表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/236

62.トラブルシューター

「……透。どういうつもりだ」


穂積の件は、見えない場所だから何もしないのかと思っていた。

まさか、見える場所でもまともなことしねぇとは。

こいつは何を考えてるんだ。


「まぁまぁ、大丈夫だって。どっかのタイミングで解決するつもりだったから。

 それに、案外いいヤツだったかもしれないだろ?」

「プールも無ければ人もいない、監視員の死角で何をするってんだ?」

「何だろうなー。ゲームとか? あるじゃん、外に出てゲームって」

「市民プールでやるか?」


楽観視……だけじゃなさそうだな。

あまり考えたくは無いが、ちょっと悪意のようなものすら感じる。


「透。お前はもっとお前を好いてくれる女子を大事にしろ。

 いい加減……」

「はいはい分かった分かった。大丈……」

「聞け!」


……もう、流さねぇぞ。

お前の振る舞いは、ずっと前から目に余ってた。

いつまでもお前の思うままに事が動くと思うな!


「……何だよ」

「お前の身勝手で傷つく人がいるんだ。鞠の時だってそう。

 いいカッコしたいだけなら、ハナから出しゃばるんじゃねぇ」

「は? お前何言ってんの? 俺が何したってんだよ」

「言うつもりなかったけど、料研の盗難事件を解決したのは俺だ。

 お前が一切何もしなかったっていうことは知ってるんだよ」


水橋の名前は、ここでは出さない。

言ったら印象変わって、またウザ絡みが始まるかもしれないし。

こいつに関しては、些細なことすら漏らしちゃならねぇ。


「へー。で?」

「期待だけ持たせて何もしない上、人の手柄の横取りまでして「で」?

 お前、自分がどんだけあくどい真似したのか分かってるのか?」

「はいはい。まぁ、そうなんじゃねーの?」

「……ふざけてんのか?」

「さぁ?」


……こいつに対して、反省は求めるだけ無駄か。

だったら、宣言するか。


「透。俺はもう、お前のやること全てを流したりしない。

 このままでい続けたら、その内痛い目見るぞ」

「はいはい。ご忠告どーも。チッ!」


派手な舌打ちだこと。

勝手にしやがれ。俺はもう、お前の尻拭いなんてしねぇ。

水橋のおかげで、俺は俺の為に生きると決めたんだ。




(よかった。何も起きない)


実は不安だった。

透に対してこういうこと言うと、脇役補正で何かしらあるってのが今までだったから。

幸い、足が攣って溺れかけるとかの事態は発生してない。

流れるプールでボーっとしてるくらいの余裕はある。

……俺もビビりなもんだな。


「あの……藤田くん」

「何ですか?」

「透くん、機嫌悪いみたいだけど……何かあった?」


偶然、先輩が近くに来ていた。

ありましたよ。言うわけには参りませんが。


「分かりませんね」

「そっか。折角のプールだし、楽しんで欲しいんだけど……」

「そうですねぇ……」


話だけは合わせておこう。

無用な心配はして頂きたくありませんが、ここは俺の都合優先で。


「あと……さっきは、ありがとう。私、ああいう人って苦手で……」

「ナンパの件でしたら、お礼には及びませんよ。

 というか、もうちょっとまともな理由挙げれば良かったですよね。

 門倉に何か言われたりしませんでした?」

「ううん。でも、さっきのは透くんが引き剥がしてくれたって思ってたみたいだけど」


平常運転の模様で。

俺が何もしなくなったら、透をつけあがらせる要因のNo.1になりそう。


「透くん、私がああいう人苦手だってこと、知ってたはずなんだけどな……

 全然知らない人だったし、ちょっと怖かった」

「お疲れ様です。事故のことは忘れて、楽しみ直しましょうよ。

 折角のプール、ですよね?」

「……うん、そうだね。ありがとう」


透のやらかしで、透以外に被害が及ぶ事例はどうするべきだろうか。

あいつが変わらないままだと、そういったことも多々ある。

透ハーレムの女子ごと見捨てるっていう選択肢は、俺には選べないし、選ばない。


透。痛い目見ろとは言わない。

痛い目を見る前に、自分の振る舞いをなんとかしろ。




「ふー、冷えた」


肩にタオルを引っ掛け、しばし休憩。

流されたり泳いだりして、十分に涼を取り過ぎた。

唇、紫になってねぇかな……ほっとけば元に戻るだろうけど。


「怜二、もう上がり?」

「いや、ちょっと休んでるだけ」

「ん。何か飲みもんいるか? 今日の礼におごるぜ?」

「それじゃ遠慮なく。サイダー頼んだ」

「ほいほーい。いやー、たまにはこういうとこ来るもんだな。

 まさか古川先輩のスク水姿が拝めるとは……」


秀雅は分かりやすくオタクだけど、性格はわりかし外向的。

オープンオタクというキャラは、翔みたいなチャラ男と親和性が高く、

クラスカースト上位に位置することに成功している。

といっても、俗に言う『キョロ充』とも違う。

基本的にいつでも自然体で、誰かに媚び諂ったりすることがない。

だから、秀雅は友達としてはかなりイイ奴、という結論に辿り着く。


(結構充実してるな)


こういう小さな幸せを噛み締めるのは、メンタル保養の一番の基礎。

ここ最近は何かととっちらかってたし、ヒーリングも大事に……


(……したかったんだけどねー)


ついでに目の保養もしようと、視線をズラした先、ウォータースライダーのゴール地点。

門倉の様子がおかしい。まぁ、その理由も同時に見えたけど。


落下時の衝撃で水着がズレた瞬間を狙われたのか、

子供に水着の上を奪われていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ