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127.ルートは決めたけど

「ほーい」


気持ちを落ち着けてからノックをして、雫の部屋の隣、海の部屋へと入る。

防音しっかりしてるらしいから、さっきのことは聞こえてないはず。


「うぃっす。コレが布団な。他にかけるもんいるか?」

「いや、これでいい」


季節の変わり目はどういう布団構成にするか悩みどころ。

枚数だけではなく、タオルケット・毛布・布団と種類も考える必要がある。

この時期なら、それぞれ一枚ずつで十分。


「明日もゆっくりしてけよ。月曜の朝食までは保証するからさ」

「明日朝に出るからお構いなく」

「いや、これは親父からの頼み。ちょっと雫のことを話したいんだと。

 ただそっちにも予定とかあるだろうし、強制はしない。

 そもそもとして、今日の泊まり自体が無理矢理だし……悪いな、本当」

「そういうことなら、もう少しゆっくりさせてもらう。

 元々予定も無かったし、泊まりも楽しく過ごさせてもらってる。

 むしろ、ありがとよ」


効率よく復習ができた勉強会、おいしい夕食、そして……告白。

約一つ(風呂場の件もあるけど)、予想外の出来事が起きてしまったけどな。

とはいえ、プラスの結果だったからいいんだけど。

で、それはそうとして。


「凄い部屋だな」

「変態じみてるって言って構わんぞ」

「いや、そこまでは……」


もしかしたら、というぐらいの予想だったが、海の部屋はその通りだった。

家具の色調はモノトーン系が多く、引き締まった印象を受けたが、

何よりも目を惹くのは、壁一面に飾られた写真の数々。主に雫の。

正直、典型的なストーカーの部屋のイメージそのまま。どんだけ溺愛してんだ。

盗撮っぽいものは一枚もないから、落ち着いて見ればいいんだけど、

前情報無しにこの光景を見たら、落ち着くには時間がかかりそう。


「これ、雫は知ってんの?」

「一応は。黙認と諦観って感じで許してもらってる」

「まぁ、偏愛とかそういう方向にはならないと思ってるけど……」


海の性格自体はカラッとしてるから、大丈夫だと信じたい。

別に海は雫を自分だけのものにしたい訳じゃないんだ。

ただただ、妹のことが大好き過ぎるだけなんだ。

そうじゃなかったら、俺は初めて出会った時点で消されてるし。


「しかしさ、雫の幸せを考えると、お前が彼氏になってくれたらいいと思うんだがな」

「なぁ、海って俺と雫の関係に関しては中立じゃなかったか?」

「今はどっちかっていうと賛成寄りだな。お前はいい男だって分かったし。

 そろそろ、告白してもいいんじゃね?」

(さっきしたんだよなぁ)


その結果はカップル成立でも玉砕でもない、『友達以上恋人未満』から。

現状維持か、ちょっと進んだ程度。でも、今はそれで十分。

ここから発展すれば、『友達以上』と『未満』が消える。


「今はまだ、ただの友達っていう範疇だと思う」

「そうかー? まぁ、お前がそう言うならそれでいいけどよ。

 ところでさ、怜二の親父さんとお袋さんってどんな人?」

「どんな……うーん、極々普通だと思う。親父はちょっと口うるさくて、

 その分お袋は放任主義って感じで。バランスは取れてるかな」

「ふむ、となると嫁姑問題にはならないな。舅が少し気になるぐらいで」

「……え?」

「仮に付き合うとしたら、最終的にはどっちかの家に入るだろ?

 その時にどうなるか考えないと」

「は!?」


いやいや、気が早いって! まだ付き合ってすらいねぇのに、結婚した時の話!?

一体何年先の話をしてるんだよ!?


「夫婦仲が良好でも、義父義母との関係が悪くて離婚ってパターンはよく聞くし、

 家庭を築くとなったらお互いが好き合うだけじゃ……」

「待て待て待て! 早い! 早過ぎる!」

「そうでもねぇぞ? 怜二は来年で18だろ? お袋はお前の頃に籍入れたし」

「それは結構な少数例だっての! 法的にはできるけど、学生結婚とか無理がありすぎる!」

「確かに親父は7歳上だから、その頃には食い扶持稼げたっていう違いはあるけど、

 将来設計と家族計画は早い内からって、親父も言ってたぞ?」

「限度があるって!」


海! そして源治さん! (少なくとも相対的には)まともだと信じていたのに!

確かに付き合った先のゴールインはそういうことなんだろうけど、早い!


「仮定として家庭を築くとしても過程超え過ぎ! せめて学士課程終えてから!」

「かていがかていでかていをかてい?」

「繰り返してごめん! でもとにかく早いっての!

 もっと色々と、間にあるだろ!」

「……あ、同棲?」

「合ってるけど違ーう! まず、俺と雫は付き合ってすらいねぇから!

 そこが始まらないことには意味がねぇだろ!」


気の早過ぎる源治さんと海、踏み込み方がおかしい渚さん、何かと突拍子もない雫。

水橋家にまともな人物はいないのか。


「ま、その辺の話は明日、親父も交えてやろうや。

 付き合うって決まった訳じゃなくても、可能性としては依然としてお前が1位。

 でもって既に家族にも認められてるし、後は雫がどう思ってるか。

 ぶっちゃけた話、俺は時間の問題だと睨んでる」

「……俺は、まだ相応しい男じゃないと思ってる。例えば、頭の良さとか。

 俺は高校卒業したら進学するつもりだけど、仮に雫も進学するつもりだとして、

 同じ大学に行こうとなったら、俺は相当な努力が必要になる」

「その為にも今日とか、こうして頑張ってる訳じゃねぇか。

 怜二は天才じゃねぇけど、努力家ではあるだろ?」


雫と付き合いたいと思ってから、俺は本格的に男を磨き始めた。

前から続けている勉強と筋トレは、量も質も上げたし、

容姿も諦めず、少しでも良くなるようにと色々研究した。

その成果は着実に出ているが、まだ、全然足りない。


「本物の努力家は、努力を努力と思わない。当たり前にやるんだ。

 俺は、そんな域に達していない」

「本物かどうかなんてどうでもいいっての。

 怜二は努力家で、頑張り屋だ。体調だけは気をつけろよ。

 あんまり頑張り過ぎて倒れるようなことになったら、本末転倒だからな。

 ……さ、寝ようぜ。体調を万全にするには、良質な睡眠が重要だ」


だから、俺はまだまだ努力する。早寝早起きもその一環。

しっかりと睡眠とらないと、肌荒れ起こすしな。

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