたり。

お姫様となった女神様の求めるままに、俺は動く。

これ一本しかネタがないから、一通り動いたら下ろして下駄を履き、

時間を少し余したまま終了という流れ。


「ほら、下駄履け」

「うん」


それなりに盛り上がったし、俺も悪い気は全くしていない。

さて、それじゃ後は礼をして……




『ガタン』という、大きな音が頭上から響いた。




(!?)


それがステージの照明機材が落ちた音だと気付くより早く、落下点に水橋がいると感づいた。


「危ねぇっ!」


そして、そのことを感づくよりも更に早く、俺の体は動いていた。




間に合えと願った瞬間に、照明は大きな音を立てて、叩き付けられた。

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