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111.帰ってきた勉強会に呼ばれた

俺は透が宇野先輩に情報を流したということを、古川先輩には伝えないことにした。

そうするまでもなく、古川先輩は(例え一時的なものだとしても)透と決別したし、

そこから更に何か、とはならない。となれば、伝えることは追い討ちにしかならない。

古川先輩の透に対する評価は、既に十分下がったんだ。


(あいつは、何がしたいんだ?)


考えられる可能性は三つ。

古川先輩を切って、宇野先輩に乗り換えようとしたか。

宇野先輩をけしかけて、そこを助け、古川先輩を更に自分に惹きつけようとしたか。

そして。


(……俺が、邪魔になったか)


何らかの形で痛手を負わせ、俺の動きを縛りに来たか。

いずれにしても、ロクなことは考えていないということは間違いないだろう。

そっちがその気なら、俺も心置きなくお前を敵として認められる。


透。俺はもう、お前のお守りはやめた。

このままでい続けるなら、堕ちるとこまで堕ちてもらうぞ。


「藤やん、今日の放課後ってヒマ?」

「空いてはいるけど」

「おごるからさ、メシ食いに行かね?」

「マジか。何で?」

「君の幼馴染のクズさに耐え続けてきたご褒美というか、ストレス解消というか。

 あの手紙読んで、流石に俺も確信したってことよ。

 適当にグチとか聞かせてくれ」

「そういうことなら、付き合ってもらおうか」

「どんとこーい!」


なお、手紙の内容を伝えないのは古川先輩だけ。

古川先輩には伝わらないようにすることと、宇野先輩の知名度や信頼度を考えると、

あまり無計画に見せまくる訳にもいかないが、それなりに使わせてもらう。

とりあえず、まだあんまり透に対する評価が下がってなかった翔に。

近いところから、共通認識を持つ仲間を増やしていこう。

それにこれ自体が、透の正体に関する明確な証拠となるからな。




3年5組の(主に古川先輩に対する)いじめ問題が解決するまでには、それなりの日数がかかった。

気付けばもうテスト期間。テスト対策も怠ってはいないが、普段ほどではない。

一つの問題が解決したのなら、今度はこっちを頑張らなければ。


(テスト範囲は、っと)


新しく入った単元は勿論、1学期の内容も出されるだろう。

中間テストは確認の意味合いが強いから、範囲が広くなりやすい。

しっかりと復習しなければ……ん、携帯鳴った。


『藤田君、今週末って空いてる?』


テスト期間中はほとんどバイトを入れていないから、大体の日は空いてる。

けど、この時期に何の用だ?


『空いてるけど、何か用事か?』

『良かったら、家に来ない? 一緒にテスト勉強しようよ』

(な!?)


水橋とテスト勉強をすれば、遅れは取り戻せるはず。

けど、水橋に何のメリットも無いぞ? 一体、何を思っている?

気になるところではあるが……


『分かった。時間だけ教えてくれ』

『今日中に決めるから、決まったら連絡するね』


この機会をふいにするつもりはないから、黙っておこう。

いや、目的はテスト勉強だからな。そこにそれ以上の意味を付与するな。

つつがなく、学力向上に努めよう。




「よっす。ほら乗れ」

「それじゃ、失礼して」


土曜日、訪問予定時刻の少し前。海さんが来てくれた。

ついでだし、水橋の家までの道順覚えるか。歩いて行けない距離じゃないっぽいし。


「時に怜二。今回お前を(うち)に呼んだのは雫だが、呼べと言ったのは雫じゃないんだ」

「……? どういう意味だ?」


呼べと言ったのは水橋ではない。ということは、誰かが水橋に指示したということ。

……誰だ? 海さんではないよな。だったらこの時点で言ってる。

他の候補と言えば……親御さん? いやいや、そんなはずが……


「お袋が怜二呼べってうるさくて。テスト勉強口実に連れて来いって言われたんだよ」

「……何故に?」

「祭りの件で、怜二を気に入ったらしくてさ。どんな男か見てみたいんだと。

 つー訳で、お袋のわがままに応えてくれや」


まさか、本当に親御さん……水橋のお母さんに呼ばれたとは。

祭りの件でってことは、水橋から聞いたってことなんだろうけど、どう伝わった?

おかしな形に伝わってなきゃいいんだが……


「どんな人か、教えてくれ」

「そうだな、えーっと……何だろう、説明しづらい。確実に言えるのは、頭のネジが……」

「数本抜けてる?」

「数本しかない」

「殆ど抜けてる!?」

「その残ったネジもゆるゆるだ」

「締めて! 大至急締めて!」


一気に不安しかなくなった! 身内からの評価がコレ!?

どうあれ普通の範囲は大きく逸脱してるだろ!


「悪人ではないんだけどさ、息するように爆弾投げるから覚悟しとけ」

「適応力には多少の自信あるけど、手に負えなさそうなんだが」

「手に負える人間を探す位なら、ツチノコ探す方がまだ現実的だわ」

「そこまで!?」


水橋もそこそこに突拍子も無いこと言うから、それの更に上ってことか?

受け継いだ遺伝子の中にそういう部分があるなら、単純計算で2倍突拍子もない人。

出たとこ勝負は得意だけど、今回は苦戦を強いられるかもな。

いや、別に戦う訳じゃないし、そもそも勝ち負けの基準は一体何だ。




玄関のインターホンを押して、少し待つ。

鍵が開く音の後、ドアが開かれる。そして現れたのは。


「いらっしゃ~い♪」

(……え?)


水橋……? いや、この家に住んでるのは全員水橋姓だけど、え……?

お姉さん、ではないよな。姉がいるって話は聞いて無いし。

……ってことは。


「君が怜二君ね。雫から話は聞いてるわ。水橋家へようこそ」

(マジか!?)


この人は間違いなく、俺を呼べと水橋に言った、水橋の母親。

いや、若過ぎるだろ!? どう見ても20代そこら、下手したらもっと……


「安心して。雫を産んだのは成人してからだから。

 というか、2、3歳じゃお赤飯も炊けないでしょ」

「はいっ!?」


心読まれた!? それとも顔に出てたか!?

ヤバい、のっけから失礼なことを……


「母さん。初対面の相手からエスパー発揮するのはやめてくれ。

 ……すまんな怜二。こういう人なんだ」

水橋渚(みずはしなぎさ)、不惑です☆」


横ピース&ウインク。何で馴染んでるんだ。

訳が分からなさ過ぎるが、海さんの言ってたことはすごくよく分かった。

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