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134.水橋父の誘い

「その内、怜二君の家にも行ってみたいな」

「一度来たことあるだろ?」

「勉強会じゃなくて、まるっと遊ぶ目的で。2学期の中のどこかで行ってみたい」


透との交遊を断った今、俺の部屋に俺以外の誰かが入ることは殆ど無い。

男友達連中に関しては、遊ぶとしたら殆ど外だし。


「問題はどうやって透の目をかいくぐるかだな」

「そこなんだよね……」


透は未だに雫を狙ってるし、今は何かと不安定な状態。

そんな中で俺と雫に交遊関係があると知ったら、何をしでかすか分からない。

足がかりができているのに、あいつの身勝手で全てが瓦解する可能性だってある。

どこからどこまでも、自己中心的な男だからな。


「誰かと遊びに行ってる時と合わせて、というのが一つの方法だけど、

 そこまでは知らないしな。つーか、興味ない」

「それとなく、穂積さんから掴めないかな。

 お休みの日に誰かと遊びに行くとしたら、多分穂積さんとが一番多いと思う」

「だろうな。門倉は明らかにインドア派だし、八乙女は練習に付き合うのがキツそう。

 古川先輩も離れたし、尚更だろうよ」

「愛想尽かされる前に、誰かに決めないのかな」

「尽かされると思ってねぇんだろ。それなら、後は勝手に転げ落ちるだけだ。

 本人がセーフティだと思ってるなら、俺は何もしない。

 んなことに回す時間があったら、雫と遊んだりしていたい」

「ボクでよければ、いくらでも。ボクも楽しいから」


いい友達を持った……いや、『友達』止まりじゃダメなんだ。

思いがけず関係が一歩進んだけど、そこからのもう一歩が至難。

どこかで、何かの決め手が要る。今は見当もつかないが。


(考え込むよりは、閃きと運に賭けるか?)


脇役補正が外れたなら、人並みの運は俺にもあるはず。

その中で起きうる事象の中に、答えはある、かもしれない。

いずれにしても、自分でやれるだけのことはやってからの話だけどな。


「何か読む? それとも、ちょっとネットで動画でも見てみるか」

「軽くネカフェだな、ここ」

「あはは、そうかも。勉強スペースとは区切ってあるから、その辺はメリハリつけて。

 勉強する時も遊ぶ時も、目一杯でいたいから」

「流石は成績No.1連続記録保持者」

「おかげ様で。でも怜二君も最近、調子いいよね?

 今度の中間テストはいい線行くんじゃない?」

「だといいんだけどな」

「というか、なってもらわないとボクが困るというか、悲しいというか。

 こんなに頑張ってもらったんだから、きっと目に見える成果が出るよ」

「……了解。その期待に応えられるように頑張るわ」


雫は大体、どんな顔をしていても可愛い。だけど、俺は笑顔の雫が一番好きだ。

その為なら何だってするし、何でも出来そうな気がする。

ここはとことん、頑張るとするか!




「相変わらずベタベタしてるな」

「それがこの子の性格だからね」


雫から借りた漫画を読む。

時折、雫が解説を挟むが、うざったくない加減を分かっている。

だから、俺は心の内に思った感想を適度に言葉にしている。

こうすることで、漫画がより楽しく読める。……で、だ。


「さっきから何をしている?」

「何のこと?」

「俺の頭に何を乗せてる?」

「バレた?」

「バレないと思ったか?」


視界から雫が消えたと思ったら、頭に何かが乗った感触。

それをしばらく放置していたら、スマホのカメラのシャッター音が。


「ほとんど動かないから、ねこまる積めないかなって。ほら」


雫が撮ったと思わしき画像には、頭にねこまるのぬいぐるみを3つ、鏡餅みたいに積まれた俺。

よく積めたな。俺も意識して動かないようにしたっていうのはあるけど。


「報道部に出してみようかな。文化祭用の写真集めてるって聞いたし」

「サルにどう説明つければいいんだよ」

「冗談だって。これ、ボクが独り占めしたい」


……俺のことじゃないんだよな。9:1でねこまるのことだろ。残りの1に俺がいるかも怪しい。

この曖昧な距離感、どうすれば詰められるんだろうか。




漫画を読んだり、雑談したりで静かに時間が流れることしばらく。

ふと時計を見ると、午後5時を過ぎていた。


「ところでさ、今日も泊まってく? お兄ちゃんから聞いたと思うけど、

 明日の朝ごはんもご馳走できるよ」

「流石に帰らせてもらうわ。楽しかったけど、明日の用意する都合もあるし。

 色々とありがとな」

「こちらこそ。ボク、本当に楽しかった」


まさか、こんなガッツリ宿泊するなんて思ってなかった。

誰に感謝するべきかってなったら、発端は渚さんになるんだろうけど、

これだけよくしてくれた水橋家全員が、その対象になるだろう。


「じゃ、そろそろ夕ご飯だから下りよっか。

 ……お母さん、流石に分かってればいいんだけど」

「まぁ、大丈夫だろ」

「そう思う?」

「いや全く」

「よく分かっていらっしゃる」


今度は何を突っ込まれるんだろうな……昨日のこともあるし、

多少なりとも落ち着いてくれればありがたいんだが……




「連れて行きたい所がある」


俺と雫の不安は、思いがけない提案で霧散した。

源治さんから、外食の誘いが来て。


「少し、話したいことがあってな。

 海と一緒に、来てくれないだろうか」


雫と渚さんには、席を外してもらいたいということだろう。

そう考えると、それなりに重要な話だと考えるべきだ。


「分かりました」

「ありがたい。渚、そういう訳だから俺と海の分の夕食はいらん。

 帰りに何か、買ってくるものはあるか?」

「特に何も。ゆっくりしてきなさいな」

「分かった。適当に土産は用意する。

 怜二君は、そのまま家に送っても大丈夫か?」

「むしろありがたいです」

「そうか。それじゃ、荷物を用意してくれ」

「はい。ということで……渚さん。昨日今日と、ご馳走様でした」

「ありがと♪ またいらっしゃいな」

「雫。色々とありがとう。楽しかったぜ」

「ボクも楽しかった。それじゃ、また明日」


ここを出たら、源治さんと海と一緒にメシを食ってから帰宅。

最後に挨拶、しとかないとな。

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