41.男子高校生の放課後 ~テスト明け編~
「んーっ……とっ」
期末テスト、終了。大きく伸びをして、背筋の疲れを取る。
手ごたえはまずまず。いつも通りかちょっと上くらい。
何の気兼ねも無く、放課後は思いっきり羽を伸ばせる。
「藤やーん! ゲーセン行こうぜ!」
「おう」
快活に俺を誘うのはMr.チャラ男、前島翔。
日焼けした顔と校則ガン無視の髪にピアスと、典型的も典型的。
ただ、センスいいからルックスは上等。男子のファッションリーダーの一角を担っている。
普通なら、彼女の一人くらい居そうなものだが……
「あー、結局夏休み前に彼女できねーかー。結構アタックかけたけどなー」
「お前は狙いを絞れ。透じゃねーんだから」
「十分絞ってるぜ?」
「どんな風に?」
「夏だろ? 海だろ? 水着だろ? エロい女子!」
「欲望に忠実すぎるわ」
俺よりいい顔持ってるのに、モテ度がどっこいなのはこういう理由。
自分に正直すぎて、女子からは軽い男としか見られていない。
「陽司と秀雅はもうOK取ったから、あとは藤やんとサルっちだけ」
「あれ、透は連れてかなくていいのか?」
「どっか行った。多分いいんちょ辺りとテストに関するお話し合いじゃね?
あいついると鞠んにいいんちょも来るけど、どっちもカグ狙いだろ?
だったら男連中だけの方がラクー」
翔はチャラ男そのものだが、男同士の友情も大事にしてる方。
見せかけじゃない……とは思うんだけど、この性格だからな。
イマイチ信用できん。
「ま、そういう訳なんで、本日はむさ苦しく楽しみましょうや!」
「はいはい」
とはいえ、何だかんだ一緒にいて楽しいのも事実。
友人としては、これほどいいヤツも中々いないだろ。
「一丁上がり!」
「相変わらずだな……」
ゲーセンで誰が一番ガチるかと言ったら、当然秀雅。
(自称)ゲームの鉄人と言うだけあって、プレイスキルはかなりのもの。
今日はどうやら、シューティングゲームに興じたいらしい。
一人プレイのゲームだから観てるだけだが、それはそれで結構楽しかったりする。
「こんな弾幕よくかわせるな」
「鉄人ですから」
「言い切るか」
「といっても、こいつだけ抜けないんだよな」
ボヤく秀雅が見つめるのは、壁に貼りつけられているハイスコア。
派手に装飾された数値は、秀雅の出したスコアより数段高い。
これを更新したら賞品が出るそうだが、1年くらい誰も抜けていないとか。
秀雅曰く『クリア狙いじゃなくて、スコア狙いじゃないと出せない点数』とのこと。
「ここまでやり込むのは変態しかいねぇよ。誰だ?」
「誰なんでしょうかねぇ……」
プレイヤー名は『WBD』。
……あれ? 何か、どっかで見たことがある気がする。
いや、場所も特定できる。このゲーセンで見た記憶があるんだが……
(『W』ater、『B』rige、『D』rop……あっ)
そういえば、初めて一緒に遊びに行った時、ハイスコア登録画面で……
「完全に人間やめてるだろ。一回見てみてぇ」
(……もしかしたら、結構簡単に見れるかもしれん)
確証は無いが、水橋は学力だけではなく遊びも凄まじいかもしれない。
あいつは一体いくつの才能を持ってるんだ。
「だーっ! 滑った!」
「おいぶつけんな! 下がったじゃねーか!」
わいわい騒ぎながらレースゲーム。
ペダルとハンドルだけではなく、ギアも操作するタイプなので何かと忙しい。
「うちの親父はMT免許だ! AT限定とは違うのだよ!」
「この速度じゃ一発取り消しだろが!」
「その前に事故って死ぬわ! 何回ぶつけてんだよ!」
さっきから翔とサルは俺に恨みでもあんのか!?
お前らのミスで一番後退してんの俺だからな!?
あーもう陽司がゴールに……
「っしゃー!」
「あー……まぁ、2位ならいいか」
「あっぶね! ビリは免れたか」
「……飲み物、何がいい?」
この勝負、ジュースのおごりがかかっていた。
致し方ねぇ。パシリになるか。
「ぜぇ……はぁ……ぜぇ……はぁ……」
「部活とどっちキツい?」
「……ギリこっち」
そう言って陽司が指差す先には、足でパネルを踏む音楽ゲーム。
確かに曲次第では立派なスポーツになるからな。
俺くらいだと普通にゲームの範疇だが、陽司のやってるレベルだと相当。
それだけあって、バリバリに汗かいてる。しかしそれがイケメン。
「怜二、俺の鞄にタオル入ってるからよこしてくれ」
「はいよ。これか?」
「おう、投げていいぞ。……サンキュ」
青色のスポーツタオルをキャッチし、顔を拭く。当然イケメン。
陽司はこういう所作の一つ一つがいちいちカッコいい。
元のルックスがスポーツの似合うワイルド系イケメンなので、
その雰囲気から来るものかもしれんが、こういうことしてると。
「こんにちは~。今一人? 私、友達と来てるんだけど、一緒に遊ばない?」
という具合に逆ナンされるのも日常茶飯事な訳で。
しかし、当の本人は。
「隣にいる友達も見えないようなヤツと相伴する気はないから、
他を当たってくれ」
「えっ……あっ、うん……」
大体の場合、毎回流す。
……って、陽司。そのセリフは結構嬉しいぞ。
透は相手がブスじゃない限り受けるし、俺のことは置いてくから尚更。
「……アレな話だけどさ、俺は自分の面にそこそこ自信ある。
けどさ、だからって隣にいるダチ無視するか?」
「そりゃまぁ、お前と俺じゃ顔のつくりが全然だし」
「関係ねぇだろ。普通に怜二も誘えばいいのに、人数でゴリ押す気見え見え。
そんな真似する女にロクなヤツはいねぇし、断って当然だっての。
俺の大事なダチ無視するとかマジありえねぇ」
「陽司、そこまでにしろ。惚れるぞ」
「やめろ気色悪ぃ」
陽司は外見も中身もイケメン。
流石はサルの総合評価A+といったところ。
男子高校生の日々は、気楽に過ぎていく。
ここ最近のゴタゴタの息抜きも、適度に楽しまないとね。
【サルの目:生徒データ帳】
・茅原 陽司
サッカー部
ルックス S
スタイル S
頭脳 B
体力 S
性格 A
【総評】
ルックスにおいては、透と双璧をなすワイルド系イケメン。
当然のように超モテモテだが、悲しいかな、あんまり女心分かってない。
翔みたいにデリカシーが無いという訳ではないが、束縛されるのが大嫌い。
所謂サバサバ系女子が合いそうだけど、サバサバ系って言ってる女子って、
だいたいの場合サバサバしてないからなぁ……
総合ランク:A+