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206/236

206.自習時間で学習はしない。況や自由研修で研修は。

フルに動ける唯一の日、3日目。間違いなくメイン。

各班で予定を決めた、自由行動の日。思いっきり楽しめる……はずだが。


「藤やん、降水確率なんぼ?」

「今は40だけど、昼過ぎからはずっと90だ。つまり確実に降る」

「マジかー……まぁ、折り畳み傘あるけどよ……」


思いっきり曇り空。しかも所々灰色。

俺も折り畳み傘は用意してあるから問題ないが……残念。


「3泊4日だ。昨日、一昨日は晴れだったし、一日ぐらい降るだろ」

「仕方ないよな。とりあえず、準備はしとくか」

「うーい。サルっち、この天気で撮影大丈夫なん?」

「場所選べば大丈夫だ。こちとら腐っても報道部よ」


写真撮影は基本的にサルに一任してる。

サル含めた全員集合の写真を撮る時とかは、その辺の通行人にお願いするけど。


「予定、結構ガッツリ詰め込んだけど大丈夫か? 足元悪くなりそうだけど」

「午前が映画村で午後が大阪巡りだったよな。

 これ、移動早めにした方いいか?」

「変に変えたくはないが、状況次第だな。

 それに、向こうの班の都合もあるだろうし」

「それな! 藤やん、お前本当によくやってくれたよ!」


行き先がかぶってたからとはいえ、大人数での行動になるからな。

勿論、俺は可能な限り雫と楽しみたい。


「扮装はやりたいよな。ところで陽司、俺は何がいいと思う?」

「秀雅は……黄門様とか?」

「それは白ヒゲジジイが似合うっていうことか?」

「逆に聞くけど、他に何があると思った?」

「何もねぇよこの自他共に認めるイケメンストライカー!」

「はっはっは。まぁそういうことで」


一番重要なのはここだろうな。遊園地に続くツーショットのチャンス。

どう立ち回るかは出たとこ勝負だけど、衣装はどうしようか。


(……一番最初に浮かぶのが浪人というのが俺らしいな)


有名な剣豪とか、奉行とかではなく、モブの中の一人。

別に無理しなくていいんだ。似合うか似合わないかだから。

来年に受験を控えた身で浪人というのも縁起悪いが。




「おはよう!」

「おはよう。それじゃ行くか」


穂積の快活な挨拶を受け合流、そして自由行動スタート。

半日まるっと楽しませてもらおうか。


「まず映画村だよな?」

「そうだね。雨が降りそうだから散策は難しいかもだけど、着物着たい」

「これ本当に楽しみで。勿論あたしは花魁一択!」

「花魁ねぇ……」

「おうおう、おサルちゃんよ何か言いたげですねぇ?」

「いや気にすんな。位と品性が本人と釣り合ってないとか考えてないから」

「なら何故わざわざ言った!」


この修学旅行で初めて知ったが、サルと日下部は何かと気が合うらしい。

とはいえその関係性はカレカノとかとはほど遠く、『悪友』といったとこだが。


「あ、そうそう陽ちゃん。昨日はうちのヒナがごめんねー。

 今日はあんまりはしゃぎ過ぎないように言っといたから」

「大丈夫だって。謝ることねぇよ」

「その、今日、は、なるべく、静かに、する」

「ん。それじゃ宜しく」

(ほう……)


日下部、コミュ力高いな。こういう部分は見習いたい。

ただ、こういう流れに乗って攻め入るタイプは相手が限られるが。


「それじゃまずは映画村へレッツゴー!」

「時間は……丁度いいな。早過ぎても開いてねぇし」


最寄駅・バス停が非常に近いというのがありがたい。

移動によるタイムロスはなさそうだ。




バスに揺られること数分。目的地に到着。

京都有数の観光地にして、修学旅行生の行き先としては定番も定番、映画村。


「着物体験もいいけど、撮影技法とかの研究もしなさいよ?

 遊ぶだけだと帰ってからのレポートが……」

「突撃ー!」

「ちょっと、待ちなさい!」


勢いよく突っ込んでいったサルと翔と日下部、それを追う門倉。

両者のスピード・体力差は歴然。差は開く一方。


「皆元気だねー」

「人多いからぶつか……遅かったか」

「何やってんだか。ほら、俺らはゆっくり行こうぜ」

「撮影系はちょっと調べたいんだよな。ゲームにも活かしてるって話だし」


雨が降る前にやることはやっておこう。

数は多いが、一つ辺りのアトラクションはそんなに時間かからないし。


「そういや、昼飯どっちで食う予定? 俺らはここで食うつもりだけど」

「私達も一緒。美味しいおうどんがあるって聞いたんだ」

「んじゃうどん屋だな。天気と時間的に食ったら移動だから、やることやろうぜ」


雫とツーショット、あとは何かのアトラクションでカッコいいとこ見せるのが目標。

それじゃ、頑張るか!




(……そんな予感はしてたよ、えぇ)


最初に挑んだアトラクションは手裏剣打ち。

『的当て』という性質上、文化祭をはっきりと思い出した。


「お嬢さん、パーフェクトですよ! 全部ド真ん中に当てるとは!」

「ありがとうございます」


俺も的に当てるだけなら出来たが、精度が段違い。

こういった分野で雫を超えることはまず不可能だとは分かっていたけども。


「凄ぇな……現代のくノ一ここにいたよ」

「そんなことないよ。偶然」


カッコつけるのはやめとこう。相手が女神様じゃ無謀だ。

そんなことより、雫と一緒に色々と楽しむのが一番。


「じゃ、次はどこに行く?」

「忍者屋敷ってあったよね? そこ行きたい」

「了解。確かこっちを曲がって……」


完璧にエスコートできるようにする為、村内地図は丸暗記した。

陽司と翔、サルのアシストのおかげで、雫とは二人っきりになれてる。

この機会、しっかり活かさねば。……と、意気込むと共に。


「雫、明るくなったよな」

「そうかな? そうだとしたら、怜二君のおかげだね」

「大したことしてないけどな。それと、秋服似合ってる」

「ありがとう。今日は普通に女の子っぽくしてみた」


ベージュのカーディガンにチェックの膝丈スカート。

脚が長いからパンツルックも映えるが、スカート姿も実に可愛らしくて。

うちの高校の修学旅行は私服で行ける事に本気で感謝してる。


「ただ、マフラー持ってくればよかったなぁ……ちょっと寒い」

「……良かったら、使うか?」


マフラーを外しながら、自然に口から零れた。

こういう部分なら、カッコつけられる。


「え、いいの?」

「思いっきり男物だけど、それでも良ければ」

「怜二君は寒くなるよ?」

「大丈夫。鍛えてるから」

「……ありがとう。借りるね」


首はそんなに鍛えてないけど、マフラー外した程度で寒くはならない。

それぐらいの熱量、今までの筋トレの成果で補える。


「……あったかい」

(ヤバい何コレ超可愛い)


口元隠すようにして巻いたから、大きくて綺麗な瞳が際立ってる。

柄は全く服に合ってないのに、何でこんなに可愛いんだ。

ドキドキで血流が増えて、なおのこと防寒の必要なんてなくなったよ。

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