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108.ドロップアウト・ドロップアイテム

『作戦やる必要なくなった。空き教室来い』


メッセを送り、二人に召集をかける。

ここに来るまでは、こいつらの言い訳でも聞いて時間を潰すか。


「で、何でこんな真似を?」

「うるさい!」

「柏木先生、あなたはもういいです。どうせ嫉妬でしょ? 一番気になるのは、賄賂のくだり。

 説明してもらいましょうか、宇野先輩?」

「……ほんの、謝礼ですわ。私のことを偏見なく見て頂いた。

 その他の便宜を図って頂いたのも事実ですが」

「謝礼ねぇ」


そういえば、これも気になっていた。

人を見た目で決め付けると聞いている柏木先生が、宇野先輩の髪色をつつかなかった理由。

さっきからうるさいうるさい言っているうるさい柏木先生に聞いたところで、

まともな答えが返ってくるとは……


「どうしてくれんだ宇野! 元々お前のバタ臭い顔とふざけた髪が死ぬほど嫌いだったんだよ!

「えっ……?」

「地毛だどうだで見せびらかしやがって!

 お前の実家が太くなけりゃ、100億回ぶっ殺してるわ!」

「……っ!」


……またしても、勝手に喋ってくれたよ。

そういうことだったのか。金目当てで、宇野先輩を厚遇してたってことか。

同情する訳じゃねぇが、これはキツいだろうな……


「宇野先輩。どうやら目が曇っていたのはあなたの方でしたね。

 こんなクズを今まで野放しにしてた、先生方程ではないですが」

「先生……嘘ですよね……?」

「面見せんな! 反吐が出るわ!」

「……そんな」


音声だけとはいえ、流石にこれだけの証拠があれば、懲戒免職間違いなし。

宇野先輩も退学コース一直線だし、事を粛々と進めるだけ。

陽司と水橋が来たら、全員連れて行こう。




柏木先生が俺に殴りかかっては受け流され、勢い余って自爆すること数回。

陽司と水橋が来た。


「お待たせ。どういう状況よ?」

「両方の各種悪行は録音済み。古川先輩が拘束されてたけど、さっき逃がした。

 目的は達成したし、それなら投げない方がいいだろ?」

「取り損ねるつもりはねぇけどな」


元々の作戦は、宇野先輩を上手いこと煽って凶行に走らせ、それを録音。

適当な所まで録音できたら、窓からボイレコを投下。

あらかじめ窓の下にいる陽司がそれをキャッチしたら、水橋に連絡して放送室へ。

連絡を受けた水橋は職員室からカギを借りて放送室を開け、陽司を待つ。

そして陽司が来たら、凶行の音声が入っているボイレコを全校放送で流す。

いっぺんにやらかしを晒して騒ぎにさせ、教師連中が動かざるを得ない状況にさせるのが狙い。

ついでに柏木先生のやらかしも録音できればと思っていたが、まさか本人が来るとは。

しかも、こっちが聞いてもいないことをベラベラ喋ってくれたおかげで、

ボイレコの中にはほぼ全ての悪行が記録されている。


「じゃ、柏木先生に宇野先輩、あと犬飼先輩。職員室行きましょうか。

 これまでのこと、全部話して頂きますよ」

「一人300万円でどう? 明日には、必ず……」

「いらねぇよ。金で何でも解決できると思うなボケ」

「お金じゃどうにもならないことをやったんだから、お金は意味が無い。

 全てを話して、その報いを受けることが、私達の要求」

「アタシを誰だと思ってんだ! 1クラス分の生徒を手駒にする、天下の柏木……」

「やかましいわ」

「むぐっ!」


この期に及んで不快な戯言を垂れ流す柏木先生の口に、陽司が手を押し付けた。

サンキュー、陽司。俺はもうこいつの声を聞きたくないんだ。




職員室にいた先生方にボイレコの音声を聞かせ、柏木・宇野・犬飼それぞれが

やらかしたことを報告。ついでに陽司が柏木先生の机にあったノートを提出。

後日、古川先輩と同じクラスの生徒にも話を聞くとして、話し合いを一旦切り上げた。


「上田先生。柏木先生は懲戒免職ですよね?」

「間違いなくそうだね。部分的には減給ぐらいで済むのもあるけど、数が数だ。

 特にセクハラは完全にアウト。一発免職だ。裁判にもなるだろうね。

 多分、示談をお願いすることになるだろうけど、ほぼ全生徒にやってるから、

 支払い能力があるかどうかは微妙な所だな……」

「あの、上田先生。これから3年5組は色々とゴタつくと思います。

 俺らにできることあったら言って下さい」

「気持ちだけ貰っておくよ。仮にも僕は教師だ。他の先生方と連携してやる。

 あ、でも生徒の気持ちを分かってない先生とかもいるか……

 ごめん、もしかしたらちょっとだけお世話になるかもしれない。いいかな?」

「構いませんよ。困った時はお互い様です。上田先生は優秀な教師ですけど、

 他はそうとは限りませんし、一人じゃ限界あるでしょ?」

「申し訳ないね、情けない組織で……」


ちょいちょい聞こえたのは、事を荒立てないようにはどうするか、という話し合い。

先生方にも立場があるんだろうけど、生徒第一に考えてる先生は何人いるのか。


「古川先輩に、確認の電話かけるね」

「任せた。ついでに本の話でもしてくれ。今、相当キツいだろうし」

「うん。……漫画以外だと、本の趣味が合うんだよね。これからも、色々話したい」


古川先輩(含む一部生徒)をいじめから救うついでに、水橋に友達ができた。

八乙女に続く学年違いの友達、古川先輩。

これは水橋にとっては勿論、古川先輩にとっても嬉しいはず。


「水橋、怜二、お疲れ。今度の休みにメシ行こうぜ。

 疲れた分のエネルギーは、うまいメシ食って補充するに限る」

「だな。適当に候補探しておくわ」

「私はよく分からないから、二人に任せる。好き嫌いはないから、二人の希望で」

「ん、了解」


イベント尽くしの二学期、その中で起きた大事。

時間はかかったが、それなりによい結末を迎えることが出来た。

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