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222.完全壊滅

「何か知らねーんだけどさー、そいつ怜二のことが好きなんだとさ。

 怜二がいじめられてるところで味方してやればオトせるってことで、

 適当に噂流してそれっぽい空気作ってくれないかってことよ。

 いやいや、俺も本当は嫌だったんだけどな? こんな真似するの。

 でも最終的には怜二に彼女ができるんだし、それならトータルで……」


あまりにも醜悪すぎて、透以外の全員が黙った。

ダラダラと垂れ流される嘘っぱちだけが、生徒会室に響き渡る。


「それとも何だ? こんな真似するような女だったらいらねーとか?

 どーせお前パッとしねーんだし、高望みは……」

(……そろそろか)


生徒会室にいるのは、メッセのグループのメンバーと同じ。

だが、この一連の会話(及び透の戯言)を聞いているのは、実はもう一人いる。

さてと、普通にしても聞こえるとは思うが、机の下に向かって……


「もう十分だ。来てもいいぞ」

「しねー方が……何してんだ?」


最初から参加させたら、透が余計な真似をするかもしれないし、

ボロを出す可能性を考えると、席を外してもらった方がいい。

だが、当人はかなり気に病んでた上、ありもしない責任をとろうとしていた。

だから、取る必要のある責任なんて存在しないということを教える為、

この議論の音声を別所で聞かせて、その上で判断してもらうことにした。


「お前、白崎のこと何だと思ってんだ?」

「質問に質問で返すなよ。何してんだって聞いてんだよ」

「……呼んだんだよ」

「誰を?」


俺が説明をする前に、扉が静かに開いた。

そこから現れたのは、ぱっつんヘアーに縁なしメガネ、

胸元ぐらいまである三つ編みに、小柄な体躯の少女。

この前、俺に告白をした……サッカー部マネージャー、白崎樹。


「……先輩」

「だから言ったんだよ。こいつのクズさは酷いって。本当にごめんな」

「いえ! 先輩は悪くありません!」

「……え? 何? 何だコレ?」


困惑する透をよそに、まずは白崎の状態を確認する。

ショックは受けているが……話、進めても大丈夫か。


「机の裏、見てみ」

「裏? ……ん? 何かあ……あーっ!」


透の叫びは二方向から聞こえた。

一つは机の下から、もう一つは白崎の持つスマホから。


「全部をはっきり聞けたとまではならんだろうが、十分だろ。

 少なくとも、お前のふざけた言い訳は十二分に聞こえてる」

「お前……お前ら……!」


透が来る前に、仕掛けを作っておいた。

まず、白崎が穂積のスマホに電話をかけて、普通に電話に出る。

通話状態になったら設定をスピーカーにして、机の裏にスマホを貼り付ける。

そうすれば、生徒会室での会話の音声は白崎のスマホに届く。


「ということで、白崎に責任なんてない。全てはこのバカがやったことだ」

「ですが、私がちゃんと説明していれば、先輩はこんなことには……」

「そっ、そうだぞ! お前のせいで俺はこんなことになって……」

「あなたに言ったんじゃない!」


よくまぁ白崎のことを散々貶しといて、『先輩』の対象が自分だと思えるな。

誰がどう見ても100%の詰み状態の中、なおも自分に都合のいい解釈をするか。


「お前のせいだろが! お前が怜二なんかと付き合いたいとか言うから……」

「こんなの望んでない! あなたのせいで、藤田先輩はいじめられた!

 挙句の果てに他人(ひと)のせいにするなんて、それでも藤田先輩の幼馴染!?」

「うるせー! わざわざお前の為にしてやった……」

「藤田先輩の彼女になりたいとは言ったけど、こんなの望んでない!

 こんなふざけたやり方でできた彼女なんて、藤田先輩に相応しくない!

 そんなことすらも言わなきゃ分からないの!?」


どうやら、白崎は騙されてたらしいな。

大方俺と付き合えるようにしてやるとか言われて、それに乗ったが、

その方法がこういうことだったというのを知らなかったんだろう。

透としては主目的は俺をいじめで追い込むことだろうし、

いざとなったら白崎に責任をなすりつけられるから、ノーリスクだと思ってたと。

……躍起になって焼きが回ったんだな。こんなボロボロの作戦が通る訳がない。

白崎本人に聞けば、噂は全くの事実無根だって分かるというのに。

さて、このままだと白崎の声が枯れそうだし、そろそろか。


「白崎、一回ストップ。俺も色々と言いたいことあるから」

「あっ、はい!……先輩、本当にごめんなさい」

「謝る必要ないんだから謝るなって。……さて、透。

 お前自身が認めた通り、お前は俺の悪い噂を流した。

 で、それが遠因になって俺は様々な嫌がらせを受けた。

 そして、それが露呈したら後輩に罪をなすりつけようとした。

 そこまで言われて、何か言うことはないか?」


謝罪なんて期待してないし、謝られても許すつもりはない。

後は悪態つくだけつかれて終わりというところか。


「あのさ。こんな大勢よってたかって恥ずかしくねーの?」

「怜二とお前の人徳の差だろ。だったらお前も誰か呼んでいいぞ。

 呼べるならの話だが」

(ちげ)ーよ。……あー、考えてみりゃ丁度いい機会だ。

 怜二、一対一で話そうぜ。そうしたら言うこと言ってやるよ」

「だそうだ。どうする、怜二?」


これはちょっと予想外。一対一になった所で謝ることはないだろうが、

「丁度いい機会」って何だ? 前から言いたいことでもあったのか?

となれば……聞くだけは聞いてみるか。


「分かった。皆、一旦席を外してくれ。

 話してる間は俺のクラス辺りで待っててもらえると助かる。

 終わったら俺も行くから」

「了解。時間かかるようだったら戻るからな。

 透が何しでかすか……いや、危ないのはむしろ透か。

 ならどうでもいい」

「黙ってさっさと出ろ。おっと、忘れる所だった。鞠、スマホ返すぜ。

 お前がこんなことする奴だとは思わなかった」

「……うん」


陽司が立ち上がったのを見て、皆も生徒会室から出た。

穂積と門倉が少しだけ透を気にしていたようだが、

深沢先輩に促され、最後にゆっくりと出た。


「ほら、一対一になったぞ。で、お前が言うことって何だ?」


さて、こいつは一体何を抜かしやがるのだろうか。

ハーレムは完全に崩れ、他の連中からも総スカン。

わざわざ一対一に持ち込んで、どんな戯言をほざくのやら。




「あーあ、脇役が出しゃばりやがって。

 俺の下にいりゃ、お前もそこそこ幸せになれたのに」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 起死回生だ透! 今がチャンスよ!一気に挽回するんだよぉ [一言] 生徒会長としては、こういうのがのさばれる環境だったとしてやはり教師陣が終わっていると考えるだろうか
[一言] 「記録中のスマホが一つだと思ったか?」 って、展開が予想出来るんですが・・・。 それよりも、最後の一言から見ても 透の脳内で『俺の理想のハーレム』が続いてる臭いなぁ。 「怜二を倒せば元通り…
[一言] 某ポセイダルさんが最終回で主人公に言ってたなぁ・・・。
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