表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
141/236

141.共走連対

年4回の学力テストの中、唯一学期末に行われない、中間テスト。

聞いたところによれば、例年この辺りで落ちこぼれる奴が出てくるとのこと。

故に、かなり気合を入れて臨んだところ。


(……これは)


雫との勉強会では、ほぼ全部の科目をしっかり復習できた。

でも、実際のテストとなったらいくらか抜け落ちる……はずなんだが。


(分からない問題、無かったな……)


いつも、分からなくても回答欄は埋めることにしている。

今回もそうだけど、『分からない』『自信が無い』という回答が一つもない。

英語は穴埋め・読解・英作文全て問題なし。一番ラクだったかも。

雫が使っているインパクト例文暗記法がピタリとハマり、ドバドバ思い出す。

きっちり見直す時間まで取れたのは初めてだ。

少し苦手な国語も、雫が教えてくれた解法を使ったらサクサク解けたし、

これはかなりの高得点が期待できそう。


「お疲れー! どうよ、怜二?」

「まぁ、そこそこ。秀雅は?」

「いつも通り、平均のやや上ってとこだな。

 ま、俺としてはゲーム禁止にならない程度に取れれば万事OKだが」

「その程度で満足してるようじゃ、センター試験で泣きを見ること必至ね」


……で、門倉は秀雅にも絡むのか。

夏休みにプールに行った時もそうだったけど、いい加減認めるとこは認めないか?


「ふっふっふ。第一志望C判、第二志望B判、第三志望に至ってはA判だ。

 どうあろうと大学に行ける俺がどうして泣きを見るのかね?」

「どうせ大したとこ志望してないでしょ? 定員割れの私大とか」

「確かにC~Eラン大辺りが本線だが、そこまで簡単な大学はねぇぞ?」

「はいはい。受かればいいわね、その程度でも」


その辺の大学だったら、大手は難しくても中堅クラスの企業には就けそうなものだが。

門倉にとっては最上位クラスの大学以外、大学として扱ってないのかもしれん。


(雫はどうかな)


メッセを送って、手応えを伺う。

返ってきたのは『いつも通り、かな』とのこと。

だよな。いつもほぼ満点じゃ、上がりようがないからな。

今回は、俺はどこまで迫れるだろうか。




(……マジかよ)


全ての科目のテストが返却され、成績優秀者の順位表が貼られる。

普段の俺の成績は、この表の最下部に載るか載らないか、という程度。

下から3番目までに無ければ、順位表に載れなかったと考えるのが自然。

今回の順位表の下部、そこに俺の名前は無かった。


(こんなこと、あるのか)

「怜二! お前凄ぇな!」

「藤やんどうしたよ!?」

「うぉっ!?」


曰く、「中の上と下を行ったり来たり」の陽司。

曰く、「最高に運と調子が良ければ、平均点」の翔。

左右の肩を同時に叩かれ、同時に鼓膜を揺らされた。


「頭いいことは知ってたけどさ、こんな点数取れんのかよ!」

「何々? 今回相当ガチったかー?」

「俺が一番驚いてるよ」


1つ1つ、返ってきたテストの結果を見る度に驚いた。

常日頃から勉強はしているが、こんなことはなかった。


「何にせよおめでとう! っていうか、むしろどこ間違えたんだ?」

「国語で一個間違えたのと、物理で計算ミスがあって……」

「ぐらいだろ? そりゃこんな点にもなるわな!」


成績優秀者順位表、トップ3。

全科目満点を達成し、いつも通り1位となった、水橋雫。

同じく極めて高い点数を獲得し、3位につけた、門倉麻美。

そして、その間。


「勉強法変えた? それとも時間か」

「いや、いつもと一緒。時間はちょっと増えたかもしれないけど」

「何か隠してねーかー?」

「何を隠すってんだよ」

「カンペとか」

「ねぇよ」


『2位 2年1組 藤田 怜二』

そこに載っていたのは、紛れも無く、俺の名前だった。




「えー、今回のテストだが、皆知っての通り、我が1組が2年生のトップスリーを独占した!

 おめでとう!」


ホームルームで、拍手が沸き起こる。そして、クラス全体の視線が俺に向く。

雫はいつも1位だし、門倉もトップ争いの常連。

誰が一番目立つかとなったら、かつてない出来事を起こした俺に決まってる。


「ここだけの話、平均点も学年トップだ。俺も鼻が高いよ!」


はっきり言って、生物を担当するうちの担任が何か貢献した覚えは無いんだがな。

説明が分かりづらい上にクソつまらんって評判だぞ。

サルからその情報得て、俺は理科の選択科目は物理にしたし。


「ま、君らには期待してるよ。なんたってこの俺が担任なんだからな!」


実績を出している面白い人気教師なら、これも冗談として場が沸く。

だが、有能か無能かで言えば後者寄りのうちの担任がほざいたところで、

イラっと来ること以外に何もねぇよ。……あ、翔が机の下で中指立ててる。

計算が苦手だからって、生物選んじゃったんだっけ。ご愁傷様。


それはそうと、雫に感謝しなきゃな。

一緒に勉強することで、捗りまくったし。

今回のこの成績は、雫が俺にくれたものと考えるべきだ。




「怜二、祝勝会だ!」

「藤やんの分のメシ代は俺らが払うからよ、パーッと行こうぜ!」

「悪い、今日はバイト入ってるから今度な」

「あちゃー。なら仕方ねぇな。次、いつ行ける?」


いつものメンバーで集まって、テスト明けの遊びの計画を立てる。

テスト前のバイトは減らしてもらったから、明けには増やす必要があるんだよな。

それでも事前に相談したりして、土日のどっちかは空けたりしてるけど。


「にしても、門倉超えるなんてな」

「これはあの時のメガネ効果か? ってことは、俺もメガネかければ!」

「似合わんからやめとけ。というか、それ完全にバカの発想だろ」

「メガネっ娘は好きだけど、メガネ男でいい感じのキャラがいた覚えが……」

「Oh、辛辣ゥ!」

「言っても1点差だし、まぐれだっての」

「謙遜しなさんなって。いいんちょも予想外だったろうな」

「本当にそうね」


後ろから聞こえた声は、今回3位の門倉。

また嫌味でも言いに来たのかと思ったが、今回は違う。

何でもかんでも成績で考えるお前なら、そうはならな……




「不正してまで、私に勝ちたかったのかしら?」




……は?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ