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231.何回目かの遊び、かつ初めてのデート

大通りへと歩を進めることしばらく。

思えば、初めて遊びに行った時と同じ場所で、同じ時間だ。

あの時は俺なりのオシャレ着を着た。ものの見事に地味だったけど。

今回は学校の制服。ここは全く違う。

そして、全く同じことと全く違うことが、それぞれもう一つずつある。


「おはよう。今回はボクの勝ちだね」

「……そりゃ、1時間以上前に来られたらな」


事前に決めた集合時間は、11時。

現在時刻、10時。

お互いに早く行って逢いたい気持ちはあったようだが、

この時間で雫に上回られるとは思わなかった。


「参ったな……これで負けるか」

「あと5分遅れたら負けてたのはボクだったよ。

 怜二君って毎回早くに来るもん」


同じことは、遊ぶ相手。

俺と同じく、いつも学校で着ている制服姿の雫。


「それはそうだけどさ、1時間前か……」

「何か文句でも?」

「文句なんてない。雫との初デートが1時間長くなって嬉しい」

「あるじゃんか……それ、殺し文句……」

「ということで、歩こうか」

「うん。……やっぱり、敵わないなぁ」


違うことは、関係性。

俺と雫は、友達じゃなくて『恋人』。

その証は、既にお互いの指にある。


「ところでコレ、やっぱりちょっと緩いよな」

「うん。だけど今はココにつけるしかないもん」


夏祭りで手にしたペアリング。

夏休みに雫と遊びに行った時は、人差し指につけた。

丁度合う指がそこだったが、今はそこにはつけていない。


「将来的には、給料の三ヵ月分でお願いね」

「勿論。今は手頃な所で我慢してくれ」

「いくらボクでもそこまでわがままじゃないよ。

 今の時代じゃ一ヶ月分でも相当高価だし」


お互いに、左手の薬指。

サイズが合ってないことを知っていながら、そこにつけた。


「だけど、やっぱり抜けやすいから気になるんだよな……」

「今日、ピッタリのヤツ買うか?」

「うーん、どうしよっかな。これも色々と思い出あるんだよね」

「これは保存用にして、つける用にサイズ違いを選ぶとか?」

「それいいかも。やっぱりここならしっかりはめたい」

「んじゃ決まりだな」


今はまだ、身の丈に合った物しか買えないけど。

来るべき日が来たら、その時にはいいものを用意しよう。




「そうよもっと強く抱きしめてー! この気持ちは止まんなーい!」


最初に訪れたのはカラオケボックス。

雫の七色の歌声が凄いのなんのって。

今歌っているのは情熱的なロック。クールな声に熱いシャウトがたまらない。


「ふぅ。どうかな?」

「控えめに言って最高。控えずに言ったら愛してる」

「うーれーしーい!」


本当ならもっと具体的な感想も言えるが、必要ないか。

最高だし歌だけで更に好きになるというのは事実だし、

雫はめちゃくちゃ喜びながら抱きついてくれたし。


「楽しいねー♪ あ、そうだ! ここならいいよね?」

「……まさか」

「ボクにキスマークつけてよ♪」


確かにここにいるのは二人きり。

注文必須のドリンクはもう来たから店員も来ない。

一見、絶好のシチュエーションに見えるが……


「天井見てみ」

「え? ……あ、そっか」


白い天井に張り付いている黒い半球。

誰かが入ることはないとしても、防犯カメラ越しに見ることはできる。


「ごめんね、無理言っちゃって」

「気にすんな。それは誰にも見られないとこでやろう」


雫の願いは叶えたいが、ここだと辱めることにもなってしまう。

どちらかの家に行くとかの環境づくりは可能なんだから、

無理にこういうところでやる意味はないだろう。


「でも、見せ付けるくらいに……」

「頼むからやめてくれ! 今ですらちょっと恥ずかしいから!」

「半分冗談だよ」

「全部冗談であって!」


……ネジ外れてるなぁ。楽しんでくれてるのは嬉しいんだけど、

この様々な意味でのドキドキに耐えられる心臓が必要だ。


「それじゃ次は怜二君歌って♪」

「あぁ。それじゃ……これにするか」


俺だって雫をドキドキさせたい。

そういうところも好きになった理由だって言ってたし。

その為に今回、ラブソングを覚えまくったからな。


「おぉ、これはまた随分と」

「分かりやすいしな」


さて、どこまでできるかな。

上手くは歌えないから、俺らしく歌おう。




「それでも君に伝えたい、伝えきれないI love you……」


歌じゃきゃ真顔で吐けない言葉が延々と続くも、なんとか完唱。

さて、雫の反応は……


「えうっ、ぐすっ、ぐすっ……」

(ちょっ!?)


泣いてる!? え、これどういうことだ!?

悲しませるような歌ではないとは思うんだが……


「どうした!?」

「ズルいよ……ボク、普通にこの曲聴いても泣いちゃうのに、

 怜二君が歌ったらもう涙止まんないよ……」


どうやらこれは感動の涙らしい。思ったより刺さったようだ。

けど、このまま泣かせる訳にもいかない。となると……


「ありがとな。こんなに感動してくれて嬉しい」

「怜二君、自分がどれだけカッコいいか自覚してよ……」

「そう言われてもな……まぁ、うん、ごめんな」

「……初めてボクとカラオケに行った時に頼んだスイーツ。

 それおごってくれたら許す」

「分かった」


そう来たか。そこそこ前のことを覚えてるかどうかと。

勿論これは覚えてる。それじゃ、この可愛いおねだりを叶えるか。


「もしもし、シューアイス二つお願いします。

 雫、他に何か要るか?」

「……ぎゅってして」

「あ、以上でお願いします。……ほら、ぎゅっ」


隣に座り直し、寄りかかって来た雫を抱きしめる。

……いちいち可愛いな。こういう面倒臭さなら大歓迎。


「……落ち着く。けど興奮もしそう」

「ぼちぼち店員来るから抑えてくれ」

「見せつけたい」

「勘弁してくれ」


雫は離れようとせず、俺も無理に剥がそうと思えず。

品を持って来た店員に微妙な顔をされたのは、5分後の未来だった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] もうちょっとだけヤツに与える罰の程度が大きくなったらいいなと思いました。 [一言] ここまで一気読みしてしまいました!もう今の2人サイコーですよ。応援してます。
[良い点] この砂糖の濃度と言ったら!! そしてこれでまだまだ序の口である。 [一言] これからの更なるいちゃいちゃに期待!! 頑張ってください‼
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