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199.育ち盛りは食べ盛り

「うわーっ、すげー!」


夕食は宴会場で食べるということなので、早速部屋へ。

人数が人数なだけあって壮観だな。一応、クラスごとの区切りはあるけど、

その中での席順は決まってないようだ。


「テンション上がるよな、旅館のメシって!」

「普通に腹減ったわ。部活の後みてぇ」

「さてさて、写真、写真っと……」


焼き魚に煮物、漬物に果物、他色々。

ご飯は各所に点在しているおひつからか。十分食えるな。


「こんなん食ったことねぇよ! ……ん、怜二どした?」

「へ?」

「いや、何かあんまりはしゃいでないもんで。

 怜二って冷静なタイプとは知ってるけどさ、嬉しくないん?」

「いやいや、嬉しいって」

「そっか。となると俺が盛り上がり過ぎてるだけか」


秀雅の指摘を受けるまで気づかなかったが、顔に出てたか。

このとき思い出してたのは、とある料亭での出来事。

雫の親父さんに連れられて、これ以上の料理を食べられた。

この旅館のメシも十分に上等なものだが……流石にアレと比べると。

それが脳裏に浮かび、どうにも大はしゃぎする程にはなれない。

非常に贅沢で、不躾な話ではあるけどさ。


(それはそうとして、どの席に座ろうか)


できることなら雫の近く。まだ来てないみたいだから時間を稼ぎたい。

といっても、班のメンバーがバラバラに座るのも不自然だし、

結局は運に頼ることになるか?


「ところで翔よ、メシは誰を前にして食いたい?」

「美女!」

「だよな。ということで女子班来てから席は決めようぜ。

 俺の調べによれば、アベレージが一番高いのは3班だ。

 それまでじっくり待とうや。……な?」


サルが俺に向けて、小さくピースしてる。

なるほど、翔を使って丁度良い理由を作ると。

何かと助けてもらってばっかだな……ありがたい。


「女子の3班って誰いるんだ?」

「鞠、麻美、陽奈子、梓、あと水橋。文句ねぇだろ」

「OK。絶対に真正面確保する」


声色が落ち着いている時の翔は、むしろ燃えている。

こういうことにしか燃えないという残念な所はあるのだが、

こうなった時の翔の行動力とその結果はかなり信頼できる。


「他の奴らの動きをきっちり計算しながら……あ、藤やんちょっと耳をば」

「何だ?」

「……ぶっちゃけ、お前が一番座りたいのって水橋の正面だよな?

 そこは譲るし、他の3人もズラすようにするから安心しろ」

「マジか」

「ガチよ」


翔にもアシストしてもらえるとは。めちゃくちゃ恵まれてるな。

こうまでしてもらったら、美味しくメシを食うだけじゃダメだ。

積極的にトークをしていこう。




席順は無事にサルと翔、そして俺の狙い通りに決まった。

男子班は入り口側から順に陽司・翔・俺・サル・秀雅。

その向かい側、入り口側から順に穂積・門倉・雫・宮崎・日下部。

翔がそれとなく陽司と秀雅の席を指定してくれたおかげで、理想的な形に。

雫の真正面に座ることができた。


「とりあえず1日目おつかれ。ま、本チャンは明日からだけどな」

「遊園地に自由行動! この為にバイトかけもちしたよー!」

「日下部さん。一応は学業の一環ということを忘れないように」

「それにしては、自由行動は遊び場っぽいの入れてたよね?」

「……まぁ、実際にそこまで見たいと思うものはないのは事実だけど」


以前の門倉だったら不安だったが、今の門倉なら問題はない、か。

文化祭の前みたいな出しゃばりはしていないようだ。


「とりあえずご飯盛るか。茶碗よこしてくれ」

「私も盛ろうかな。どれくらいがいい?」


おひつの数は、1つの班につき一つ分ぐらいか。

米の量は5合ってとこだが、おかずには困らんから空になるだろ。

あー……この湯気の香りよ。食欲が尚のこと刺激される。


「あ、あたしご飯いらなーい。糖質制限やってるから」

「梓ちゃん、折角なんだからちゃんと食べた方がいいよ?」

「このスタイルの維持の為には必要なの。ほら、果物もあげるから」

「栄養が偏るわよ。好き嫌いしないでちゃんと食べなさい」

「あたしのこれは好き嫌いじゃないの。栄養なんてサプリで取れるじゃん」


糖質制限ねぇ……成長期にやっていいものかと思うんだが。

というかスタイルをよくしたいなら運動しとけよ。

もしかしたら部活入ってたりで既にしてるのかも分からんが。

ただ、このメニューだと……ちょっとだけ言っとくか。


「ここから米抜いたら、カロリー足りなくてむしろ太るぞ?

 適度に食わないと、体が脂肪を溜め込む体質になるから」

「……え、それマジ?」

「マジ。例えば筋トレはたんぱく質を取るのが重要だけど、

 足りないカロリーは脂質と炭水化物で摂るから。なぁ陽司?」

「あぁ。下手に抜くと変な痩せ方しちまうしな。

 だから、軽くでいいから食っとけ」

「んー……それじゃ半分ぐらいお願い」


成長期に糖質制限をするのは、ドカ食いするのと同じぐらいに危ない。

しっかり食べて、しっかり運動するのが健康的な肉体を作る方法。

その分かりやすい例が、俺の目の前にいるし。


「つーかさ、怜二見ろ。体重減らすだけならともかく、綺麗になりたいんだよな?

 だったらキッチリ食った上で動いた方がいいだろ」

「うーん……でもなぁ……」

「そうだ! 怜二、ちょっと腹筋見せてみ? はっきり見れば納得するだろ」

「は!?」


そこまで大したものじゃ……いやいや、見せられんわ!

こんな公衆の面前で腹を晒すとか……


「せいっ!」

「うぉっ!?」


翔!? お前、俺が戸惑ってるスキに何してんだ!?

あー、女子がドン引きして……


「怜二くんすごーい!」

「へぇ、結構鍛えてるのね」

「腹筋って、本当に、割れるんだね」

「うん、納得した。ちゃんと食べることにする」


……ねぇな。結構賞賛されてる。

体脂肪率は一桁だから、浮き上がってはくるけど……


「1、2、3、4……」


そして雫よ、俺の腹筋を数えるな。非常に恥ずかしい。


「という訳だ。女は筋肉つきづらいし、簡単には割れないから安心しろ」

「藤くん、後でメニュー教えて。今日からやる」

「別にかまわんが、無理はするなよ。無理すると痛めるし続かないから」


周りの評価は上がったっぽいけど、雫から見たらどうなんだろ。

逆にキモがられてたりしなきゃいいんだが……

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