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204.アシストもできるから(本人談)

「うわぁーっ!?」


熱風、水飛沫、そして眼前には迫力満点の3DCG。

メガネをかけることで臨場感溢れる映像を間近で体験できるアトラクション。

思ったよりも待ち時間が短かったから、4人で乗った。


(これ凄ぇな……それはそうと)

「うえぇっ!? えっ、ちょっ!?」


ぐるんぐるん回る視点に合わせて、驚きの声を出しまくる雫。

ジェットコースター系ではないけど、これもインパクトはデカイ。

本当に大丈夫かどうか確認はしたし、本人は乗りたいと言ってたけど……


(……じゃ、こんな感じで)

「わぁーっ!? ……あっ」


そっと、手を握る。

その瞬間に雫は落ち着きを取り戻したが、俺の胸の鼓動は大きく高鳴った。




「うわ、俺完全にアホ面だわ」

「そうか? むしろ俺は変に仏頂面になっちまったんだが」

「私は、ピース、できた」

「宮崎さんは二回目だったっけ」


最後の最後に搭乗客に語りかけてきたヒーローが突然カメラを構え、パシャリ。

撮られた表情はそれぞれ違うが、完全に虚を突かれたということが分かる、

普通なら撮られないカットになっていた。


「これは4人で乗って正解だったな。めっちゃ楽しかった」

「だな。……そうそう、水橋と宮崎に聞きたいんだけどさ、

 昼ごはんどうする? 俺と陽司は他のメンツと合流して食うんだけど、

 良かったら一緒にどうだ?」

「いいね。こっちは各自で食べることにしてたから。

 宮崎さん、おすすめってある?」

「ガッツリ系で行くならハリウッドステーションでデラックスステーキ!

 劇場作品と絡めるならアメリカンズコロニーが攻守最強!

 オシャレに行くならミリタリーカフェテラスが最有力!

 それから豪快に骨付き肉が食べられる……」

「……えーっと、空いてるとこ行こっか」


苦笑いする雫の隣で、マシンガントークを繰り広げる宮崎。

こういうタイプって、雫にはどう映るんだろうね。


「んじゃ連絡入れるか。……秀雅、そろそろ時間だけどそっちどうだ?

 うん、うん……あ、そうなん? いや、実はこっちも。

 となると10人だろ? この時間帯でもっていうか、テーブルあるか?

 うん、まぁ一応相談はするけど、すぐかけ直すわ。じゃ」

「陽司、何があった?」

「いや、向こうも女子と合流したっぽくてさ。しかも水橋と宮崎の班の。

 人数が人数になるし、もうこのまま昼飯とおみやげ買いの方よくね?」

「なるほど。確かに合わせて10人じゃ厳しいな。俺は賛成だけど、二人は?」

「私も賛成。効率よく回るために人数分けたし」

「うん、私、も。みんな、そっちの方、いいみたい、だし」


全員一致で、このグループを継続。

それじゃメシとするか。遊園地価格であることは覚悟して。




先頭に並んでいた陽司が、ふと後ろに振り向いて、店内を見渡す。

一通り目を通した後。


「待った、4人席無くね?」

「……あっ」


宮崎の勧めで比較的空いている所に来た……はずなんだが。

4人掛けと思われるテーブル席は見事に埋まっていた。


「ごっ、ごめん! 席数、考えて、なくて……うっ、うぇっ、うえっ」

「泣くなって。大丈夫、今見たら2人席なら人数分空いてた。

 2:2で座って出るときだけ合わせればいいだろ」

「そうだね」


陽司の言った二つの2人席は、互いに結構な距離がある。

カウンターではなくテーブル型だから、対面して食事することになる。

となれば、ここは勿論……


「あ、そうだ。怜二と水橋、一緒の席で大丈夫か?

 俺、宮崎から遊園地の話聞いてみたいんだよ」

(えっ!?)

「うん、いいよ」

「えっと、ものすごい、喋る、よ?」

「だからこそ。食うのが遅れすぎない程度に頼む」


雫を誘おうと思ったら、好都合なことに陽司がこの提案。

これはありがた……ん? 何だ手招きして。でもって耳を貸せと?


「……事情は聞いたから頑張れ」

「何を……!?」


何の話かと思ったが、これ一つしかないよな!? 陽司にもバレてる!

サルか翔かは分からんが、これは完全にバレてる!


「あれ、もしかして勘違い?」

「……ノーコメントで」

「OK。どっちにしろ楽しめ」


翔とは違う、心からの思いやりが伝わる爽やかなイケメンスマイル。

ありがたいことには違いないが……後でどっちかシバかんと。




グリル系のメニューが充実していると聞いたから、俺はハンバーグステーキを選択。

そして雫が選んだのは。


「チキンステーキ?」

「鶏肉、スイーツの次に好きだから」


そういえば、初めて学校で一緒に昼飯を食った時に言ってたな。

あの頃は俺が補助しながらの会話だったけど、今じゃ俺は必要ない。

必要になる場面は、『俺』との会話の時。


「色々回ったけど、疲れてないか?」

「疲れたけど楽しかったし、なんか疲れも気持ちいい」

「その感じ分かるわ。じゃ、エネルギーを補充するか」

「うん。いただきます」


豪快に焼かれた肉の塊にナイフを入れ、一口大のサイズにしてフォークを刺す。

味は……うん、普通に美味しい。いい肉使ってるのかも。

そこそこ高かったけど、単純に遊園地価格ってだけでもなさそう。

これは嬉しい誤算だ。


「美味しいね」

「あぁ。結構食べ応えあるし」


勿論、一番の嬉しい誤算は食事ではなく、陽司のアシスト。

バラしやがったどっちかにはお仕置き予定だが、結果オーライということもあり、

怒り100%では当たれないな。


(それにしても、食べ方綺麗だな)


一つ一つの所作がとても丁寧で、綺麗。食器がぶつかる音も全くしない。

育ちの良さってこういう所で出るって言われるけど、完璧としか言い様が無い。


「綺麗だな」

「えっ?」

「え? あぁいや、雫の食べ方、綺麗だなって」

「あ、そっか……ありがとう」

「いやいや。それと、雫自身も綺麗だから勘違いじゃないぞ」

「怜二君!?」


自惚れじゃないから安心しろ。

誰がどう見たって綺麗だし、俺にとっては尚更だ。


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