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22.ケアの限界

「それじゃ、宜しくね」

「ん。任せとけ」


お、珍しい。門倉が透に頼み事を。

門倉が頼み事ある時って、透以外の誰かに頼むことが多いはずだが。


「何頼まれたん?」

「資料探し。生徒会の会計で使う資料、紛失があったんだと」


面倒事だな。明らかに透の嫌いな分野。

こういうこと、門倉は頼みそうにねぇんだけど。


「生徒会、今忙しいみたいでさ。麻美が引き受けたんだってさ。

 で、協力頼めるのが俺くらいしかいない、と」


「ちゃんとやってくれるのは透君くらいだし」とか言ってそう。

透に頼んだのは、二人の時間を取りたいって線まであるかもしれん。

確かに、この前の水橋引き入れ作戦の失敗や、ここしばらくの透の行動見ると、

門倉は一歩遅れを取ってるっぽいし、そこで何とか、ってとこか。


「資料室からしらみ潰しだとしたら、時間かかりそうだな」

「まぁ、何とかなるだろ」


何とか『する』ではなく『なる』んだよな、透の場合。

いかなる問題であろうと、ちょっと願えば、事は(透にとって)上手く行く。

主人公補正は、何も人にだけ効く訳ではないのだよ。




(……で、何をしてくれてるんだこの主人公様は)


やりやがったよ。遂にやりやがったよ。

これは完全なるミステイクだ。


事は昼休み。


「せんぱーーーーーーーーーーい!!!!!」


推定80~100デシベル。

『混雑した地下鉄でもはっきり聞き取れる』レベルがそれくらい、のはず。

ボリューム調節機能の早期配備を願いたい。


「うるせぇっての。そんな大声出さんでも分かるから」

「いやー! 想いを押えきれなくて、つい!」


この快活な笑顔が無ければ、間違いなく嫌われてただろうな。

自覚の無い行為が一番面倒というのをそのまま体言しているというか。


「時に先輩! 放課後お暇ですか!?」

「何かあるん?」


お誘いか。この前は古川先輩とかぶったからな。

しかし今回も残念ながら、透には資料探しという予定が……


「透先輩、英語お得意でしたよね!? 今日、テスト対策の勉強会あるんです!

 なので! 是非! 来て頂けませんかー!?」

「あーうん、分かった。行く」


っておい!?

お前、ついさっきの事忘れたのか!?


「ありがとうございます! そして宜しければその次の日にデートでも!」

「はいはい。それじゃ放課後な」


ダブルブッキング。用事の時間帯まる被り。

これは流石に聞かずにはいられない。


「おい透。放課後、資料探しあるだろ」

「え? あー、そういやそうだったな」


せめて悪びれろ。何他人事みたいに振舞ってんだよ。


「どうすんだよ? どっちか断れよ」

「あー、うん……まぁ、何とかなるっしょ!」


言い切りやがった。

具体策何にもなし。というか、普通にどっちか断るだけでいいってのに。


(……これはどうやら、お仕事かね)


あんまりやりたくないし、やる必要もないかもだが、

主人公様の横暴に割を食うのは俺だけでいい。

脇役の仕事は、主人公のアシストだけじゃない。被害者の救済もなのだよ。




「よっ」

「怜太先輩!」


透は資料室へ行った。

曰く「ちゃっちゃと見つけて戻るから」とのこと。

あいつの性格からして、勉強会参加を優先するかと思ったんだが、

門倉との接触時間を取りに行ったか。


「ちょっと連絡。透、勉強会来れなくなった。用事あったみたいでさ」

「なんと!」

「ということで、代役任されたんだけど、俺じゃダメか?」

「いえ、そんなことは! 中学の頃からお世話になりましたし、大歓迎です!」


透から代役など頼まれてはいないが、八乙女は結構アテにしてたっぽいし。

英語に関してはギリ透の方が成績いいが、俺も苦手じゃないし。

加勢させて頂こう。


「皆さん! 透先輩は来れなくなったそうですが、

 怜太先輩が来てくれました!」


教室での勉強会か。

1、2、3、4……八乙女入れて5人か。

さてさて、それじゃ早速……


……あ、これダメだ。

この勉強会、俺じゃ何の役にも立たない。


「つかさごめん。アタシ、用事あった」

「そういえば私も。思い出した」

「……あーっ! 今日お客さん来るから、早く帰れって言われてた!」

「さっき連絡あったんだけど、バイト入ってくれないかって……」

(そうなるよな……)


ここにいるメンバーは全員女子。そして、俺が入って来た時と、

八乙女が、透が来れなくなったと言った時の表情の変化。

それらを掛け合わせると、答えは自ずと出る。


この勉強会は、勉強の為の勉強会じゃない。

透と接点を持つ為の勉強会だ。


「なんと! そういうことでしたら仕方ありませんね!

 また次回、集まりましょう!」

「うん、そういうことで。じゃねー……チッ」


俺じゃ、代役は務まらない。

求められているのは、学力じゃねぇ。神楽坂透だ。


……こういうこと、初めてじゃないけど、キツいな。

水橋と絡むようになってから、半端に諦め悪くなってたし、

尚のこと辛い。


「むー、皆さん今日はお暇だと聞いたんですが……

 あの、怜太先輩。わたしだけでもお願いできますか?」


どうやら八乙女も、いいように使われただけっぽいな。

それじゃ、脇役仕事兼先輩仕事をするか。


「別にいいぞ。どれがヤバいんだ?」

「全部です!」

「はいはい」


こいつ、純真さに関しては折り紙つきだからな。

俺が見抜けてないだけかもしれんが、裏と表を使いこなせる程、

八乙女は頭良くないし。

その真っ直ぐさに報いる為にも、赤点回避するくらいは、ね。

【サルの目:生徒データ帳】

八乙女(やおとめ) つかさ

陸上部

ルックス A+

スタイル A

頭脳   D

体力   S

性格   A


【総評】

陸上部の(身長と乳以外)大型新人。

鍛え抜かれた美脚と一直線さが男子人気を集めている模様。

透ハーレムにおいて唯一、透に直情的な好意を向けているが、

悲しいかな、冗談としか思われていないっぽい。


総合ランク:A

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― 新着の感想 ―
[一言] 透と主人公の関係性が歪すぎますね。脇役というよりは召使いみたいな感じに見える
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