30/31
第30話 沈黙
ヒロミの病状急変を聞き
病院へと慌てて駆けつけた
しかし
ヒロミは
すでに冷たくなり
霊安室に運ばれ…献花をされていた。
ヒロミの家族が居るにも関わらず
ユージは声をあげて泣いた…
「ヒロミ・・・何でだよ!!」
帰り道
どこをど走って来たのかさえ
覚えも無いままユージは
一人部屋にこもってしまう
そして
秋も深まり
景色も紅葉の色づく季節
日頃から寡黙だったユージは
会話からたくさんの得るものがあり
人を知る手がかりになると
ふと思った…
こんなことになるなら
もっとたくさんの話をしたかった…と。
淋しくて仕方がなかった…
自身のまわりで年老いた
親戚などが亡くなった時には
感じ得なかった想いが
若くして亡くなった
ヒロミという人間を通して
命の重さと、人生の儚さを
教わったようだった…
一連の始まりから時は流れ
雪もちらつく季節
ヒロミの墓前に手を合わせながら
後悔をしない生き方をしようと
思いを改めてユージは
これからの人生を見つめ直すかのように
舞い散る雪を見上げていた




