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42.夏休まない

期末テストの結果が返却された。

ヤバい点数を取ってしまうと、夏休みが補習に置き変わってしまうが、

何ら問題ない点数で一安心。心置きなく遊べる。


「雫ちゃんありがとう! こんな点数初めて!」

「ケアレスミスをなくせば、穂積さんは簡単に点数上がる」

「水橋サンキューな! これで夏休みは遊べる!」

「岡地君は基礎から固めれば、ある程度までは取れるから」


何だかんだ、勉強会の効果はあったようで。

俺も若干点数上がってるし、素直に喜ばしい。

今回は、俺も成績上位者順位表に載れそう。


「せんぱーーーーーーーーーーい!!!!!」


うぉう、この声久々。

どうしたんだ、補習候補筆頭。


「ありがとうございまーーーーー!!!!!」

「ゴフッ!」


速度が『抱きつく』の範疇に収まってない。この行為の名称は、『タックル』。

先輩の意地、そして体格差で何とか倒れずに済んだけども、

感情表現を身体で表すのはこれっきりにして頂きたい。


「おかげさまで! 赤点が一つもありませんでした!」

「あぁそっか。よかったな」

「怜太先輩のおかげです! ありがとうございます!」


笑顔が眩し過ぎて目が痛い。

透の代わりに行った勉強会も、意味があったみたいだな。

結果的にマンツーマンでの勉強になったし、効果は高かったのかも。


「透先輩! あの時は何で来れなかったんですか!?」

「あぁ、ちょっとあってな」

「そうでしたか! なら仕方ないですね!」


物分り良過ぎるだろ。何も判明してないだろうが。


「ところで、夏休みはお暇ですか!?」

「今の所予定ないけど」

「でしたら! 是非! 陸上部の朝練に来ませんかー!」

「あー……まぁ、行けたら行く」


これは行かないだろうな。この言葉で実際に行くことは、透じゃなくても殆どない。

夏休み中の運動部の練習となれば相当ガッツリやるだろうし、

透が入り込む余地はないだろ。


「かしこまりました! 来れたら来て下さいね! では!」

「おう。……運動部は大変だな」

「帰宅部でよかったわ。で、実際は夏休みどうすんだ?」


透のことだから、何かしら予定あるだろ。

主に透ハーレム関係で。


「それなんだけどよ、サルからリゾートバイトの話が入っててさ。

 これが結構おいしいバイトなのよ。来るか?」

「内容は?」

「飲食のホールとキッチン。まかない付き、海まで徒歩30秒の寮に4泊5日。

 でもって勤務後は海で遊びまくってよし。友達との応募大歓迎。

 日給1万で、最終日払いだから5万貰える」

「確かに良さげだな。日程教えてくれ。シフト調整する」

「分かった。じゃ、OKで伝えておくな。

 誰か連れてきたいヤツいたら、声かけとけ。多ければ多い程いい。

 鞠とか麻美辺りには、俺から伝えておく」

「了解」


夏休み中は、どこかのタイミングで水橋を何かに誘おうかと思っていたけど、

遊行と貯金が同時に出来るのは魅力的。

俺もある程度は、自分本位の物事に取り掛からせてもらおうか。

……それにしても。


(日給1万ね。ないこともない額ではあるけども)


夏場のリゾートバイトで飲食となると、ホテルのレストランか?

繁忙期かオープニングスタッフなら、日給それくらいのところもある。

けど、勤務後は海で遊べるっていうのが該当するとは考えにくい。

サルからの話なら、それっぽいところもありそうだが……


「本人に聞くか」


人づてだと齟齬(そご)があったりするし、脇役が確保する情報は正確性が命。

変な誤解による事故を避ける為にも、ちゃんと聞いておこう。




「あぁそれ? 俺の爺ちゃんがやってる海の家。

 寮っつーか、爺ちゃん()の部屋だな。メシもまかない込みで3食出る。

 昔は下宿で、今は民宿やってるから、部屋は腐るほどあるぜ」


身内の話だったのか。リゾートと言えばリゾートではあるけども、

想像していたものとは大分違った。


「透には何て教えた?」

「オーシャンビューリゾートで青春しませんかと」

「すげぇ、キラキラ感プリクラ並みに盛ったな」

「安心しろ。オーシャンビューリゾートってとこは合ってる。

 ド人気の海水浴場だから、若者で尋常じゃなくごった返す。

 腕があるならナンパし放題だぜ?」

「ないから困るんだが」


これまでパリピとは縁遠い暮らしを送ってきたもので。

そもそもとして、別にパリピになりたいとも思ってない。

……あれ、だったら別にどうでもいいか?


「日給妙に高いけど、どれくらい働くんだ?」

「場合によるけど、あって4、5時間。忙しいっちゃ忙しいけど、道楽でやってるし。

 若者のエネルギーもらえるなら、諭吉ぐらい惜しくねぇんだと。

 そういうことなんで、小遣い稼がせてもらってる」

「いい爺ちゃんだな」

「俺が親族からお前は爺ちゃん似だなと言われてるとしても?」

「ごめん、一気に不安になった」

「といっても、俺よか数段まともだ。あんま心配しなくていい。

 人使いも荒くねぇし、何だかんだ気のいいジジイよ」

「俺も同じ感想を持てることを祈るわ」


夏休みに予定を入れられたことは幸運だが、

これから起こることは、果たしてどうなるのかね……

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