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35.捜査開始

まずは、現状の確認。

その為に、これまでにあったことを思い返してみよう。


最近あった出来事といえば、穂積の失くし物の頻発。

もしかしたら、これも料理研究会盗難事件と関わっているかもしれない。

そう仮定すると、犯人は穂積に恨みのある人物だと考えられる。

でもって、そいつは穂積の持ち物まで、盗んでいる可能性がある。


そこから考えると、クラスメイトの犯行はまずない。

穂積のことをよく知ってるヤツなら、嫌悪感を抱くはずがない。

同じ理由で、研究会メンバーも除外。

だとすると、ある程度犯人像が浮かび上がってくる。


犯人は、穂積に間違った認識を持っている。

今回の事件が穂積に対する報復だとすれば、接点0はありえない。

何らかの理由で、穂積に恨みを持って、事に及んだんだろ。


(それが何かが、一番分からないんだけどな)


穂積の性格的に、誰かから恨みを買うようなことは考えにくい。

あいつの明るさは天然だ。計算はどこにもない。


手持ちの情報じゃ、まだはっきりとは分からない。

なら、情報を集めてみるか。




「悪いが、有益な情報はないな」

「そうか……」


情報と言えばサル。サルと言えば情報。

今回の事件解決に向けての、強力なカードだと思ってたんだが。


「事が突然だから前情報0だし、昨日の今日だろ?

 その間で何か知れるなら、俺は学校辞めて探偵やってる」

「だよなぁ……」

「犯人探しについては、そっちでやってくれ。

 誰か見当ついたら、そいつのデータ提供ぐらいはできるけど。

 今回は事がコトだから、無料でいいぜ」

「分かった。その時はよろしくな」


サルの情報が必要になるのは、特定直前から。

それまでは、自分で何とかするしかないか。




「中に入っていたのは生クリームやバター、練乳など。

 お菓子作りに使うものは一通り、この中でしたね」

「家庭科室って、鍵かかるよな?」

「はい。部活が終わったら、最後に出る人が締め、職員室に返します。

 盗難があった日は、穂積先輩が最後でした」


こういう時、帰宅部というポジションは便利だ。

所属の制約がないから、時間の余裕があるし、どこにでも行ける。

勿論、迷惑をかける訳にはいかないが。


「そのせいか、相当責任感じてるみたいで。

 誰も、先輩が悪いなんて思ってないんですけど……」

「あぁ、だからか……」


事件以来、穂積はどこか無理をしているような気がしていた。

その理由は、ここにあったのか。

透がまともな動きをしないというのに苛立ちはあるが、あいつには別の役目がある。

この際、どういう形でもいい。穂積のメンタルさえ守ってくれれば。

その辺りに関しては、透に一任しよう。




「鞠、あんまり気にすんなって。ほら、今日とか遊びに行かね?」

「……透、ごめんね。今はそんな気分になれないや」

「だからこそ! つれねーこと言わねーでさー? なー?」

「……ごめんね、ちょっと、一人にしてくれないかな?」

「いいじゃんかよー! な? な?」

「透……ごめん、ほっといてくれない?」


……その透がこの様とはね。

今優先するべきはお前が何をしたいかじゃなくて、穂積がどうしたいか。

お前一人がダメージ喰らうんならいいけど、他のヤツが辛い目に遭ってるとなると、

俺は看過できないんだよ。


「透、無理に誘うな。事が片付いてからにしとけ。

 ……鞠、その時には宜しくな。じゃ」

「うん。またね」

「えー? 遊び行こうぜー?」

「黙ってろ。時には一人にさせておく必要もあるんだ」


静かに寄り添ってやってるだけならいいんだが、こうウザ絡みされるのは

今の穂積にはうっとうしいだけ。

何もしないんだったら、せめてマイナスにならんようにできんのかこの男は。




『穂積さん、鍵をかけた記憶はあるんだって。

 それなのに、鍵をかけ忘れたか、ちゃんとかけてなかったんだって言ってる。

 だけど、ボクは穂積さんが何かミスしたとは思えない』

『だよな。となると何らかの方法で侵入したってことになるけど、

 どうやって……?』


SNSを使って、水橋と情報交換。

まだ日が浅いし、核心に至るようなものはないとしても、綿密に。


『最近、穂積と新しく交流があったヤツとか、聞き出せた?』

『明日、聞こうって思ってる。

 一度にたくさん聞いて、嫌なことずっと考えさせるのも辛いだろうし』

『それが無難だな。宜しく頼む』


こうしてみると、水橋の成長は著しいものがある。

穂積に対してだけとはいえ、会話の感覚はかなり掴めている。

元のスペックは高いし、話しやすい穂積が相手なら、もうサポートは不要か。


『穂積さん、今度は和スイーツ作るつもりだったみたい。

 犯人には、たっぷりと塩をご馳走してあげようと思う』

『確かに甘いの対義語は辛いだが……』

『勿論高い塩なんてあげないよ! 1kg100円の安いやつ!』

『聞いてねぇしどうでもいいわ』


女の子はお砂糖とスパイスで出来ていると聞くけども、

水橋は才能とスイーツと微量の劇薬で出来ているのかもしれない。

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