20.What are you thinking?
分からなくなってきてる。
水橋が、俺のことをどう思っているのか。
勘違いのシンパシーでこの関係ができたが、
どうやら俺が思っているより、水橋は俺を信頼してくれているらしい。
で、今よく分からなくなってるのが、『信頼』の部分。
前提として、今告白しても200%、水橋は俺の彼女にならない。
別に惚れられてる訳ではないんだ。そこは間違いない。
けど、ここ最近の俺と水橋の関係性は、どう形容したらいいんだろうか。
水橋は、普通のJKになることを望んでいる。
その一環として、ここ最近の事柄がある。
でも、この前の件や、初めてゲーセンに行った時のことを考えると、
なんか、デートと言えなくも……
「いやいや。絶対あり得ない」
しゃしゃり出るな、脇役よ。
俺はそんな主人公みたいなマネはできんのだよ。
俺の人生の主人公は俺だが、世界から考えたら男子高校生Aなんだよ。
勘違いしないことに関しては自信持ってるが、
このままだとどっかでパンクして、大変なことをやらかすかもしれん。
ということで、心の中の変な期待を崩す為、水橋にメッセを送る。
『水橋、今大丈夫か?』
『うん、どうしたの?』
『俺と水橋って『友達』で合ってる?』
と、言うにはちょっと違う関係だと思ってたんだが、返ってきたのは。
『ボクは友達になれたと思ってたんだけど、違った?』
『いや違わねぇ。ありがとう』
ありがたい。だいぶ不躾な質問だったけど、安心した。
まぁ、この後に続くのは。
『突然どうしたの? 何かあった?』
そりゃそうだよな。こんな妙なこと聞かれたら。
あったというか、あるんだけども、どうごまかしたものか。
いや、ここはごまかすというより、この間のことツッコむべきか?
『この前のことだけどさ、『あーん』はもうやめとけ。
勘違いしかねん』
『勘違い? どういうこと?』
俺の下心を堂々話すことになるから、ここで察して欲しかったが。
逆に考えよう。俺が今、どういう考えを持っているか明かすチャンスだ。
水橋があれだけ自分のことを明かしてくれたんだし、
俺もある程度は、健全な男子高校生なりの下心持ってることは伝えてしまおう。
『水橋が俺に惚れてるのかと思った。気持ち悪い勘違いすまん』
……うーん、ぶっちゃけ過ぎたか? 我ながらキモい。
これは水橋としても返しにくいよな。今日はこれで終わ……
『時に藤田君。君から見て、ボクって可愛い?』
!?
いきなり何を聞くんだこいつは!?
これはどういう意図だ?
普通に答えるなら、文句なしに可愛いとしか言い様ねぇけど、
水橋の考えることって、結構ズレてる場合が多いんだよな。
そこから考えると、全くもって別の意図がありそう。
(それが一体何なのか、までは見当もつかんが)
思考を放棄したくはないが、分からんときは正直に答えるしかあるまい。
それっぽくはぐらかしてもどうにかなるのは、主人公だけの特権だし。
『普通に可愛いと思うが』
『そっか。ありがとう。ねぇ、今電話かけてもいいかな?』
電話か。
メッセージと違って、その場その場での返答が要求される。
ちょっと戸惑ってる今、あんまり使いたくないが、断るほどでもない。
承諾の意のメッセを送ってから数秒。コール音が鳴る。
「ほい。何だ?」
「藤田君、もう少し聞いてもいいかな?」
「おう」
「藤田君って、ボクのこと好きだったりする?」
「…………………………。」
当方脇役。難聴は患ってないし、都合よく雑音が入ってきたりもしない。
ちゃんと、聞き取れてしまった。
(……どうしよ、これ)
急展開にも程がある。
驚きが一周して、逆に落ち着いた。
水橋が何を考えてるか分からないというのは、今に始まったことではない。
素性を知る前も、知った後も、程度の差やその意味は違えど、こいつはどこかズレてる。
そうじゃなきゃ、こんなマネはありえねぇ。
「あ、やっぱ今のなし。ごめん、変なこと聞いて」
考えている間に結構時間が経っていたのか、水橋の方から察してくれたらしい。
答えは用意してあるけど、意図が全く掴めない中で言える程、俺は主人公気質じゃない。
……いや、これは主人公とか脇役とか関係なしに、俺がヘタレなだけか。
「気をつけろよ。勘違いされかねないっていうのは、そういうとこだ」
「大丈夫。こんなこと聞くのは、藤田君だけだから」
言ったそばから。
水橋の脇役というのは、結構気疲れしそうだ。
【サルの目:生徒データ帳】
・水橋 雫
帰宅部
ルックス S
スタイル S
頭脳 S
体力 S
性格 ?
【総評】
分からん。全く分からん。
とりあえず見た目と成績関係は完璧だが、何を考えてるのか分からん。
全てにおいて人間離れし過ぎていて、判断がつかない。
ランクSでもいいかもしれないが、ちょっと怖いので保留。
総合ランク:判定不能