5.早すぎるルート開放
「ただいまー」
いつも通りカバンを机に置き、いつも通り教科書などを取り出し、
いつも通り……じゃない物を発見。
「何だこれ?」
カバンの横、ポケットティッシュぐらいなら入れられる部分。
普段は空にしてるが、そこに紙が一枚。
広げてみると、そこには。
『藤田君へ。今日の夕方7時くらいに電話して下さい。
090-○○○○-××××』
ラブレター、ではないよな。何の悪戯だろうか。
夕方7時っていうと、今日ならバイトの後か。
一応、かけてみるか。
バイト上がり、歩き回ること数分。10円玉を何枚か入れて、ピ、ポ、パっと。
誰とも知れない相手に、家電や携帯の番号を教える訳にはいかない。
こういう時に、公衆電話は役立ってくれる。
コール音が1回、2回、3回。
4回目が鳴ろうとしたところで、繋がった。
「はいもしもし」
「藤田と言いますが、覚えはありますか?」
電話の向こうの声。
……まさか、と思った。
「藤田君。水橋だけど、何で公衆電話から……」
思わずガチャ切りしちまった俺は、悪くない。
「何も、急に切ることないじゃない」
「悪い。ちょっと理解が追いつかなかった」
家に戻って、改めて電話。今度は携帯で。
思いがけない形で、水橋の番号をゲットしてしまった。
こっちとしては何の心当たりも無いんだけど、何の用だ?
女神様の戯れってヤツなのかね。
「今から言うこと、誰にもバラさないって約束できる?」
……前言撤回。どうも、シリアスな話らしい。
話す相手を選ぶ内容で、何故かは分からんが、選ばれたのは俺。
弱みを握れば、付き合えるんじゃってことも一瞬考えたが、
そこまで俺は落ちぶれちゃいねぇし、そんなことして付き合えても嬉しくねぇ。
事によっちゃバラした方がいいという場合もあるが、水橋の求めてる回答は。
「あぁ、約束する」
これしか無いだろ。
じゃ、お話続けて下さいな。
「信じるよ」
呼吸音が、小さく鳴る。
少しだけ、間が空いた後。
「私……ボクが好きなことは、スイーツを食べながら少女マンガを読むこと。
それから、ゲームセンターに行ったりすることなんかも好きなんだ」
「………………は?」
衝撃的過ぎる事が、告げられた。