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198.知は智あってこそ

無事に駅へと到着し、忘れ物をしないように気をつけつつ下車。

あれが京都タワーか……高ぇな。


「駅降りてすぐに名所見れるのがいいよな、京都のろうそく!」

「古都を照らす原初の灯り……それが現代の名所になってる。

 なんか、ロマンチックだよな」


実は、京都タワーのモチーフはろうそくではなく灯台。

事前に調べたから、俺はそのことを知っている。


「あぁ、俺もそう思う」

「流石怜二。分かってるじゃん」


だが、それをここで言ったところで興が冷めるだけだ。

楽しみ方、味わい方は人それぞれ。それを邪魔してどうすんだよ。

府民の方々は、この勘違いに思うところはあるだろうけど。




1日目は指定場所の観光。

教科書でも見たことのある定番スポットが中心。

当然、生で見るのは初めてだし、それなりの感慨もある。


「ところで君ら、あれの名前知ってるか?」

「金閣寺!」

「あ、やっぱりそう答えちゃう? チッチッチ、甘いな」


普通に教えるならともかく、指を左右に、完全に人をバカにした喋り方。

透がいなくても、ウザい奴はいるもので。

それがうちのクラスの教師やってるんだから驚きだよ。


「君らの為に特別に教えてやるよ。本当の名前は……」

「鹿苑寺。その中にある金閣が有名だから通称は金閣寺になってる」

「……お、おぅ。そういうことだ」


事前に調べたからな。いちいち言うつもりはなかったが。

こういう真似をする奴は一度凹ましておいた方がいい。

それがいつも調子に乗ってるうちの担任なら、尚更のことだ。


「怜二ナイス。よく知ってたな」

「付け焼刃だけどな。それ以上に詳しい歴史とかは知らん」

「十分。俺も誰が建てたかぐらいしか知らんわ」

「サルっちとかはもっと知ってたり?」

「生憎、こういう学業系はさっぱりだ。観光スポットはともかくとして。

 ということで、その辺は怜二に任せる」


大切なのは知識をひけらかすことではなく、身につけて活用すること。

そして何より、素直な気持ちで観光を楽しむことだ。

だから先生、本当に知ってたのか疑われている中で何故俺を恨めしそうに見る。

俺は透のお守りは勿論、スケープゴートになるのもやめたんだよ。

この件に関しては、無粋な真似をしたアンタの自業自得だ。


「藤やんは物知りだよな。他にも聞いていいか?」

「いいけど、何だ?」

「舞妓さんと野球拳する方法を……」

「二丁目に行け」

「オカマさん! 舞妓さんじゃなくてオカマさん!」


こいつも無粋というか野暮ではあるんだけども、楽しいから問題ない。

話題のタイミングとしては完全に旅館での話だが。

とりあえず、ここでは適当に八ツ橋でも買って送っておくか。




続いて訪れたのは、京都といえばやはりここ、清水寺。

『日本の世界遺産と言えば?』と聞かれた時、結構な人が最初に浮かぶはず。

少なくとも三位以内は固い。


「ここから飛び降りるってなったら、そりゃ思い切ってるな」

「ゲーム的には即死はないとしても、大ダメージ必至よ」

「時に物知り藤やん、この清水さんの豆知識などありますかい?」

「昔は実際にここから飛び降りた人も結構いたらしい。

 けど、生存率は8割超えてるそうだ」

「いつの時代にもバカっているんだな。草木がクッションになるとはいえ」


地面直撃じゃなければ、多少は和らぐからな。怪我はしたとしても。

後は飛び降りたのが主人公である場合。『主人公は死なない』は、補正の基本だし。

……今の透が飛び降りたらどうなるんだろうね。補正はほぼ消えてるが。

そもそもとしてあいつの場合、飛び降りるより他の奴を飛び降りさせて、

その手柄だけを自分がっていうパターンか。


「高いねー。雫ちゃん、こういうとこ大丈夫?」

「うん。フェンスのある所なら平気」

「女神様は元から高いとこいるから大丈夫っしょ。ねぇヒナ?」

「そう、かも。けど、雫って、思ってたより、柔らかいよ?」

「あー、それは確かに。お(シズ)も結構普通なんだなって。

 まぁ、一部分については大変ふんわりとやわらかそうとは分かってましたが」

「えっ……?」

「日下部さん。女性同士とはいえ、言動に慎みを持ちなさい」

「えー、これくらいいいじゃーん!」

(……大丈夫だろうか)


結構、雫がいじられ役に回っている。けど、そこまで不快には思ってないか。

ある程度なら引っ掻き回してくれる奴がいた方がやりやすいのかもな。

本当にヤバくなったら、門倉がブレーキかけてくれるだろうし。


「そういやさ、何か願い事叶う滝ってあったよな?」

「音羽の滝のことか?」

「そうそれ。藤やん、何が叶うんだっけ?」

「学業成就、延命長寿、縁結び。3本の滝から選んで、そこの水を飲めばいい」

「つまり3つ飲めば成績よくなって健康になってモテまくるんだな!?」

「言うと思った。そういう欲張りは全部の効果が逆になるそうだぞ」

「縁結びだけに慎みます!」

「俺は健康を祈願しようかな。大会もあるし」

「んじゃ俺は学業。ゲームを楽しむ為には好成績がいるからな」


実は、同じ源流の水を三つに分けてるだけというのも知っているが、そこは黙る。

沈黙は金、雄弁は銀。だから俺は黙って……縁結びの水を頂こうか。




一通り回って、チェックイン時刻になったら旅館へ。

外装・内装共に悪くないし、部屋も班ごとにある。


「秀雅、サル、何か遊べるの持ってきたか?」

「ゲーム機がここに」

「そして各先生方の見回り時間のデータがここに」

「いよっ、Mr.情報通、サルっち!」

「へへっ、褒めても情報しか出ねぇぜ?」


こと情報を集めることにおいて、サルの右に出る者はなし。

毎度どうやって掠め取ってるのか不思議でならんが。


「注意するのは横先(よこせん)だな。横先はフェイントかけてくる。

 去ってから30秒は大人しくしてた方が無難だ」

「ほいほい。それじゃ荷物整理するか」


うちの学校の修学旅行は私服。

どちらかと言えば機能性重視で、動きやすさと防寒性を重視して選んだ。

……で。


「さて……そろそろ作戦会議をするか」

「女子部屋と風呂は諦めろ」

「まだ議題言ってない! 合ってはいるけど!」


普通に監視があるからな。

連帯責任になるのは勿論、友人から犯罪者は出したくない。

更に俺としては、雫以外の女子に興味は無いし。


(一応、メッセ送っておくか)


直接行けることはないにしても、話すことはできる。

今回はあまり話したことない奴と同じ部屋だが、心配ないとは思うけど。


『そっちの部屋の感じはどうだ?』

『楽しいよ。皆と仲良くやってる』


うん、やっぱり。適当にスタンプ送って終わり、と。

お、雫からもスタンプが……ねこまるか。相変わらずなんかムカつくぶさかわ顔。

けど、これを押したのが誰かということを考えると……


「ふふっ……」

「どうした藤やん。急にキモいぞ」

「いや何でもない。ちょっとおやつ買ってくる」

「了解。あ、ちょっと待った。それなら俺の分も頼んでいいか?

 駄賃込みで金渡すからさ、適当に何か頼む」

「俺も。今日はゲームでオールと行きたいし!」

「明日もあるんだから、寝不足にならん程度にな」


いい旅にしたいし、いい旅であって欲しい。

まったりと行こうか。

【サルの目:生徒データ帳】

日下部(くさかべ) (あずさ)

帰宅部

ルックス B+

スタイル B+

頭脳   C

体力   B

性格   C+


【総評】

THE・今時のギャル。

下ネタに非常に寛容で、女子へのセクハラは日常茶飯事。羨ましい。

成績はあまりよくないが、変なところで頭は回る。

俺と翔を足して2で割って女にしたらこいつになるか?


総合ランク:B

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