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何事も無くとはいかなかったが、初日の勤務が終わった。

時刻は午後5時だが、夏だけあってまだ明るい。

遊びたくなるけど、夕食の時間もまもなく。

本日のお楽しみは、誰かの部屋に集まってゲームでもってところか。


「サル。何か遊べるもの持ってきてる?」

「いくつか。カード系ならトランプと花札、あと人狼。

 ボードゲームなら将棋にオセロに人生ゲーム他色々。

 携帯ゲームは持ってるの一通り用意したぜ」

「よく持ってこれたな」

「事前に荷物の殆ど、爺ちゃん()に送ったし」

「その手があったか。5人だと大富豪辺りが妥当か?」

「いいな。丁度全ランク揃うし。……夕食賭けねぇか?」

「ものによる。他3人が乗るかどうかも分からんし」


順位によって差を出せる夕食メニューとも限らないしな。

事故ると大変なことにもなりかねんし。




「……何で俺はこう賭け事に弱いかな!」

「そのくせ賭け事好きだもんな」


ビリは最初から最後まで大貧民であり続けたサル。おかず2品減。デザート抜き。

1位は俺との同点決勝を制した水橋だった。おかず2品増。デザート2倍。

プレーオフの内容はポーカーだが、基本無表情の水橋相手じゃ無理ゲー。

表情筋一つ動かさず「レイズ」と言う度、無駄に深読みしてドツボにはまった。


「はっはっは。わしの肉団子は絶品なのに残念じゃのう!」

「シゲ爺、ゲストには手加減してくれよー……」


意外……というか、驚いたのは夕食グレードを賭けた大富豪大会に、シゲ爺も参加したこと。

きっちり3位に入り、いつも通りの夕食を確保することに成功している。

その煽りを受けたのは透。最初こそ大富豪だったものの、その後が続かずブービー。

彼が食べるはずだった肉団子は、終始富豪と平民を行ったり来たりだった俺の元に来ている。


「透、私のあげるよ」

「マジで! いただきまーす!」

「あっコラ! テメェずりぃぞ!」


しかしながら、透にはこういう保険がかかっている。

『おかずの譲渡禁止』というルールに頑なに反対した理由の大部分はこれ。

夏休み前の事件はあったが、穂積は依然として透が好きらしい。

恋は盲目と言うけども、何でまたここまで好きになってるのかね。

それはそうと、この場合俺が穂積に何か譲らないとならん気もするんだが……


(やめとこ)


変に空気を読むというか、変な空気の読み方をするのをやめる。

俺はもっと、俺の為にあろうとするというのも、変化の一つ。

透から奪い取った肉団子、俺が美味しく頂こうか。




『お疲れ。ちょっとあったけど、気にすんな』

『難しいね、接客って……』


寝る前に水橋とメッセ。主な話題はやはり、今日のバイトでの出来事。

初っ端からイレギュラー発生するとはね。俺も海水浴場ナメてたわ。


『焦らないで、段階踏んで行こうぜ。

 強引に崖登るより、階段上がった方がラクだろ。急がば回れ、だ』

『うん。最近調子良かったけど、調子に乗っちゃったね』

『そんなことねぇって。というか、今日の件は事故。あれは矢沢さんか俺に流していい。

 色々な人間がいるけど、コミュニケーションの基本は相手のタイプの見極め。

 まぁ、あのタイプはそもそもコミュニケーション不要だけど』

『そっか。教えてくれてありがとう』


ふざけた輩に対して必要なのは、スルースキルただ一つ。

面倒な客に対しては、事務的な対応がベスト。

それでも解決しないなら、上位役職者に引き渡してお帰り頂く。

コンビニでは俺がその上位役職者になることもあるから、対応は慣れてる。

水橋は既に、自分を変える為の行動を自発的にやり続けてるから、

今の俺のやることといえば、こうして躓いた時の話し相手ぐらい。


『話変わるんだけどさ、モスコビー美味しかったね。

 岡地君には悪かったけど』

『元々サルがやろうって言い始めたんだ。気にしないでいい』

『うん。ボク、スイーツに関しては妥協しないから。

 後でレシピ聞いてみようかな。ボクも穂積さんに手作りのお菓子あげたい』

『いいじゃねぇか。明日にでも聞いてみろ。シゲ爺いい人っぽいし、教えてくれるだろ』

『そうだね。……ちょっと、若々しさが嫌な形で出ちゃったりもしてるけど』


うん、それは同意。サルにも多分隔世遺伝されてる。

子は勿論、孫も親及び祖父母のどうでもいいとこばっか受け継ぐというのは定説だからな。


『あんまり続くようだったら、シゲ爺に釘刺しとくわ』

『物理的に?』

『俺を犯罪者にするつもりか!?』

『あはは。ミズハシジョークだよ』


お前結構余裕だな!?

時間さえ経過すればネタにできるのかよ!?


『全く……ま、そんな感じで軽く考えとけ。この場ではそうしてけば何とかなる』

『うん。せっかくの海だし、思いっきり楽しんじゃうね。それじゃ、おやすみなさい』

『はいよ。おやすみー』


水橋がこのバイトに参加するというのは想定外の出来事だったが、それならそれでやれることを。

日々、こういった出来事をフィードバックして、今後に活かしていこう。

まずは面倒な客を練習相手に、スルースキルを身につけてもらいたい。

しかしながら、ヤバい時はしっかりフォローしていきますか。

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